ライム病の原因、症状、治療、予防 媒介するマダニの取り方に要注意
- 作成:2016/06/03
ライム病は、マダニが媒介する菌によって感染する病気です。皮膚の症状が特徴的ですが、目や神経に症状が出て、命にかかわることもあります。症状や治療、予防方法を含めてい、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
ライム病とは?原因は?
ライム病は、マダニによって媒介される「スピロヘータ」という微生物に感染することで発症する感染症です。人間への感染は、マダニに咬まれることが原因となります。なおマダニは数ミリの大きさで容易に目で見ることができ、吸血すると膨れて1センチ以上になることもあります。ライム病の流行地域でマダニにさされてもライム病を発症する率は5%以下とされていますが、発症すると皮膚や神経に炎症をもたらすなど、様々な症状を引き起こします。
欧米では年間数万人にも上るライム病患者が発生し社会問題になっており、日本でも1986年以降、数百人の患者が確認されています。国内の発症の主な分布は北海道および長野県を中心として、本州中部より北部に拡がっています。西日本ではマダニに刺された時にはライム病より日本紅斑熱に注意が必要です。
ライム病によく見られる症状
ライム病の症状は、全身にわたって色々な形で現れます。
特によく見られるのは、マダニに咬まれた部分を中心として肌が赤く盛り上がる「遊走性紅斑(ゆうそうせいこうはん)」を始めとする皮膚の炎症と、髄膜炎(ずいまくえん)などの生命にかかわる重大な疾患に発展することのある中枢神経症状です。その他にも、末梢神経麻痺、不整脈(ふせいみゃく)などの心疾患(しんしっかん)、関節炎などが起こるケースもあります。
皮膚の症状は早期から現れることが多く、頭痛や悪寒(おかん)、関節痛、筋肉痛といったインフルエンザに似た症状を伴うこともあります。初期の皮膚症状は自然に消えますが、ライム病が治癒しているのではなく、やがて全身に感染が広がります。顔面神経麻痺などの神経症状は、全身に病原体である「スピロヘータ」が運ばれて広がる「播種期(はしゅき)」以降に現れることが多く、その時期には関節炎もよく起こります。
重症化した例は日本ではほとんどありませんが、感染後数カ月から数年にわたって、慢性の関節炎や「萎縮性肢端皮膚炎(いしゅくせいしたんひふえん)」といった症状が現れる可能性もあります。
ライム病の治療方法は?
ライム病の治療には、スピロヘータを滅ぼすために抗菌薬を用います。遊走性紅斑などの皮膚症状や神経症状が出ている時には「ドキシサイクリン」や「アモキシシリン」を2週間から4週間ほど内服するのが普通です。神経症状がある場合には「セフトリアキソン」という抗生物質の点滴が使われることもあります。
ライム病を予防するために
日本ではライム病は多くはありませんが、マダニに刺されることによって日本紅斑熱や「重症熱性血小板減少症候群」などと呼ばれる病気になることもあります。マダニに咬まれないように注意して、病気を予防するようにしてください。マダニは野山に多く生息し、春から秋にかけて活動します。冬以外の季節に野山へ行くときは、市販の虫よけスプレーを使うこと、できるだけ長袖長ズボンを着用し肌の露出を防ぐこと、虫の多い藪などに立ち入らないことを心がけましょう。草むらにシートを敷かずに寝るのはとても危険な行為です。
マダニは、一度咬みつくと数日から数週間肌に吸着しています。噛み付いてしばらくすると、マダニの口の部分が皮膚にくっついて取れにくくなります。またライム病はマダニに刺されてから48時間から72時間で感染することが多いので、早めに取るのが良いとされています。
マダニを取る時にマダニを押しつぶすと、マダニの中の病原微生物が皮膚の中に押し出され、感染症の危険性が高まります。またマダニを無理に引きちぎるとマダニの口の部分が体に残ってしまいます。かといって、マダニが自然に落ちるのを待つと、皮膚の中へより多くの病原微生物が入ることになります。咬まれてしまったときは早めにマダニをそっと慎重に引き抜くのが良いのです。咬まれてからあまり時間がたってない時には、マダニのできるだけ口に近い部分をピンセットでつまんで、そっと引き抜くとうまく取れることが多いようです。引き抜いたマダニをルーペで観察して、マダニの体が切れている時には、口の部分がちぎれて皮膚の中に残っている可能性が高いと判断できます。そのような場合は、皮膚科では麻酔薬を注射して、マダニが吸着していた皮膚を切除します。またマダニが硬く固着処置している時には、マダニが付いている皮膚をマダニと一緒に切除することもあります。
ライム病についてご紹介しました。皮膚の症状に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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