妊娠初期の尿の悩み 色や臭いに差?頻尿や尿漏れに?
- 作成:2016/05/18
妊娠初期に、頻尿や残尿感を訴える方は少なくありませんが、子宮が大きくなることに伴うもので、多くの場合は問題ありません。ただ、膀胱炎などの病気が隠れている場合もあります。見分け方や、頻尿や尿漏れの問題も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
妊娠中の尿の色やにおい
尿を作り出している腎臓では、血液から老廃物などをろ過して尿として体外へ排出しています。腎臓で産出された尿は、尿管を通り、そして膀胱へ貯まります。正常な尿の色は黄色と無色の間のような色をしているといわれています。ところが、妊娠初期では、尿の色が濃くなる方が多くいます。妊娠中の尿の色が濃くなる一番の原因は「水分不足」です。尿の色は水分に大きく左右されます。水分が多いほど、色が薄くあるいは無色に近い色になり、水分が少ない場合はアンモニア濃度が上がるため濃い色になります。妊娠初期は、つわり、下痢、多汗などによって水分が不足し、尿の色が濃くなる傾向があると考えられています。
また「尿の臭いがいつもと違う」という方もおられますが、基本的に心配はありません。尿の臭いは摂取した食品に大きく左右され、また水分が減り、色が濃くなることでアンモニアの臭いを多少きつく感じる場合もあるためです。
「尿の色が濃い」と感じたら、意識的に水分を摂取することをこころがけてください。しっかり水分補給をすれば、自然に尿の色も薄くなっていきます。ただし、尿に血が混入している、白濁している、泡立ちが多い、このような場合は病気の可能性もありますので、かかりつけの産婦人科などを受診してください。
妊娠中の頻尿と残尿感
妊娠初期の尿変化の中で、頻尿は多くの方で体験しています。頻尿とは、尿が近いあるいは尿の回数が多いといった症状をさしています。また、残尿感とは、尿が出きっていないあるいは残っている感じがする症状をさしています。どちらの症状もも、妊娠中には生理的変化としてあらわれることがありますが、病気が原因で症状が起こっている場合もあるので注意が必要です。
一般的に、起床から就寝までの排尿回数が「8回以上」の場合に頻尿といわれています。また残尿感に関しては、膀胱の働きが正常な限り、実際に膀胱に尿が残っているというようなことはありませんので、膀胱炎がおこっているのか、あるいは胎児や子宮によって膀胱が圧迫されていることによる症状である可能性があります。
妊娠初期の頻尿と残尿感の大きな原因として、「大きくなってきている子宮が膀胱を圧迫しているため」「子宮周辺筋肉の活動が抑制されているため」の2点があげられています。まず、妊娠中は子宮が徐々に大きくなってゆきます。子宮が大きくなると、尿管を圧迫することで尿が流れやすい状態になり、一時的に尿管が太くなったり腎盂が拡がったりすることがあります。また、子宮や胎児の圧迫を受けた膀胱は尿を貯めるためのスペースが減少してゆきます。
他にも、頻尿や残尿感の原因として、女性ホルモンの1つである「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の利尿促進作用も考えられます。プロゲステロンは、基礎体温を上げる働き、体内水分を保持する働き、血管を拡張させて骨盤内に血液を貯める(血行が悪くなる)働きをもち、お腹のはりや便秘を起こさせるといった作用をもっていますが、同時に受精卵を着床させ妊娠を継続させるホルモンです。プロゲステロンが多く分泌されていると、子宮周辺筋肉の活動を抑制させたり、膀胱の平滑筋を緩めて利尿作用を促したり、また精神的に不安定に感じたりイライラしたりということがあるため、何度もトイレに行くという状態になります。
一般的に、女性の頻尿と残尿感の原因は多種多様といわれており、原因不明の場合も少なくありません。ただし、排尿後に痛みがある、血が混入している、泡が立つ、白濁、などは炎症などの疾患に関係している場合がありますので、医療機関を受診しましょう。
尿漏れが起きやすくなる?
妊娠中の尿漏れも、頻尿や残尿感とおなじように、子宮に圧迫された膀胱と子宮周辺の筋肉の活動の抑制が原因といわれています。尿漏れ対策としては、もしもの漏れに備えて、生理用のナプキンや専用のパッドやライナーを使うようにしましょう。対策をすることで、かなり不安感が解消されるケースが多いです。
また、「骨盤底筋群」という部位の筋力トレーニングが効果的といわれています。腟や肛門の筋肉を鍛えることで尿道を締め、自分の意志で尿漏れを解消する方法です。トレーニングは、仰向けになった状態、椅子に座ったままの状態、あるいは通勤電車内など立ったままの状態の時に、意識的にきゅっと締めてぱっと緩るだけです。不安な方は、是非試してみてはいかがでしょうか。
妊娠は膀胱炎の引き金になる?
膀胱炎は、女性がなりやすい病気ですが、妊娠中においても発症しやすくなっています。膀胱炎の直接の原因は、膀胱の中に細菌が入ってしまい炎症を起こすためです。細菌は、腟や肛門から尿道口へ付着し、そして膀胱へ侵入して感染します。
通常、膀胱炎は、疲労やストレスなどで体力や免疫が落ちているときに発症しやすくなっており、また排尿を我慢することで、膀胱の中の細菌の量がますます増えることがわかっています。
妊娠中は、ホルモンバランスや自律神経の乱れにより免疫機能が低下し、細菌への抵抗力も弱まってしまうため、膀胱炎に感染しやすいといわれています。さらに、子宮が大きくなることで、膀胱が圧迫されているため、排尿を我慢することで、細菌が繁殖しやすい環境となってしまいます。
膀胱炎は、何度もトイレに行きたくなる、排尿後のツンとする痛み、残尿感、尿の白濁そして血の混入が特徴的です。頻尿や残尿感がある方は、ひどくなる前に産婦人科を受診してみることも大切です。妊娠中に膀胱炎になった場合には、通常の治療のように抗生物質によって治療をします。抗生物質の種類は、ペニシリン系かセフェム系が選択されます。なお、膀胱炎そのものや、治療に使う前述の抗生物質が直接胎児へ影響を与えることは報告されていません。
妊娠初期の尿に関する疑問についてご紹介しました。妊娠中の尿の問題に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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