食事だけでは不十分?痛風発作の再発予防
- 作成:2025/06/02
一度痛風発作の激しい痛みを経験すると、「二度と繰り返したくない」と思い、プリン体を控える食事を心がける方は多いのではないでしょうか。その心がけは重要です。しかし、それだけでは再発予防として十分ではないかもしれません。プリン体の約8割は体内でつくられます。また、遺伝的な素因が関係することもあります。そのため、食事改善だけでは尿酸値を十分に下げることが難しい場合があります。この記事では、再発を予防するための食事、運動、飲酒といった生活習慣の具体的な改善ポイントや、必要に応じた治療について解説します。
この記事の目安時間は6分です
再発予防の目安は尿酸値 6.0mg/dL以下
尿酸値が7.0 mg/dLを超える高尿酸血症の状態が続くことで尿酸結晶が関節などにたまり、運動などをきっかけにはがれ落ちたときに痛風発作が起こりやすくなります。
痛風を再発させないためには、尿酸値を7.0 mg/dL以下にすればよいのでしょうか?実は、尿酸が結晶から体液中に溶け始めるのは尿酸値 6.4 mg/dL以下です。
痛風発作の痛みがひいても、関節などにたまった尿酸結晶がなくなるわけではありません。そのため、尿酸結晶を溶かして痛風発作の再発を予防するために、尿酸値を 6.0mg/dL未満に抑えるように推奨されています。
食事に気をつけるだけで尿酸値を下げることは難しい
尿酸値を下げるにはどうすればよいのでしょう。尿酸は、プリン体が体の中で分解されるときにできます。
そのため、「プリン体が多い食べ物を避ける」ということを意識している方は多いと思います。食事に気をつけるのは重要です。
しかし、それだけでは十分ではない場合が多くあります。尿酸値をチェックしている人の中には「こんなに食事に気をつけて頑張っているのに、なぜ尿酸値が下がらないのだろう」と思っている方もいらっしゃるでしょう。
食事に十分な注意をはらっても尿酸値が下がらない理由は2つあります。
①食べ物から摂取するプリン体は2割程度であり、プリン体の8割は体内で作られるため。
②尿酸の大部分は尿から排泄されますが、遺伝的に尿酸の排泄が不得意な家系である可能性があるため。
痛風の再発を防ぐには、食事療法を含む生活習慣の改善に取り組んだ上で、尿酸値や基礎疾患等を総合的に見て治療強化が必要であると医師が判断した場合には、尿酸降下薬による薬物治療も行うことが大切です。
痛風の再発を防ぐための生活習慣
生活習慣の改善では、「食事制限」「飲酒制限」「運動」が特に重要です。
〈食事制限〉
肥満の人は、尿酸値が高くなりやすいと報告されています。まずは食事のカロリーを適切に制限し、肥満を解消することが重要です。
尿酸のもとになる「プリン体」は細胞の新陳代謝の際に体の中で作られますが、体内に存在するプリン体の20%程度は食べ物から摂取したものだといわれています。
そのため、尿酸値を下げるためには、プリン体の多い食品を控えることが重要です。
プリン体が多い代表的な食品は鶏レバーや白子などで、100gあたりプリン体が300mg以上含まれています。クロレラやローヤルゼリーなど、健康食品をうたっているものにも多量のプリン体が含まれている場合があり、注意が必要です。
また、カツオやマイワシ、大正エビなどの一部の魚介類もプリン体が多く、100gあたり200mg以上含まれています。
一方、プリン体の少ない動物性食品としては、卵や乳製品があげられます。
プリン体の摂取量は1日400mgが目安とされており、食べ過ぎは避けつつも、タンパク質が不足しないよう、栄養バランスを意識することが大切です。なお、プリン体は水に溶けやすい性質があるため、プリン体を多く含む食材を調理する際には、煮たり茹でたりして煮汁を捨てるなどの工夫をすると、摂取量を減らすことに役立ちます。
〈飲酒制限〉
プリン体はお酒にも含まれており、特にビールにはプリン体が比較的多く含まれています。お酒からのプリン体摂取を減らすには、プリン体ゼロをうたう発泡酒や、プリン体をほとんど含まないウイスキーや焼酎などの蒸留酒を選ぶことが考えられます。
また、お酒のあてに摂取するおつまみに多量のプリン体が含まれていることもあるため注意が必要です。
お酒に含まれるプリン体が少なくても、アルコール摂取そのものがプリン体の分解を促進し、尿酸の産生量を増やすため、飲み過ぎは尿酸値の上昇を招きます。
尿酸値への影響を最低限に保つ飲酒量は、1日あたりビール350〜500mL、日本酒1合、ウイスキー60mLとされています。特にワインは148mLまでは尿酸値を上げないことが報告されています 。
〈水分補給〉
たっぷりと水分をとることで尿量が増え、尿酸の排泄がスムーズになります。高尿酸血症の人は、1日あたり2リットル以上の飲水が推奨されています。
ただし、慢性腎臓病、慢性心不全、肝硬変、低ナトリウム血症などの基礎疾患が存在している場合には、水分摂取に制限が必要なこともあるため、必ず前もって医師に相談してください。
〈運動〉
適度な運動は肥満や生活習慣病の改善につながり、結果的に尿酸値を低下させることが期待できます。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を、1日あたり30分以上または60分程度行うことが推奨されています。
運動強度は、脈拍が少し早くなる程度の軽めがよいとされています。短時間の激しい運動は逆効果で、尿酸値を上昇させることがあるため注意が必要です。
また、運動に伴う血管内脱水により血清尿酸値が上昇すると痛風発作を起こす場合があり、適度な水分補給を行いましょう。
心疾患や呼吸器疾患、整形外科疾患、高齢者など運動耐容能に障害を抱えている方の場合、通常の方よりも運動強度を下げる必要があります。必ず主治医に相談してから運動を開始するようにしましょう。
〈その他〉
ストレスや睡眠不足も高尿酸血症のリスクを高めると言われています。定期的にリフレッシュする機会を設け、質の良い睡眠をとることを意識しましょう。
尿酸値の管理は、一時的に行えばいいというものではなく、生活習慣の積み重ねです。「尿酸をためない生活」を続けることが、痛風発作の再発を防ぐ土台となります。
また、適切な生活習慣や、実践しやすい改善方法はひとりひとり異なります。よりみなさまの状況に合った、無理なく続けられる生活改善方法を見つけるために、ぜひ一度医師にご相談ください。
薬物療法は医師の指示に従った用量で継続を
痛風の再発予防の基本は生活習慣の改善です。しかし生活習慣を改善してもなお尿酸値6.0mg/dL未満を達成することが難しい場合には、尿酸降下薬が必要となる場合があります。
尿酸降下薬には、大きく分けて「尿酸排泄促進薬」と「尿酸産生抑制薬」の2種類があります。
尿酸排泄促進薬は、腎臓にはたらきかけて尿酸が尿中へ排泄されやすくなるように促します。
尿酸産生抑制薬は、主に肝臓に作用して尿酸の産生が増えすぎないように制御します。
医師が患者さんの高尿酸血症の原因や腎機能、他の薬剤との相性などを総合的に判断し、適切な薬剤を選択します。
尿酸降下薬を飲み始めた時期は、痛風発作が再発するリスクが一時的に高まります。そのため、一般的に痛風発作が落ち着くまでは尿酸降下を開始しません。
痛風発作の再燃を防ぐために尿酸降下薬は少量から飲み始め、時間をかけて尿酸値を下げていきます。
自己判断で薬をやめたり増やしたりせず、医師の指示通りの用法・用量で治療を続けることが大切です。
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