妊娠中は、新型コロナのワクチン接種を控えた方が良いですか?
- 作成:2022/04/26
妊娠中には、胎児への影響を考えて避けた方が良い薬やワクチンが色々とあります。いま接種がすすめられている新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチンも、妊娠中は避けた方が良いのでしょうか。さまざまな情報が出回っていて悩む人も多いかと思います。今回は、妊娠とコロナワクチンについての基本的な考え方をおさらいしておきましょう。
この記事の目安時間は3分です
新型コロナのワクチンは、妊娠に悪影響を与えないことがわかっている
たとえば麻疹や風疹などのように、弱らせた病原体が含まれている生ワクチンの場合は、妊娠中の接種を避ける必要があります。しかし、今回のmRNAワクチンにはウイルスそのものは含まれていないため、妊娠中でも接種することができます。
実際に、妊娠中にワクチン接種した16,000人を対象にした調査で、早産・低出生体重児・奇形、さらに新生児の入院や死亡といったトラブルの発生率は、ワクチンを接種していない妊婦のものと差はなかったことが確認されています1)。他にも、ワクチン接種時に既に妊娠していた31,000人と、ワクチン接種後に妊娠が判明した5,000人を対象にした調査でも、通常の出産・流産・死産の割合と何ら違いはなかったことも確認されています2)。このことから、妊娠中にmRNAワクチンを接種しても、妊娠に悪影響があったり、あるいは生まれてくる胎児に悪影響が及んだり…といったことを心配する必要はありません。そのため、妊娠中であっても新型コロナのワクチン接種を控える必要はありません。
妊娠前や妊娠中にワクチン接種をしておくと、生まれてくる子どもに抗体を届けることができる
妊娠中のワクチン接種に慎重になるのは、お腹の子どものことを考えてのことかと思います。妊娠中にmRNAワクチンを接種すると、母親が作った抗体は“へその緒”を通して胎児に届けられるメリットがあることがわかっています3)。つまり、お腹の子どもに抗体をプレゼントすることができる、ということです。
また、ワクチン接種をしている母親から生まれた子どもは、ワクチン接種をしていない母親から生まれた子どもよりも、新型コロナウイルス感染症に罹患して入院したり、重症化してしまったり…といったことが、61~80%ほど少ないことがわかっています4)。現時点(2022年4月)では、新型コロナのワクチンは5歳になるまで接種することができませんので、妊娠前・妊娠中にワクチン接種をして、生まれてくる子どもに抗体をあげておくことは、感染対策として非常に有意義です。お腹の子どもを大事に思う方にこそ、mRNAワクチンの接種を前向きに考えてもらいたいと思います。
自分を守るという意味でも大事~妊婦のコロナ感染は、重症化や早産のリスクになる
妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、通常よりも中等症~重症になりやすく、また早産も起こしやすくなる、ということがわかっています5,6)。妊娠中は使える治療薬も少なく、対応できる医療機関も少ないという問題もあります。そのため、自分自身を守るという意味でもワクチン接種が大切です。妊娠前・妊娠中を問わず、ワクチン接種をご検討ください。
(参考)
- 国立成育医療研究センター「妊娠・授乳中の新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種について」
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会・日本産婦人科感染症学会日本産科学会「新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)について(第 2 報)
1) JAMA Pediatr . 2022 Feb 10. doi: 10.1001/jamapediatrics.2022.0001. Online ahead of print.
2) N Engl J Med . 2021 Jun 17;384(24):2273-2282.
3) JAMA . 2021 Jun 15;325(23):2370-2380.
4) CDC:MMWR 2022 Feb15
5) J Glob Health.11:05018,(2021) PMID:34221361
6) Clin Infect Dis . 2022 Jan 17;ciac028. doi: 10.1093/cid/ciac028. Online ahead of print. PMID:35037051
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