新型コロナのワクチン、3回目のワクチン接種はした方が良いですか?

  • 作成:2022/04/26

2022年に入って、日本でも新型コロナウイルス感染症の3回目のワクチン接種(ブースター接種)が始まっています。このブースター接種にはどのような意義があるのか、本当に安全なのか、接種を迷っている人も多いと思いますが、まずは基本的なところを押さえておきましょう。

この記事の目安時間は3分です

新型コロナのワクチン、3回目のワクチン接種はした方が良いですか?

(画像素材:ピクスタ)

なぜ2回接種では十分でなくなったのか?

そもそも、ワクチン接種は「2回」という方針で進んでいました。それがなぜ3回目の追加接種が必要になったのかがわからない、という方も多いと思います。これに関しては、いま日本でも問題になっている「オミクロン株」が大きく影響しています。

2021年まで問題になっていた「デルタ株」は、2回のワクチン接種から半年が経過していても、発症を60%、重症化を85%ほど防ぐ効果が維持されている1)ことがわかっていました。ところが、世界で流行している「オミクロン株」では、2回のワクチン接種から半年が経過すると、発症を10%、重症化を50%程度しか防げない1)ことが明らかになってきました。これは、社会として感染流行を防いだり、個人レベルでも重症化を防いだりするのには十分な効果と言えないことから、3回目の追加接種の必要性が浮上してきました。

3回目の接種に、どのくらいの効果があるのか?

ワクチンの3回目接種(ブースター接種)を行うことで、「オミクロン株」に対しても発症を60~70%、重症化を95%近く防げるようになります1)実際、3回目の接種を済ませた人は2回接種の人に比べると、発症するリスクが1/3程度にまで減ったという報告もあります2)。また、副反応も1~2回目のときとほぼ同様3)で、特に3回目に危険な反応が増えるといったこともありません。

このことから、3回目接種は「オミクロン株」が流行している中でも効果的な対策になる、ということがいえるでしょう。

「オミクロン株」は重症化しないから予防しなくても良いのでは?

「オミクロン株」は重症化しにくい、とよく話題になりますが、厳密にいえば重症化しないわけではありません。たしかに、「デルタ株」に比べると重症化リスクが1/2~1/3程度にまで低くなっている、とするデータは得られています4)が、そもそも新型コロナウイルス感染症はインフルエンザよりも致命率は何倍も高い感染症5)ですし、「デルタ株」はそこからさらに重症化リスクの高い変異株でした。この「デルタ株」に比べると「オミクロン株」では重症化リスクは下がった、という話ですので、「オミクロン株」が風邪やインフルエンザと同じくらいにまで重症化しにくくなったという意味ではありません。

また、新型コロナウイルス感染症は、インフルエンザを90%以上減らせるような感染対策をしていてもなお流行してしまう6)ほど、感染力の強い感染症です。これによって感染者数が大幅に増えれば、たとえ重症化リスクが多少低くなっていたとしても、重症化してしまう人の数は多くなり、医療体制を逼迫させてしまいます。

さらに、この「重症」という言葉が意味するのは、集中治療室で治療を受けたり、人工呼吸器をつけられたりするような“瀕死の状態”である7)ことにも注意が必要です。40℃を超える高熱が出て、頭痛や倦怠感、喉の痛みで食事もとれない、夜もろくに眠れない…そんな症状が1週間続いたとしても、肺炎の所見がなく酸素投与も不要であれば、それは分類上「軽症」に該当します7)。「重症化しにくい」は「つらい症状に悩まされることはない」とは全く異なることは、知っておく必要があります。

なお、新型コロナウイルス感染症は、インフルエンザなどの感染症と違って、罹患したあとに脳卒中や脳出血といった血液系の疾患を起こしやすくなるほか、呼吸困難や神経障害といった日常生活に支障を来たす後遺症を起こすリスクも確認されている8)など、感染した場合の長期的な悪影響も明らかになってきています。ワクチン接種は、こうした長期的な悪影響を防ぐ9)という意味でも、非常に重要です。

1) N Engl J Med . 2021 Jul 8;385(2):187-189.
2) JAMA . 2022 Jan 21. doi: 10.1001/jama.2022.0470. Online ahead of print.
3) https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.10.10.21264827v2.article-metrics
4) https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/
attachment_data/file/1045619/Technical-Briefing-31-Dec-2021-Omicron_severity_update.pdf

5) Lancet Infect Dis . 2020 Jun;20(6):630-631.
6) BMJ . 2022 Jan 12;376:e067519.
7) 厚生労働省:「新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第6.2版」
8) Lancet Psychiatry . 2021 May;8(5):416-427.
9) Lancet Infect Dis . 2022 Jan;22(1):43-55.

病気・症状名から記事を探す

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師