突然、赤ちゃんが亡くなってしまう悲劇…。「今できるSIDS対策」を小児科医に聞いた!

  • 作成:2023/03/22

Ask Doctorsでは、子どもの病気やケアで保護者が悩みがちなポイントを、小児科医の森戸やすみ先生に解説していただいています。連載第18回のテーマは「乳幼児突然死症候群」(SIDS)です。2021年には、全国で81人の乳幼児がこの病気で亡くなっており、乳児期の死亡原因の第3位でもあります。SIDSはどのようなときに起こりやすいのか、特徴や対策について森戸先生にお話を伺いました。

森戸 やすみ 監修
どうかん山こどもクリニック 
森戸 やすみ 先生

この記事の目安時間は3分です

突然、赤ちゃんが亡くなってしまう悲劇…。「今できるSIDS対策」を小児科医に聞いた!

生後6か月までが好発時期だが、1歳で発生することも

「乳幼児突然死症候群」(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)は、それまで元気だった乳幼児が眠っている間などに突然死亡する病気です。窒息のような事故ではなく、なにか病気を抱えていたわけでもなく、前触れなく亡くなってしまう。他に病気がない、前兆がないのがSIDSの特徴です。
多いのは生後6か月くらいまでですが、1歳を過ぎても起こることがあります。これから保育園にお子さんが通う家庭では、心配される保護者の方も多いのではないでしょうか。

SIDSは原因がはっきりしない上に、突然亡くなってしまうため、確立された予防策はありません。しかし、これまでの研究から、普段の育児環境の中に「SIDSの発生を高めるいくつかのリスク因子」があることがわかってきました。こうしたリスクを少しでも減らすことが、現段階でできる最善の対策と言えるでしょう。

うつぶせ寝をやめる

よく知られているリスクが、「うつぶせ寝」です。仰向けに寝かせたときよりもうつぶせ寝のほうが、SIDSの発生率が高くなることがわかってきました。かつては「頭の形が良くなる」「ぐっすり眠ってくれる」といった理由でうつぶせに寝かせることも多かったのですが、仰向けに寝せるよう注意喚起されるようになってから、SIDSは減ってきています。
月齢の小さいうちは、必ず仰向けに寝かせるようにしてください。

寝返りが打てる生後5~6か月になると、自分でうつぶせになってしまうこともあります。外来でよく「その都度、直した方がいいでしょうか?」と聞かれることがありますが、自分で体位を変えられるくらい月齢の進んだお子さんであれば、自由にさせておいて大丈夫でしょう。

ただし、窒息事故には十分に注意してください。自分でうつぶせになった場合、顔が埋まるほど柔らかい敷布団だと口や鼻が塞がって窒息のリスクが高まります。敷布団はやや硬めのものを使用するといいでしょう。
掛け布団や毛布も、顔にまとわりつきやすいものは避け、寝ている間はふわふわしたぬいぐるみなどもそばに置かないこと。紐の付いたよだれかけやフードの付いた衣服は脱がせて寝かせるようにしてください。

タバコは吸わない

タバコの煙は、SIDS発生の大きなリスク因子です。両親が喫煙する場合、喫煙しない場合と比べてSIDSの発生率が約4.7倍も高くなるという研究結果もあります。SIDSに限らず、タバコの煙は乳幼児の健康に悪影響を及ぼします。吸っている本人にとっても、良くありません。
できれば禁煙を。難しい場合は、乳幼児のいる部屋では絶対にタバコを吸わないようにしてください。

できるだけ母乳で育てる

母乳で育てられた乳幼児は、SIDSになるリスクが低いことがわかっています。しかし母乳栄養にしたいと思っていても、十分に母乳が出ない人や、仕事などで授乳できない人もいますし、人工栄養だからSIDSになるわけではありません。
母乳に関しては無理をしないで、うつぶせ寝や喫煙などほかのリスク因子を減らすことを心がけましょう。

暖めすぎない・厚着させない

あまり知られていませんが、SIDSは冬場に多く発生します。「風邪を引くから」などといって暖めすぎたり、厚着をさせたりすることもSIDSのリスク因子なのです。春先も肌寒い日がありますが、汗をかくほど乳幼児の体を暖めないようにしましょう。
室温は大人が快適に過ごせる程度に設定し、布団は風通しを意識してふわっとかけるようにしてください。背中に手を入れてみて、汗ばんでいたら1枚脱がせるなど、衣服の調整を心がけましょう。

ほかにも、早産、低体重で生まれたお子さんや、男児はSIDSを起こしやすいことがわかっています。しかし対策のしようがないところもあります。できる対策はした上で、あまり神経質になりすぎないことも大切です。

1971年、東京生まれ。小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内のどうかん山こどもクリニックに勤務。『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)、『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)など著書多数。二児の母。

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