妊婦と子供の帯状疱疹 妊婦は治療可?赤ちゃんに影響は?子供もなる?授乳中はどう対応?
- 作成:2016/02/19
帯状疱疹は、水ぼうそうを経験していると、子供がなることがあります。一方で、妊婦や授乳中の薬を使った治療については、可能性のあるリスクと、薬の効果による利益を考えて、薬を投与するかどうか決定します。どのようなポイントを考えるべきなのかなどを、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
子供も帯状疱疹になる?
帯状疱疹と水疱瘡(水痘)のウイルスは同じです。帯状疱疹は、一度水疱瘡にかかった人が、その後、年月の経過にともなってウイルスに対する免疫が落ちた時に発症する病気です。したがって、水ぼうそうを発症したことのない赤ちゃんや子供は帯状疱疹を発症しません。
ただ、小児の帯状疱疹は少ないのですが、水ぼうそうになった数年後に、帯状疱疹を発症する例があります。子供が帯状疱疹になる事例では、水疱瘡になった時に、抗ウイルス剤の薬を飲んで治療した結果、水疱瘡が非常に軽く終わったというケースであることが多いようです。
妊婦が帯状疱疹になった際の治療 薬は使える?
妊婦さんは、大人ですので、帯状疱疹になることはありえます。妊娠中に帯状疱疹になってしまった場合、治療については、3つの点から考えることが必要です。
まず初めに薬剤についてです。ある薬剤が、妊娠に悪影響があるかどうかについて学問的に決着をつけるためには、その薬剤を投与した妊婦と投与しなかった妊婦を追跡調査して、生まれた子供に薬による悪影響があったかどうかの研究を行う必要があります。ただ、悪影響が出た時のことを考えると、倫理的に許容される研究ではありませんから、この種の議論に決着をつけることは難しいのが実情です。
帯状疱疹の代表的な抗ウイルス剤の飲み薬である「バラシクロビル」の添付文書(使用上の注意などが書いてある文書)にも、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」という記載があります。「危険性」という言葉が出てくると不安になる方もいるかもしれませんが、この表現は特に危険な薬剤であると述べているのではありません。
薬の性質として、抗がん剤などのように細胞分裂を抑える性質があったり、過去に使用された結果、奇形が発生したという事例が多数ある薬剤、つまり妊娠中の投与の危険性が高い場合は、添付文書に「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」という記載になります。
したがって、帯状疱疹の治療に使う「バラシクロビル」については、危険性がそこまで高いという判断にはなっていないと考えて良いでしょう。
帯状疱疹は胎児の奇形につながる?
妊婦さんの注意点の第2点目は、奇形との関連です。妊娠のごく初期に、赤ちゃんが子宮内に細胞として存在している時期では、奇形は理論上発生しません。ただ、帯状疱疹によって、妊娠初期に妊婦の健康が著しく害されると妊娠が継続できなくなることがあります。妊娠末期で、お腹のなかで既に完全に赤ちゃんの体ができあがっている状態であれば奇形の心配はありません
悪化すれば、お腹の赤ちゃんに影響する可能性も
妊婦さんの最後の注意点は、病気の性質についてです。帯状疱疹は免疫に特に異常がなければ薬剤を使わなくても治るでしょう。しかし、悪化するとウイルスが血液中に入って全身に運ばれてしまうことがあり、そのようなときにはお腹の赤ちゃんにも影響する可能性もあります。また、帯状疱疹が悪化して後遺症として痛みが長く残るということもあります。
医師は、薬剤の事情と、妊娠の時期、病気の性質という3つの観点から考えて、妊娠中に抗ウイルス剤を投与した方が良いかどうかの判断を行っています。妊娠中の治療については、3つのポイントから考えて、どのような治療にするのか、医師とよく相談するようにしましょう。
新生児は治療可能?
薬の成分は母乳中に出ることがわかっていますから、授乳時の帯状疱疹の治療についても、妊婦への治療と同様のことを考慮する必要があります。
抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル)を乳児に与えることが悪いかどうかについては、ある程度、医学的な知見が蓄積されています。
まれなケースではありますが、水ぼうそうになっていない母親から出生した新生児が、出生直後に水ぼうそうウイルスに感染した時には、治療をしないと致命的な結果となることがあります。そのような場合は、治療薬を投与せずに経過を見ることに倫理的問題がありますから、抗ウイルス剤を投与して治療します。
新生児の治療について、今までに特に大きな問題は起きていません。薬剤の添付文書では「授乳婦への投与は慎重に行うこと」という記載になっていて、「科学的に問題がある」という趣旨の書き方にはなっていません。
授乳時期に帯状疱疹の薬は飲んで良い?
抗ウイルス剤を投与せずに様子を見るとどうなるでしょうか。新生児は生後6カ月程度までは、母親由来の免疫を受け継いでいますが、お母さんの帯状疱疹の症状が出ている部位に、授乳中に誤って接触すると、水ぼうそうを発症する可能性があります。お母さんが、抗ウイルス剤を使わずに、様子を見ることによって、赤ちゃんがウイルスに感染する可能性のある水ぼうそうのある時期が長引いて、感染の機会が増えることになります。
もう一つの選択は授乳をやめて、抗ウイルス剤を内服することですが、ミルクに切り替えるとミルクアレルギーを起こしてしまうリスクもあるかもしれません。
このように考えて、実際の医療現場では授乳時でも抗ウイルス剤が投与されることが多いようです。もちろん授乳をやめて、抗ウイルス剤を内服するのが合理的である場合もあるため、医師の話をよく聞いて、納得した上で、治療するようにしましょう。
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帯状疱疹と妊娠や授乳の関係などについてご紹介しました。帯状疱疹の治療などに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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