脳性麻痺の原因と4つのタイプ、寿命への影響 病気でもなる?

  • 作成:2016/05/17

脳性麻痺のタイプは、脳への酸素供給不足や、生まれた直後にかかる病気などが原因となります。どのような状態が原因となりうるのかや、寿命への影響を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は3分です

脳性麻痺の原因は何?

脳性麻痺の定義

「脳性麻痺」とは、生まれる前から生後4週間までに、何らかの原因により脳の損傷が起きて、筋肉の動きを調整する機能に問題が生じ、運動や姿勢などの異常がみられる状態です。運動野以外の部位にも損傷があるときは、知的障害、視覚障害、聴覚障害などの症状が出ることがあります。脳性麻痺は、新生児の1000人に2、3人が発症すると言われています。

脳性麻痺の4つのタイプ

麻痺のある部位や症状などにより「痙直型」「アテトーゼ型」「運動失調型」「混合型」に分けられます。脳性麻痺のタイプ別の特徴は次のとおりです。

痙直型:この型は脳性麻痺の70%を占めます。筋肉が過剰に緊張するため、筋肉が硬くなって筋力が低下し動作がぎこちなくなります。影響が両腕と両脚に及ぶ場合(四肢麻痺、ししまひ)、主に脚と下半身に及ぶ場合(対麻痺または両麻痺)、片側の腕と脚のみに及ぶ場合(片麻痺)の3パターンがあります。麻痺を起こした腕や足は、硬直して筋力が低下します。「痙性四肢麻痺(けいせいししまひ)」と呼ばれる子どもの場合、けいれんや嚥下障害に加えて、精神遅滞(知的障害とほぼ同義、重い場合もあります)がよくみられ、嚥下障害があるとむせやすくなります(誤嚥、ごえん)。誤嚥を繰り返すと、肺に回復不能な損傷が起きることがあります。「痙性両麻痺」と呼ばれる子供の場合は、一般に精神発達は正常で、けいれんを起こすのはまれです。「痙性片麻痺」の子供では、約4分の1の方で知能が平均より低く、3分の1の方にけいれんがみられます。

アテトーゼ型:脳性麻痺の小児の約20%にみられ、自分の意志に関係なく手足や体が動く「不随意運動」が起こり、姿勢を保つことが困難な状態で左右対称の姿勢が取りにくいタイプです。このタイプの子供の場は、一般的に知能は正常で、けいれんを起こすのはまれです。

運動失調型:脳性麻痺の約5%を占めます。体の協調がうまくとれず、動きが不安定で、筋力低下や筋肉のふるえがみられます。そのため、速い動きや細かい動きが難しく、脚の間隔を広く開いた不安定な歩行になります。

混合型:上記3つのタイプのうち複数のタイプの症状が現れるもの。

脳性麻痺の有無は、生まれた直後に見分けるのが困難ですが、赤ちゃんの成長に伴い、歩く、座るなどの動作に支障が現れ、筋肉の痙攣(けいれん)などの症状が起こります。また、麻痺の症状、部位、程度は個人差があり、患者さんの成長とともに変化することもあるのが特徴です。

脳性麻痺は、原因である脳の傷を治す方法がないため、脳性麻痺の症状と生涯付き合う必要があります。ただし、リハビリや薬物療法などの活用で、症状を軽減することは可能です。赤ちゃんの動作や姿勢が気になる場合は、早めに小児科医に相談しましょう。

脳性麻痺の原因

脳性麻痺の原因は様々ですが、出生児への何らかの外傷、頭蓋内出血、新生児仮死などが主な原因で、15%から20%を占めます。これらの原因の場合、病気によって、一時的に脳へ酸素が届かない状態になるため脳細胞の損傷が起こりやすく、生涯に渡って脳性麻痺の障害が残る原因となります。その他に風疹、サイトメガロウィルス感染症などの胎内感染なども原因として挙げられます。また36週未満の早産、2,500g未満の低体重児、2人以上同時妊娠する多胎などは、脳の発育が不十分な段階で生まれることが多くなるため、脳性麻痺のリスクが高いことがわかっています。

病気の後遺症でもなる可能性

脳性麻痺は、生後間もなく重い病気にかかった後の後遺症として発症することもあります。特に出生後1年程度は脳が未熟であることから、脳をおおう組織の炎症(髄膜炎)、敗血症などの感染症、外傷、痙攣(けいれん)の重積(長期の持続や繰り返し)、血液に含まれているビリルビンの割合が高い「高ビリルビン血症」などで脳に損傷が生じて、脳性麻痺になることがあります。

高ビリルビン血症は、進行すると「核黄疸」という病気を発症し、脳の損傷を起こすため脳性麻痺を起こすことがある病気です。感染症、痙攣などの病気も早期に治療を行えば脳性麻痺を発症することは少ないですが、進行すると、脳の損傷を起こして脳性麻痺を起こすことがあります。

脳性麻痺患者の寿命は短い?

脳性麻痺患者さんの多くは、他の方の平均寿命と大きな違いはみられません。ただし、生まれたときから脳性麻痺の症状が重く、24時間ずっと介助が必要な子どもは、平均寿命がかなり短いのが一般的です。また、一部の脳性麻痺患者さんは、平均寿命より短いことがありますが、これは脳性麻痺本来の症状が要因ではなく、合併している内臓の病気や重い知的障害などの影響の方が大きいと考えられています。

脳性麻痺の症状は、理学療法や作業療法などのリハビリや薬物による治療などを続けることで、患者さんが年を重ねても自立した生活を過ごすことが可能です。また、補助具などを活用することで患者さんの動作の負担を軽減することができます。

脳性麻痺は一生付き合いとなる病気であるため、医師、理学療法士、言語療法士など専門家と連携を取り、成長とともに変化するライフスタイルに合わせた治療やリハビリを行いましょう。



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脳性麻痺の原因などについてご紹介しました。子供の動作などに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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