妊娠中・授乳中・妊活中でもインフルエンザワクチンは接種できるの?~妊活中や母体への影響について~

  • 作成:2022/12/15

毎年この時期になると流行するインフルエンザ。ワクチンを接種する際気になる母体へのリスクはどうでしょうか?事前に知識をつけておき、心配事を減らしておきましょう。 インフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため、ウイルスは入っていません。 そのため妊娠中・授乳中・妊活中でも安全に接種可能です。インフルエンザワクチンを接種してから、効果が発揮されるまで2週間ほどかかるため、インフルエンザが流行する前にワクチン接種しておくことをお勧めします。 今回は、淀川キリスト教病院産婦人科医の柴田綾子先生が、妊娠中・授乳中・妊活中のインフルエンザワクチン接種について解説します。

柴田 綾子 監修
淀川キリスト教病院 産婦人科医長・産婦人科専門医
柴田 綾子 先生

この記事の目安時間は6分です

妊娠中・授乳中・妊活中でもインフルエンザワクチンは接種できるの?~妊活中や母体への影響について~

インフルエンザに感染すると母体にこんなリスクがある

妊娠中インフルエンザに感染すると、重症化や入院するリスクが高いとされています。オーストラリア・カナダ・イスラエル・米国の4か国で行われた研究では、妊娠中にインフルエンザワクチンを接種しておくことで、インフルエンザによる入院リスクを40%減少できたと報告されています(1)

妊娠中・授乳中・妊活中のインフルエンザワクチンについて

1. 妊娠中のインフルエンザワクチン

妊娠中でもインフルエンザワクチンの接種が可能です。インフルエンザワクチンによる赤ちゃんへの悪影響は現在報告されていません。

妊娠中にインフルエンザワクチン接種をしておくことで、母体だけでなく胎児もインフルエンザで重症になるリスクを抑えることができると言われています。

さらに妊娠中にインフルエンザワクチンを接種すると、抗体が胎盤を通じて胎児にも伝わり、生まれてきた子どもにもインフルエンザに感染するリスクを抑えることが可能です。(2)

妊娠中にインフルエンザワクチン接種をしても、胎児の奇形・死産・流産などのリスクは現在報告されておらず、悪影響を与える可能性は低いとされています(3)

例えば一例として、妊娠中にインフルエンザワクチン接種をした約4万人の子どもを、6歳になるまで追跡した研究では、インフルエンザワクチン接種済みの子どもの自閉症リスクは増加しなかったとの報告があります。(4)

また日本産科婦人科学会ガイドライン(2020)でも、インフルエンザワクチンの接種は予防に有効で、母体や胎児への危険性は全妊娠期間を通じてきわめて低いと解説しています。

2. 授乳中のインフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンを接種しても、授乳は通常通り続けることできます。

インフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため、ウイルスは含まれていません。そのため、インフルエンザワクチンを接種することで、母体でつくられた抗体が母乳を通して子どもへ移行し、インフルエンザの感染が減らせると報告されています(5)

3.妊活中のインフルエンザワクチン

妊活中でもインフルエンザワクチンを接種して問題ありません。

上記と同様に、インフルエンザワクチンにはウイルスは含まれておらず、妊活中や妊娠初期に接種しても卵巣・卵子・受精卵・胎児への悪影響はないとされています。

新型コロナウイルスワクチンとインフルエンザワクチン

新型コロナウイルスワクチンとインフルエンザワクチンは同じ日に接種が可能です(6)

通常は新型コロナウイルスのワクチンと別のワクチンの接種はそれぞれ”2週間”の間隔をあける必要がありますが、インフルエンザのワクチンは間隔をあける必要がありません。

同時に接種することで発熱などの全身性副反応はやや増加する傾向にあります(7)が、重篤な症状の増加は報告されていません。

新型コロナウイルスのワクチン接種から3か月以上経過した場合は、抗体の効果が減ってきており、再度のワクチン接種がお勧めです。

しかし上記の場合、3~5回目にノババックスのワクチン接種をする際は、前回の接種から6か月間隔を空ける必要があります。ご注意ください。

インフルエンザワクチンを接種して安心して生活しましょう。

上記により現在では、妊活中・妊娠中・授乳中の方でもインフルエンザのワクチンは安全に接種でき、胎児や子どもへの悪影響はないと考えられています。

これは新型コロナウイルスのワクチン接種も同様です。冬となりインフルエンザや新型コロナウイルス感染症が流行する前に、ぜひワクチン接種による感染対策をご検討ください。

参考文献
1. Mark G Thompson et al. Influenza Vaccine Effectiveness in Preventing Influenza-associated Hospitalizations During Pregnancy: A Multi-country Retrospective Test Negative Design Study, 2010–2016, Clinical Infectious Diseases, Volume 68, Issue 9, 1 May 2019, Pages 1444–1453.
2. Omer SB, et al.Maternal Influenza Immunization Trials Investigators Group. Efficacy, duration of protection, birth outcomes, and infant growth associated with influenza vaccination in pregnancy: a pooled analysis of three randomised controlled trials. Lancet Respir Med. 2020 Jun;8(6):597-608. PMID: 32526188
3. Giles ML, Krishnaswamy S, Macartney K, Cheng A. The safety of inactivated influenza vaccines in pregnancy for birth outcomes: a systematic review. Hum Vaccin Immunother. 2019;15(3):687-699.PMID: 30380986
4. Ludvigsson JF, Winell H, Sandin S, Cnattingius S, Stephansson O, Pasternak B. Maternal Influenza A(H1N1) Immunization During Pregnancy and Risk for Autism Spectrum Disorder in Offspring : A Cohort Study. Ann Intern Med. 2020 Oct 20;173(8):597-604. PMID: 32866418.
5.Schlaudecker EP,et al.IgA and Neutralizing Antibodies to Influenza A Virus in Human Milk: A Randomized Trial of Antenatal Influenza Immunization. PLoS ONE 8(8): e70867.2013.
6. 厚生労働省, 新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、同時に接種することはできますか。
7. Hause AM, et al. Reactogenicity of Simultaneous COVID-19 mRNA Booster and Influenza Vaccination in the US. JAMA Netw Open. 2022;5(7):e2222241.

2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。

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