百日咳の治療、検査、診断基準 薬は抗生物質?大人は薬不要?
- 作成:2016/03/03
百日咳は、細菌の有無やリンパ球の増加などを判断する検査をして、診断します。薬としては「マクロライド系」と呼ばれる抗生物質が使われますが、その他に症状に対応した薬を使うことがあります。薬が不要になるケースや百日咳の治療と検査について、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
百日咳の検査の重要性 PCR法とは?
百日咳(ひゃくにちぜき)とは、「百日咳菌」と呼ばれる細菌に感染することで発症する感染症のことです。初期症状は風邪とあまり変わりありませんが、子供が百日咳にかかると小さな咳を肺の空気がなくなるまで断続的に繰り返し、最後に一気に空気を吸い込むような咳をするのが特徴となっています。
百日咳菌に効く抗生物質を飲む薬物治療が効果的です。このため、早いうちに百日咳であることを特定する必要があり、細菌検査や血液検査によって百日咳菌の有無を特定します。感染症の原因菌を特定するためには、細菌培養した上で調べるのが有効ですが、百日咳菌では培養が難しく、うまくいかない事があります。
百日咳にかかると血液中のリンパ球の数が異常に増えるので、それを見て判断することもありますが、思春期や成人の患者の場合はリンパ球の増加が確認できないこともあり、確実とはいえません。もう一つの方法として血清中の抗体を調べる方法もありますが、時間が経過しないと検出されませんので、素早く診断が必要な時に有用とは言えません。
現在、より確実に検査する方法として利用されているのが、鼻や咽の粘膜から粘液を採取して細菌のDNAを増やして細菌の有無を調べる「PCR法」と呼ばれる方法です。実施できる施設は限られていますが、診断には有用であり、検査の精度は日々向上しています。
百日咳の診断基準はある?
百日咳の診断をするためには、問診によって百日咳特有の症状の有無を調べつつ、検査結果を見て判断する必要があります。明確な診断基準はありませんが、参考となるのは、「細菌培養検査」「血液中のリンパ球数検査」「血中の抗体数検査」の結果のいずれかが陽性になるかどうかです。細菌培養検査で細菌が分離できれば百日咳であると確定できますし、リンパ球数が異常に増えていれば百日咳の可能性が高まります。百日咳に対する抗体異常増加していた場合にも、百日咳の確定診断ができるでしょう。細菌培養検査が確実ですが、きちんと分離できないことも多いので複数の検査を同時に行うのが普通です。特に、抗体検査は複数回行って差異を見る必要があります。数値を見て、複数の検査で陽性かそれに近い反応を示せば百日咳だと判断して治療を開始できると考えられます。
百日咳の薬は、抗生物質、咳止めなど多様
百日咳の治療に使われるのは幅広い細菌に効果のある「マクロライド系」と呼ばれる抗生物質です。発症の早期に投与されれば、1週間と経たずに咳は止まりますが、細菌を完全に除去するために2週間ほど抗生物質を服用します。さらに、症状に合わせて痰(たん)を排出しやすくする薬や咳止めを服用することがあります。また、呼吸器に炎症が広がって息を吸いにくくなっている場合には、気管支拡張剤を投与する場合もあります。症状がひどい場合には抗体を作る「ガンマグロブリン」と呼ばれる薬が投与される事もあります。
いずれにせよ、薬で、細菌を除去し、痰(たん)や咳をコントロールする治療をすることになるでしょう。薬の効果が出れば劇的に楽になりますが、百日咳はその名の通り感染から完治まで3カ月前後かかるため、咳が止まっても継続的な治療が必要です。
入院する可能性は?
乳幼児の場合は百日咳が原因で死亡する可能性もあるので、早めに病院にいく必要があります。また、百日咳特有の症状に連続的な咳がありますが、咳が出ている時は患者がきちんと呼吸ができているかどうかを周りの人間が確認する必要があるでしょう。咳がひどいと酸素を取り入れることができず、顔が青くなるチアノーゼが出ることがあります。この場合、入院が必要になります。
大人は薬がいらないことも ただ、子供は重症化に注意
また、大人が百日咳に感染してもひどい症状は出ないため、薬を使った治療を行わずに済むことが多いですが、大人がかかった場合、乳幼児に近づかないように注意して下さい。百日咳は大人が重篤な症状に発展する事はまれでも、乳幼児だと重篤な症状になりやすいです。治療が進むと咳などが出なくなりますが、百日咳による微熱や小さな咳は続きます。楽になったからと言って安易な行動をすると、他の人にうつしてしまったり、ぶり返してしまったりすることがあるので気をつけましょう。
【百日咳関連の他の記事】
百日咳の原因、感染経路、症状、予防接種(ワクチン) 咳に特徴?熱はでない?病院に行く時期、家庭の注意点も解説
大人の百日咳の症状と疑問 妊婦への影響と予防接種の可否 胎児に免疫がつく?治療期間や感染増の理由も解説
百日咳と咳喘息 原因、流行時期、症状、治療の違い
百日咳の治療、検査、薬などについてご紹介しました。もしかして百日咳かもしれないと不安に感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、ご活用ください。
関連するQ&A
関連する記事
このトピック・症状に関連する、実際の医師相談事例はこちら
病気・症状名から記事を探す
- あ行
- か行
- さ行
-
- 災害
- 再放送
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
- 子宮頸がん検診・検査
- 子宮頸がんの症状
- 子宮頸がんのリスク・予防
- 子宮内膜症
- 脂肪肝
- 手術
- 出産後の症状・悩み
- 出産準備・入院
- 食事・授乳・ミルク
- 食欲
- 心臓病
- 自閉症
- 女性
- 自律神経失調症
- 腎炎・腎盂炎
- じんましん(蕁麻疹)
- 膵臓がん
- 睡眠
- 髄膜炎
- 頭痛薬、副作用
- 性器の異常・痛み
- 性器ヘルペス
- 性交痛
- 成長(身長・体重など)
- 性病検査
- 性欲
- 生理痛(生理・月経の痛み)
- 生理と薬(ピルなど)
- 生理不順・遅れ(月経不順)
- 摂食障害
- 切迫早産
- 切迫流産
- セミナー・動画
- 前立腺
- その他
- その他アルコール・薬物依存の悩み
- その他胃の症状・悩み
- その他うつの病気・症状
- その他エイズ・HIVの悩み
- その他肝臓の病気
- その他外傷・怪我・やけどの悩み
- その他心の病気の悩み
- その他子宮頸がんの悩み
- その他子宮体がんの悩み
- その他子宮の病気・症状
- その他出産に関する悩み
- その他腫瘍の悩み
- その他消化器の症状・悩み
- その他腎臓の病気・症状
- その他生理の悩み・症状
- その他臓器の病気・症状
- その他皮膚の病気・症状
- その他卵巣がんの悩み
- その他卵巣の病気
- その他流産の症状・悩み
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
協力医師紹介
アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。
記事・セミナーの協力医師
-
白月 遼 先生
患者目線のクリニック
-
森戸 やすみ 先生
どうかん山こどもクリニック
-
法村 尚子 先生
高松赤十字病院
-
横山 啓太郎 先生
慈恵医大晴海トリトンクリニック
-
堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
-
平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
Q&Aの協力医師
内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。