子どもの「食べない」にどう対応する? 離乳食拒否、幼児期の偏食に悩む親に、小児科医が伝えたいこと

  • 作成:2022/06/21

AskDoctorsでは、子どもの病気やケアで親が悩みがちなポイントについて、小児科医の森戸やすみ先生に解説していただきます。連載第9回は「食が細い子、偏食の子への対応」がテーマ。離乳食が順調に進まずに悪戦苦闘している皆さんへ、森戸先生のアドバイスをお届けします。

森戸 やすみ 監修
どうかん山こどもクリニック 
森戸 やすみ 先生

この記事の目安時間は3分です

子どもの「食べない」にどう対応する? 離乳食拒否、幼児期の偏食に悩む親に、小児科医が伝えたいこと

病的な少食や偏食はごくまれ

乳幼児健診では、子どもの食事に関する相談を受けることがよくあります。特に多いのが、「離乳食が進まない」「子どもの偏食が心配」という悩みです。
子どもは成長途中なので、栄養が足りなければ成長や発達に影響が出ますし、貧血や神経症状、骨の異常などが起こる可能性はあります。ただし、それらは極端に食べられない場合に限られます。実際、病的な少食や偏食のケースはほとんどありません。

そもそも、赤ちゃんは産まれてから離乳食を始める前までは、母乳や粉ミルクなど液体だけを飲んでいたのです。離乳食の開始早々は、初めて経験する酸味や苦味、舌触りの違いなどにとまどってしまうのは無理もないこと。
大人の食事に興味を持った時に食べられそうな形状にしてあげたり、あまりお腹が空いていない機嫌の良い時にあげたりしてみましょう。一口でも食べることができた時に大げさに褒めると、次から食べてくれることもあります。年齢の近い子どもが食べているのを見て、つられて食べる場合も。ただ、中にはどんなに保護者が手を尽くしても、食べない子どももいます。

慎重な子には「手づかみ食べ」のススメ

離乳食が進まない子どもに多いのは、食べ物を自ら確かめて納得しないと口に入れない、慎重なタイプです。でも、考えてみてください。スプーンにのせた何かを目の前に出されて、「さあ、飲み込みなさい」と言われたら…大人でも「何これ?」と警戒しますよね。初めて食べ物を目にする子どもならなおのこと、手に取って触って舐めたり匂いを嗅いだりしてみたいと思うはずです。

そこで試してほしいのが、手づかみ食べ。パンやおにぎり、茹でたじゃがいもやブロッコリー、バナナ、硬めに焼いたオムレツなど手づかみしやすい食べ物を、子どもの前に置いてみるのです。最初は手やテーブル周りが汚れるかもしれませんが、おもちゃの延長で食べ物をつかんでしゃぶり始めたらしめたもの。子ども自身が「こういうものなんだ」とわかれば、食べてくれるようになっていきます。

大人が食べているものを興味深げに見ているようであれば、取り分けて与えてみてください。おみそ汁の野菜を潰したものや、お醤油がかかっていないお豆腐などでかまいません。一緒に食卓を囲むとつられて食べることもありますし、楽しい雰囲気で食事ができるのではないでしょうか。

「多種類」よりも栄養バランスに着目して

幼児期までは、偏食の子どもも少なくありません。バランスよくなんでも食べて欲しい親御さんからしたら、心配になるのもわかります。多種類の食材を食べられるようになると、バランスの良い食事になるでしょう。大人のように食べられればいいですが、毎食多彩な食材を食べるのは難しいことです。1週間を通してバランスよく食べられていれば大丈夫でしょう。

たとえば主食について。お粥もご飯も食べないというお子さんでも、パンなら食べるということがよくあります。パンを食べているなら、なんとしてもご飯を食べさせる必要はありません。ご飯もパンもダメなら、麺類でも同じく炭水化物が主成分の茹でたジャガイモやサツマイモでも大丈夫。炭水化物というくくりの中で、栄養を摂れていれば十分です。

主食以外も同じように考えます。お魚は苦手でも肉や卵を食べているなら動物性たんぱく質は摂れています。緑黄色野菜は、ニンジンを嫌がるならかぼちゃやブロッコリー、ほうれん草など、同じ栄養素を含む野菜を食べさせてみてください。
無理強いをすると、その食べ物に嫌なイメージを持ってしまったり、食事が楽しくなくなってしまうこともあります。成長するにつれて食べられるものが増えていくことが多いので、あまり深刻に捉えず、「主食・野菜・たんぱく質を摂れていれば良し」としましょう。

ただ、カロリーのあるものばかりや偏ったものばかりでは肥満になりやすいです。野菜ジュースや果物ジュースは健康にいいと思っている方が多いのですが、それらのジュースは糖分が多いうえ、食物繊維やビタミン類はわずかです。加工したものよりも、野菜や果物をそのままあげるようにしてください。

1971年、東京生まれ。小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内のどうかん山こどもクリニックに勤務。『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)、『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)など著書多数。二児の母。

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