多形滲出性紅斑の原因、症状、治療、予防方法 生命の危険も?じんましんにている?
- 作成:2016/10/13
多形滲出性紅斑とは、丸く赤い発疹が現れる病気で、湿疹やじんましんと似ていることがあります。ただ、重症化すると、視力障害などの後遺症を残す可能性があるだけでなく、生命の危険もあります。原因や治療を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
多形滲出性紅斑とはどんな病気?症状は?
「多形滲出性紅斑」とは、丸く赤い発疹が多くできて、水ぶくれとなることがある皮膚の病気です。多形滲出性紅斑の症状は湿疹やじんましんと似ていますが、赤い軽度の盛り上がりで、典型的なものですと、中心がややくぼんでいます。
乾燥症状のないところが湿疹との違いです。また数時間で出たり消えたりしないところが、蕁麻疹との違いです。
多形滲出性紅斑は、肘、膝、手のひら、足の裏、手足などに発疹が現れることが多いです。重症化すると、眼、唇、口内、陰部などの粘膜が赤くなったり、ただれたりして、発熱、関節痛、倦怠感などの症状も現れます。さらに、体全体が真っ赤になって水ぶくれができるような場合には、生命に危険が及ぶこともあります。
多形滲出性紅斑を発症したときに、「湿疹やじんましんだろう」などと、他の病気と自己判断してしまうと、放置されてしまうことが少なくありません。しかし、多形滲出性紅斑は、重症化すると生命に危険が及ぶ可能性があるだけでなく、後遺症が残ることもある病気です。
皮膚に気になる症状があるときは、自己判断せずにすぐ皮膚科の医師に相談しましょう。
重症化すると生命に危険を及ぼす可能性も
多形滲出性紅斑は、全身に多数の発疹が現れるようになると、通常、発熱やだるさや筋肉痛などの症状がみられます。そのような状態となった多形滲出性紅斑は、はしかや風疹などの熱と発疹を伴う感染症と、見分けるのが難しいこともあります。
多形滲出性紅斑が重症化すると、「スティーブンス・ジョンソン症候群」「中毒性表皮壊死症」「薬剤性過敏症症候群」などとなってしまうことがあります。
薬剤性過敏症症候群は、肝臓や腎臓の機能障害などを起こす病気です。スティーブンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症は、肝機能障害、多臓器不全、敗血症などの合併症を起こすことがあります。
多形滲出性紅斑が重症化して、目の結膜にも症状が出てくると、症状が回復した後も視力障害、眼球の癒着(本来くっついていないところがくっつくこと)などの後遺症が残ってしまうことがある病気です。発疹をはじめ発熱やだるさなどの症状が現れた場合は、すぐに皮膚科を受診しましょう。
多形滲出性紅斑の主な原因
多形滲出性紅斑の主な原因として、以下のようなものが考えられます。
・ウイルス、細菌、真菌などによる感染症
・薬の副作用による薬剤アレルギー
・自己免疫の異常による膠原病
・アレルギー体質
上記のうち、原因として多いのは、ウイルス、細菌、真菌などによる感染症の影響とみられます。ウイルスによる単純ヘルペスの発症後や、「マイコプラズマ」という細菌に感染した後に比較的発症しやすいとされています。
薬剤のアレルギーとして現れるタイプもよくあります。早めに原因となっている薬剤の使用を中止すると、外用剤(塗り薬)のみで治ることもありますが、原因となった薬剤をしばらく継続してしまうと、重症化して「スティーブンス・ジョンソン症候群」や「中毒性表皮壊死症」となってしまうことがあります。また、自分の体の成分に免疫が誤って反応して起こる膠原病の症状の1つとして、多形滲出性紅斑が生じることもあり、そのような場合は膠原病の治療をすることが必要となります。
多形滲出性紅斑の治療
薬の影響で、多形滲出性紅斑を発症した可能性がある場合は、まず薬の使用を中止することが必要です。薬剤が原因の多形滲出性紅斑では、原因となっている薬の使用を継続してしまうと、治療に反応せず重症化してしまいます。したがって、治療の前には診察を行い、病気の原因を明らかにすることも大切です。
多形滲出性紅斑の場合、軽症例と重症例では治療法が異なることがあります。 軽症の場合は、発疹を軽減させる働きのある「副腎皮質ステロイド薬」という塗り薬を使ったり、炎症を抑える働きの抗ヒスタミン薬を服用したりすると、通常1週間から2週間で治ります。
ただし、細菌やウイルスが多形滲出性紅斑の原因である場合は、速やかに治療に反応する場合でも完治するまでに2から4週間かかることが多いようです。
なお、多形滲出性紅斑を治療するときは、皮膚の症状の治療だけでなく、病気の原因となる細菌やウイルスを抑制する治療を、同時に行うこともあります。
重症の場合は、入院して治療を行うことが多くなります。症状を抑えるために、飲み薬または点滴で副腎皮質ステロイド薬を投与し、患者さんの症状によっては塗るタイプの副腎皮質ステロイド薬、水分や栄養素を補給するための補液なども使用します。
また、目の粘膜に症状がみられるときは、後遺症が生じてしまうこともあるため、眼科医の診察と治療を同時に行うことが必要です。
多形滲出性紅斑の予防対策
多形滲出性紅斑は年齢、性別を問わず発症することがある病気ですが、予防する方法は今のところわかっていません。
なお、薬剤アレルギーがある人は、原因となる薬剤を誤って使用しないことが重要です。一度でも薬剤アレルギーを起こした時には、その薬剤名を記録しておいて医療機関を受診するときには必ず伝えましょう。後発品(ジェネリック)の場合は、製品名が異なることがありますおで、成分名をしっかり把握しておくことが、最も確実です。
多形滲出性紅斑についてご紹介しました。原因不明の皮膚の症状に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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