インフルエンザの治療と予防接種は胎児や授乳に影響する?しない?

  • 作成:2016/02/05

妊婦や授乳中の方は、「インフルエンザの予防接種が胎児や授乳に影響するのでは」と心配になるかたもいると思いますが、現時点では、大きな影響はないとの考え方が大勢です。妊婦の授乳中の方のインフルエンザの薬の影響も含めて、医師の監修記事でわかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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妊婦

予防接種の流産や胎児への影響についてのリスクの報告はない

一般的な予防接種は大きく「生ワクチン」と「不活化ワクチン」に分類されますが、現在市販されているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンと言われるものになります。不活化ワクチンはウイルスを殺して毒性をなくし、免疫をつけるために必要な成分を取り出したものです。そのため、免疫力の低下している方や高齢者、基礎疾患(持病など)を持っている方でも接種は可能で、推奨もされています。

妊婦に関しても、海外の報告では妊娠している方がインフルエンザを発症した場合、重症化するリスクが高いとの報告があり、世界保健機関(WHO)では妊娠している方をワクチン接種の優先対象としていて、日本でも妊娠している方を優先接種の対象としています。ただし、日本では妊娠している方において重症化が多いとの報告はありません。妊婦の方は胎児への影響を気にされると思いますが、妊娠初期にワクチンを接種したことにより、流産や先天異常の発生リスクが高まったとの報告は現在のところありません。また、授乳中の予防接種に関しても、母乳を介して子どもに影響を与えることはないとされています。

妊婦の接種時期は医師と相談を

接種回数と時期に関しては、以前まで1カ月間隔で、2回の接種が行われていましたが、現在では小児を除いて1回の接種でも効果は十分であるとされています。インフルエンザワクチンは注射してから免疫がつくまでに約2週間かかり、効果は4か月程度持続します。例年のインフルエンザ流行シーズンを考えると、11月下旬から12月上旬あたりに予防接種を受ければ、流行シーズンはカバーできると思われます。また、妊娠している方の接種時期ですが、基本的に不活化ワクチンですのでどの週数でも接種は可能で、健診に通っている産婦人科の医師らと相談して接種時期を決定すればよいでしよう。

「薬も胎児、授乳への影響なし」と考えられる

一方で、抗インフルエンザ薬の胎児への影響が気になる方もいると思います。抗インフルエンザ薬で現在多く処方されているタミフルやリレンザは胎児へ重大な影響を起こすことはないとされています。タミフルについて胎児への影響を調査した報告では、妊娠初期にタミフルを内服して出産した86人のうち、先天異常の児が生まれたのは1人という結果でした。一般的に先天異常は約3%の確立で起こるとされているため、この結果は通常と比べて高いものではありませんでした。

リレンザに関しても吸入する薬のため、母体の血液中に移行する量もわずかであり、胎児への影響はないものと考えられます。また、母親がタミフルやリレンザの投与を受けている期間であっても母乳は与えても良いとされています。ただし、子どもへの飛沫感染を考慮して、直接母乳を与えるのではなく、搾母乳を選択する場合もあることは覚えておいてよいでしょう。


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