大人の百日咳の症状と疑問 妊婦への影響と予防接種の可否 胎児に免疫がつく?治療期間や感染増の理由も解説
- 作成:2016/03/11
百日咳は、子供は重症化する傾向がありますが、大人は子供ほど症状が重くありません。ただ、子供が感染するリスクを考えると、大人も対策をとる必要があると言えます。百日咳の大人の症状や、妊婦さんの注意点について、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
百日咳の大人の症状、子供との違いは?
百日咳は百日咳菌によって引き起こされる感染症です。通常、軽度の風邪症状から始まりますが、ワクチンを接種していない子供の場合、連続的な咳が、息が切れるまで続き、呼吸が難しくなるほどになります。結果として、呼吸困難になり、脳に障害が残ったり、咳が続くことで体力を消耗(しょうもう)してしまい入院が必要になることもあります。また子供の場合、死に至ることもある病気です。ただ、大人ではそこまで強い症状は多く見られません。大人の場合、「変に長引く咳が続いている」と感じるだけで百日咳だと気づかないこともあります。
子供の場合は、咳が続くことで顔が赤くなったりまぶたが腫れてむくむなど、目で見て分かるような症状が出ることも多いです。ただ、見た目の症状についても、大人に出ることはまれなので、問診で百日咳だと判断することは難しいといえます。
また、発熱も37度程度の微熱、もしくは発熱がほとんどないというケースが多いです。大人と予防接種をしていない子供とでは症状の強さが大きく異なり、子供の百日咳は命に関わる重篤な感染症である一方、大人の百日咳は咳がなかなか止まらない「たちの悪い風邪程度」との見方もできるでしょう。
治療期間は、子供も大人も同じ
しかし、感染から発症、完治まで3ヶ月前後(「百日」程度)かかるというのは子供でも大人でも同じで、根気強く治療を進めていかなければなりません。大人の場合には症状自体はそれほど辛くないので心配は必要ありませんが、小児は重症化しやすいため感染させないように注意する必要があります。
子供に感染させるリスクは?
咳は長く続くものの、咳が出始めてから2週から3週間が、最も感染力が高く、それ以降は感染力は落ちます。したがって、咳が続いているからと言って3カ月間ずっと子供から離れていなければいけないということではありません。
増える大人の感染 理由は?
近年大人が百日咳に感染するケースが増えていますが、これは子供の頃に受けたワクチンの効果が切れてしまっているからです。子供であれば重症化するケースもありますが、大人は重症化することはほとんどないのでワクチン接種を受ける人も少なくなりました。その一方で、百日咳に感染した大人が気づかないまま、子供に感染させてしまい、子供の百日咳が重症化するケースが後を経ちません。
妊婦の百日咳、胎児への影響はある?
お腹にいる赤ちゃんは母親の血液を通して栄養を受けとっていますが、血液をそのままもらっているわけではありません。そのため、妊婦が百日咳になったからといって百日咳菌が胎児の中に入り込むことはなく、胎児が百日咳にかかるということはありません。しかし、妊婦が長く咳き込むことで体力を消耗したり、お腹の胎児に激しい振動を与えたりしてしまうことは胎児にも良い影響を与えません。早めに医師の診断を受け、適切な治療を受けるようにしましょう。
妊婦の百日咳ワクチン接種、胎児への影響はある?
子供のころに三種混合ワクチンを受けた際、百日咳に対する免疫が付きますが、これは大人になると無くなってしまうものです。そのため、母親が百日咳に罹ってしまう事があります。母親がワクチン接種をして予防できれば良いのですが、ワクチンを接種してから免疫がつくまで時間がかかるため、出産後にワクチン接種をしていては間に合わないこともあります。そこで、妊娠中の適切な時期にワクチン接種をするという選択肢がでてきます。
予防接種で使うワクチンには無毒化された百日咳菌が入っていて、これをベースに母親の体の中で抗体が作られ、免疫がつきます。実は、妊娠中にワクチン接種すると、この抗体が胎児に移動する事がわかっており、生まれたばかりの赤ん坊でも百日咳菌に対して免疫を持つことができます。百日咳が心配な妊婦の方は、医師と相談の上で百日咳ワクチンの接種を検討すると良いでしょう。
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百日咳について大人や妊婦との関係をご紹介しました。もしかして百日咳かもしれないと不安に感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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