感染時には症状がない場合も?小児コロナの後遺症「Long COVID(ロング・コビット)」とは
- 作成:2022/04/16
小児科医・新生児科医の今西洋介先生に「小児コロナ」のセミナーにご登壇いただきました。そのセミナーの模様から子どもの新型コロナ感染と後遺症についてお伝えします。
この記事の目安時間は6分です
2022年の3月から5~11歳を対象にした新型コロナワクチン接種が可能になりました。
子どもへのコロナ対策、コロナワクチン接種について迷う保護者の方も多くいらっしゃることかと思います。そこで、今回、AskDoctorsでは、小児科医・新生児科医の今西洋介先生に「小児コロナ~今わかっていること、いないこと~」というタイトルでセミナーにご登壇いただきました。
本セミナーに先立って行ったアンケートでは「子どもにワクチン接種をさせるかどうか決めかねている」と回答した人が62%に上るなど、ワクチン接種に関して不安を抱えている保護者が見られます。
小児科医・新生児科医の今西洋介先生に、子どものワクチン接種など「小児のコロナ」に関する最新情報を語っていただきました。そのセミナーの模様を全5回に分けた本シリーズ第1回は、子どもの新型コロナ感染と後遺症についてお伝えします。
<本記事に関する注意事項>
- 3/6(日)20時時点での情報です。
- 中立的な立場からの情報提供です。
- 開示すべき利益相反はありません。
- 個人の見解で、所属する学会や機関の見解ではありません。
本記事で分かること
- 子どもの感染が急増…新型コロナは子どもにとって軽症?
- 重症化リスクの高い子どもと新型コロナで生じやすい合併症とは
- 感染時には症状がない場合も?小児コロナの後遺症Long COVIDとは
- 子どもがコロナにかかったら?保護者がとるべき対応方法
- 見逃さないで…新型コロナの子どもへの「間接的な影響」
子どもの感染が急増…新型コロナは子どもにとって軽症?
次の図は、昨年2021年と今年2022年の新型コロナの感染者数を比較したものです。左側はデルタ株が流行していた2021年7月27日時点の性別・年代別陽性者数(累積)、右側はオミクロン株による感染が拡大していた2022年2月8日時点の性別・年代別陽性者数(週別)です。図から、2022年になって10代と10歳未満の感染者数が著しく増えているというのがわかると思います。
新型コロナに感染しても子どもは軽症で済むといわれますが、実際のところどうなのか気になる保護者も多いことでしょう。
次のグラフは厚生労働省ワクチン分科会が出したデータで、左側が0〜4歳、右側が5〜11歳です。このグラフを見ると、肺炎以上に重症化した子どもは、2021年夏以降のデルタ株の感染期に増えていますが、2022年1月以降のオミクロン株の感染期はそれを上回る勢いで増えています。
このように、オミクロン株で子どもの重症患者が増えていることが明らかになりました。
オミクロン株はデルタ株に比べて重症化しにくく、オミクロン株の入院率ではデルタ株の1/2、死亡率では1/3であるといわれます。ただ、10歳未満の子どもの入院リスクは両社ともに差がないといわれています。(Lancet ,preprint 2022; Feb 4)
重症化リスクの高い子どもと新型コロナで生じやすい合併症とは
「小児コロナの重症化リスク」という米国の論文(National COVID Cohort《16万人の子どもを対象としたコロナに関する健康状況調査研究》JAMA Netw Open 2022; 5(2): e2143151)が2022年に発表されました。生活環境などさまざまな社会的背景も影響していると思われますが、以下が重症化のリスクがある子どもたちと言われています。
- 黒人やアフリカ系の人種
- 12歳未満
- 男の子
- 小児の基礎疾患あり
また、子どもの新型コロナによる合併症としては、肺炎だけでなく以下が挙げられます。
- クループ症候群
※犬が吠えるような高いトーンのケンケンという咳が続く - 熱性けいれん
- MIS-C(小児多系統炎症症候群)
※コロナ感染の2〜6週後に発熱、腹痛など胃腸症状、胸痛を起こす。年⻑児に多く、川崎病に似た症状が出る
この中で最も懸念されるのがMIS-C(小児多系統炎症症候群) です。目が充血して真っ赤になったり舌にブツブツが出たりする川崎病に似た症状が、新型コロナ発症後の2〜6週間後に出現するといわれています。現在、米国で年長児に多く発症しています。
感染時には症状がない場合も?小児コロナの後遺症Long COVIDとは
新型コロナの子どもの後遺症としては、「ロング・コビット(Long COVID)」があります。これまでに行われた12種の新型コロナ研究で対象となった23141人の子どもを評価した2022年の論文(システマティック・レビュー, J Infect 2022. 84(2). 158-170)では、集中力低下、頭痛、匂いの消失などの症状が出ることが報告されています。コロナに感染して4週間以上経ってから発生し、数週間から数カ月間続くといわれています。また、感染時に症状がなくても、ロング・コビットが起きる可能性があります。
子どもがコロナにかかったら?保護者がとるべき対応方法
これまでお伝えしたように、2022年3月現在新型コロナに罹患する子どもが増えていますが、そうした中で実際に自分の子どもが感染した時にどう対応したらいいか不安を感じる保護者は多いと思います。
国立成育医療センター(出典:国立成育医療センター 「新型コロナウイルスに感染したお子さんが自宅静養される際のポイント」)では感染した子どもが自宅静養する際の保護者の対応・確認ポイントを以下のように挙げています。
- 子どもの機嫌、食欲、顔色、呼吸の様子、意識を確認
- 部屋を分ける
- 世話をする人は、お互いマスクをつける
- 世話をする人は、こまめに手洗いを
- 日中は換気を良くする
- おむつは袋を二重にして捨てる (新型コロナウイルスは便に排出される)
新型コロナウイルスは便に排出されるため、子どもの便が感染経路になる可能性があることに気をつけましょう。おむつ替えの時はゴム手袋をしたり、廃棄時の袋は二重にしたりするなど、世話をする保護者が直接おむつに触らないようにすることが感染予防において大事です。
見逃さないで…新型コロナの子どもへの「間接的な影響」
新型コロナの子どもへの影響としては、感染症による体調悪化などの症状以上に「間接的な影響」も大きいといわれています(Pediatrics 2021; 147:1-3)。たとえば、人と接触する機会が減り、ストレス発散の場がなくなるとうつ症状が出やすくなるため、子どものメンタルヘルスには注意が必要です。在宅時間が長くなる中で児童虐待や家庭内暴力が増えている例も見られます。また、見逃されがちですが、10代の妊娠相談件数が日本国内でも増えているのも問題だと考えています。
まとめ
今回は、現在の子どもの新型コロナの感染状況やオミクロン株の流行で子どもの重症患者が増加していること、さらには感染後に懸念される合併症や後遺症、子どもが感染した場合の保護者の対応策などについてご紹介しました。次回は、子どものワクチン接種についてお伝えします。
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小児科医/新生児科医
日本小児科学会専門医、日本周産期新生児専門医
一般社団法人チャイルドリテラシー協会所属。日本小児科学会健やか親子21委員。大阪大学公衆衛生学博士課程在籍。講談社モーニング連載『コウノドリ』の漫画・ドラマの取材協力。m3(エムスリー)、Askdoctors、yahoo外部執筆者として公衆衛生学の視点から周産期医療の現状について発信。
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