子宮筋腫の薬 ピル、リュープリン注射、ホルモン治療を解説

  • 作成:2016/01/26

子宮筋腫はピルなどの薬を使って治療可能です。ピルは副作用が少なく、リュープリン注射は閉経前の女性に用いられるなどの特徴がありますが、リスクもないわけではりません。ホルモン治療も含めた薬による治療の概要を、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

近藤恒正 監修
落合病院 副院長
近藤恒正 先生

この記事の目安時間は3分です

ホルモン治療はどんなもの?

子宮筋腫は、女性ホルモンの一つである「エストロゲン」の影響を受けて大きくなります。そのため、体内でエストロゲンの分泌がなくなれば、子宮筋腫も小さくなります。エストロゲンの分泌を妨げる治療が子宮筋腫に対する「ホルモン療法」です。

エストロゲンの分泌の最初の指令は、脳にある「視床下部」というところから出ます。この指令は「下垂体」と呼ばれるところに伝えられ、そこから第2の指令が出ます。第2の指令が卵巣に伝わると、卵巣でエストロゲンが産生されます。

ホルモン療法では、脳から出る指令に似た物質を投与して、指令の流れを邪魔することでエストロゲンの産生を抑えます。投与する物質を「GnRHアゴニスト(性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト)」と呼びます。

ホルモン療法では、一時的な閉経状態になります。卵巣からのエストロゲンの放出が抑えられてしまうため、それに伴った症状が出ます。多汗やほてりなどの更年期障害のような症状や、骨の中のカルシウムが少なくなるなどの副作用があるため、長期には行われません。

治療薬は鼻からスプレーで毎日入れる場合と、月に1回注射する場合があります。治療中は筋腫が小さくなりますが、薬の投与をやめるとまた筋腫は大きくなることも多いです。現在では摘出手術に先立って、筋腫のサイズを小さくする目的で行われることも多いです。

ピルは副作用が少ないが…

子宮筋腫の治療の一つとしてピル(経口避妊薬)を用いる治療法もあります。ピルは「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類の女性ホルモンから成る合剤で、脳にある器官に作用して、女性ホルモンの分泌を抑える働きがあります。

ピルを服用すると「すでに十分な女性ホルモンが分泌されている」と脳が判断して、エストロゲンを分泌するための指令を出さなくなります。そのため卵巣はお休みしている状態となり、卵巣からのエストロゲンの分泌が抑えられます。

ピルに含まれるエストロゲンは、自然の状態で卵巣から分泌されるエストロゲンよりも低用量ですので、子宮筋腫が大きくなりにくいということが期待できます。ピルの服用により、子宮筋腫による症状も軽減します。しかしピルを規則正しく飲んでいる間は妊娠が妨げられるほか、ピルによる副作用としてもっとも注意するべきことは、虚血性の脳卒中や心疾患、あるいは下肢静脈血栓症などが起こるリスクが高くなります。また、薬の服用をやめるとエストロゲンの分泌が始まり、子宮筋腫は大きくなりますので、いつまで飲み続けるかが問題になります。

リュープリン注射は閉経前の女性向け

エストロゲンの分泌を抑えるために「リュープリン」という薬が使われることもあります。リュープリンは、GnRHアゴニスト(性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト)の作用があります。GnRHアゴニストは、脳の視床下部から出されるエストロゲン産生を命令する物質に似た合成薬で、指令を受け取るところに先回りして、結合してしまいます。そのため脳からの指令が伝わらなくなり、エストロゲンが産生されません。リュープリンは、通常は4週間に1度、皮下注射で投与します。リュープリンを閉経前の女性に用いると、閉経に追い込むような効果が期待できます。閉経後は卵巣機能が低下するので、卵巣でエストロゲンは作られません。

リュープリンの副作用として、多汗やほてりなどの更年期障害に似た症状が出ることがあります。またエストロゲンの低下により骨の中のカルシウム量が低下することがあります。リュープリンで閉経に追い込めなかった場合には、ピル同様に、薬をやめるとホルモンの分泌が始まります。

治療がいらない場合や手術する場合も

子宮筋腫に特徴的な症状は、生理の際の出血量が異常に多い、生理前または生理時にひどい下腹部の痛みや腰痛がある、そして不妊です。これらの症状がある場合には治療が必要です。

しかし子宮筋腫の方の約半分は、ほとんど自覚症状がないとされています。筋腫が明らかに良性で特に痛みもなく、また妊娠を希望していない場合には、定期的な検診だけで様子を見ます。閉経後には子宮筋腫が小さくなると期待されます。

「粘膜下筋腫」と呼ばれるタイプだったり、サイズが4センチ以上の「筋層内筋腫」というタイプができている場合には、筋腫が不妊原因となっている可能性があります。したがって、このような子宮筋腫ができていて将来妊娠を希望する場合には、何らかの処置が必要になることがあります。薬による治療では、薬の服用をやめると筋腫が再び大きくなることから、妊娠を希望する方は筋腫のみを外科的に摘出する方法がとられます。

子宮筋腫の薬の治療などについてご紹介しました。もしかして子宮筋腫かもしれないと不安に感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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