処方薬が通販で買えない理由と海外の通販・個人輸入の利用リスク 虚偽の効果や衛生上の問題?
- 作成:2016/01/07
日本では、「処方薬」という医師の処方せんが必要な薬を通販で購入することはできず、薬局で買える一般用医薬品でも、一部は通販で購入できません。個人輸入の業者を通じて、海外から薬を買うことも可能になっていますが、リスクがあります。日本の薬の制度とあわせて、医師監修記事でわかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
通販で処方薬が買えない日本
我が国の薬は現在、医療用医薬品と一般用医薬品の2つに分けられます。医療用医薬品は医師によって処方され、処方薬、処方箋(せん)薬などと呼ばれています。一方、一般用医薬品は、市販薬、大衆薬、OTC薬(over the counterの薬、薬局のカウンターで買えるというニュアンス)などとも言われています。処方薬は院内で出してもらうか、処方箋をもって薬局で買うのが当たり前だと思っているかもしれませんが、欧米各国では市販薬はもちろん、処方薬もネット通販が原則として認められています。
処方薬は以前、厚労省の省令により、対面販売を義務づけられていましたが、2013年1月に「医薬品ネット販売の権利の確認を求めた訴訟」の最高裁判決で、国が敗訴しました。これにより一般用医薬品のネット販売が解禁の方向に動き出しました。一方、判決理由の1つとして、法に基づかない厚労省の行政手法が批判にあいました。批判を受け、国は薬事法の一部改正し、2014年6月の施行以降、現在まで、処方薬は対面販売が法律によって義務づけられています。処方薬の対面販売の必要性については、「人体に対する作用が著しく、重大な副作用が生じるおそれがあるため」との説明がなされています。
一般用医薬品も全て通販で買えない
一般用医薬品には第1、2、3類の区分があります。2014年施行の改正薬事法で、すべての区分の一般用医薬品は、適切なルールの下にネット通販が可能となっています。ただし第1類医薬品(「安全性上特に注意を要する成分を含むもの」と定義)は、これまでどおり薬剤師の管理下で販売(対面ではないので通販で買えます)するとしています。
しかし、法改正前には第1類に含まれていた劇薬とスイッチ直後品目(処方薬から一般用医薬品、つまり市販薬にスイッチしたばかりの薬)については、「要指導医薬品」というカテゴリーを新設して指定し、薬剤師による対面販売を義務づけています。したがって、通販で買えない一般用医薬品があることになりま。
個人輸入で健康被害が出る場合も
個人でも医薬品の輸入が可能であるのは、外国で受けた薬物治療の継続が必要な場合や、海外からの旅行者が常備薬として携帯する時などへの配慮からです。したがって、使用は自分自身に限られていて、他人への譲渡や販売は違法行為になります。原則としては国に必要な書類を提出して、薬事法に違反していないことの証明(薬監証明)を受ける必要があります。特例として、薬の用法、用量からみて1カ月または2カ月分(期間は薬によって変わります)の範囲内であれば、税関での確認だけでも輸入できます。
最近、上記の個人輸入を代行すると称して、海外の薬やサプリメントなどを広告し、購入に誘い込む業者によるトラブルが増えています。実際には「輸入した医薬品による健康被害が出た」、「商品が届かない」、「代行業者が返金に応じない」といった問題が生じているようです。代行業者は、個人に代わって輸入手続きをするだけという位置づけですので、一切の責任を業者ではなく、購入者本人が負うケースがほとんどです。輸入代行の利用時には注意が必要です。
虚偽の効果、偽造、衛生上のリスクあり
個人輸入の通販サイトからは、海外の医薬品を国内の販売価格よりも安く買えたり、国内では流通していない薬を購入できたりしますが、次のようなリスクがあることを知っておいて下さい。
1. 日本の薬事法に基づく品質、有効性、安全性は確認されていません。
2. 虚偽または誇大な効能や効果をうたっている場合もあります。
3. 不衛生な場所や方法で製造されたおそれもあります。
4. 正規のメーカー品を装った偽造品である可能性もあります。
5. 副作用や不具合などが起きたときに対処が困難となる場合もあります。
海外で健康被害が報告されている海外医薬品や偽造医薬品などの情報が、厚生労働省のウェブサイト(厚生労働省「健康被害情報・無承認無許可医薬品情報」http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/daietto/index.html)で提供されていますので、個人輸入をする時にはぜひ確認してみて下さい。
薬の個人輸入や通販についての概要をご紹介しました。個人輸入の業者を通じて、海外の薬を買おうと考えている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?
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