脳梗塞の前兆(初期症状)とチェック項目 頭痛?発熱?眠気?いびき?周りが気づける「FAST」も解説

  • 作成:2016/03/17

脳梗塞というと、「急に倒れる」ような急な変化を想像するかもしれませんが、実際は「TIA」という一過性の発作が起きることが多くなっていて、近年では「TIA」への対応が、その後の生活への影響などを防ぐために重要ということがわかってきています。脳梗塞の初期症状や発熱と眠気との関係、セルフチェック項目などを、医師監修の記事でわかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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脳梗塞に前兆(予兆)、初期症状はある?
脳梗塞前に頭痛やめまいが起きる?いびき、しびれ、眠気、便秘、発熱は?
便秘や発熱は、脳梗塞の「結果」でなく、原因の場合も
脳梗塞のセルフチェック項目
周りの人が気付くこともできるサイン 「FAST」って何?

脳梗塞に前兆(予兆)、初期症状はある?

脳梗塞の警告発作といわれるものに「一過性脳虚血発作」(いっかせいのうきょけつほっさ)があります。一過性脳虚血発作は、「TIA」(transient[一過性の]ischemic[血流が乏しくなる]attack[発作]の英語の略称)とも呼ばれています。TIAは、脳の一部の血液の流れが一時的に悪くなることで、手足の脱力やしびれなどの症状(軽度の脳梗塞でも同様の症状を示しますが、区別することはできません)が現れ、24時間以内(多くは30分以内)に自然に消えてしまう発作で、本格的な脳梗塞発作の前兆(予兆)と位置づけられています。

TIAを起こすと、3カ月以内に15から20%の方が脳梗塞を発症し、そのうちの半数は、48時間以内に脳梗塞になることがわかっています。現在、脳卒中を専門とする医師の間では、TIAは早期受診、早期治療が必要な「緊急を要する病気」であるという認識に変わってきています。

TIAの症状や脳梗塞の初期症状として多いものは以下のようなものがあります。

(1)手足の脱力感(半身マヒ):箸(はし)を落とす、足がもつれるなど
(2)手足がしびれる(半身感覚障害)
(3)言葉が出てこない、つじつまの合わないことを言う(失語;しつご)
(4)ものが二重に見える(複視;ふくし)
(5)口がもつれる、酔っぱらいのような話し方になる(構音障害;こうおんしょうがい)
(6)めまいがしてふらつく(平衡障害;へいこうしょうがい)

脳梗塞前に頭痛やめまいが起きる?いびき、しびれ、眠気、便秘、発熱は?

頭痛、めまい、いびき、しびれ、眠気、便秘、発熱といった全身にわたる、さまざまな症状は「更年期(こうねんき)症状」ともいわれ、閉経(へいけい)をはさむ10年くらいに女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌低下を主な原因として引き起こされることが知られています。一方、エストロゲンには血管拡張により血圧の上昇を抑え、コレステロールを低下させるなど動脈硬化を抑制する作用があります。したがって、更年期には女性ホルモンの分泌の動向によっては、高血圧や動脈硬化といった脳梗塞の危険性が一気に進行する可能性があります。脳梗塞を起こす前に、エストロゲンの分泌が不安定になっていて、更年期の症状が出現しているということは考えられないことでもありません。更年期症状が強い時は、血圧を始め、生活習慣病に関わる検査項目をもう一度チェックしてみては、いかがでしょうか。

便秘や発熱は、脳梗塞の「結果」でなく、原因の場合も

また、TIA(一過性脳虚血発作)は脳のどこへ行く血管の流れが悪くなるかで、さまざまな症状が出現することになります。脳へ行く血管(動脈)には大きく2つの系統があり、1つは頚(くび)の前側を通り、主として大脳を養っている動脈で、「内頚動脈(ないけいどうみゃく)系」といわれます。もう1つは、首の後ろ側を通って左右の2本が脳の底面で1本になる動脈で、主に脳幹(のうかん)と小脳を栄養する「椎骨脳底動脈(ついこつのうていどうみゃく)系」があります。

TIAは、「内頚動脈系」の方に起こることが多いため、手足の脱力、顔のマヒ、言葉の障害などが脳梗塞の前兆として代表的な症状になります。一方、「頭痛」、「めまい」、「いびき」、「しびれ」、「眠気」といった症状は、椎骨脳底動脈系の血流の低下で起こりやすいことが知られています。「いびき」は、意識レベルが悪くなることにより舌の付け根が落ちこんで起こります。便秘や発熱は一般的によくみられる不定なもので、椎骨脳底動脈系のTIAの症状というよりも、脳梗塞を起こす前に併発していると、それぞれが血圧上昇(便秘)や脱水(発熱)という状態をつくりだし、本格的な梗塞の誘因となったことが考えられます。

脳梗塞のセルフチェック項目

脳梗塞になる危険度が上がる項目をご紹介します。ぜひセルフチェックしてみて下さい。

1.次の生活習慣病のいずれかがある:
「高血圧」、「糖尿病」、「脂質異常症(高コレステロール血症)」;高血圧はとくに強いリスクです。また2つ以上あると危険度は上がります。
2.心房細動がある:
心房細動とは心臓の一部の心房が不規則に拍動(はくどう)するために、脈のリズムがバラバラになっている不整脈の1種です。
3.タバコを吸っている:
特に1日20本以上の喫煙は危険度が高くなります。
4.しばしばアルコールを飲みすぎる(日本酒2合/日以上):
少量の飲酒(日本酒1合以下、ワインならグラス2杯まで)は毎日でも、逆にリスクを下げるといわれています。
5.塩分や脂肪分の多い食べものが好きなうえ、ついつい食べ過ぎる:
6.太りすぎ、または太り気味でお腹回りが気になる:
7.適度な運動の習慣がほとんどない:
8.忙しすぎたり、睡眠不足でストレスを貯めがちになっている:
9.牛乳はほとんど飲まない、野菜や果物もあまり摂らない:
カルシウムやカリウムの摂取はリスクを下げます。
10.しばらく健康診断を受けていない

周りの人が気付くこともできるサイン 「FAST」って何?

脳梗塞は、「突然、意識を失って倒れるような病気」と考えている方が多いかもしれませんが、そんな激しい症状で発症するのは、ごく一部に過ぎません。実際には、体の一部の比較的軽い症状を起こすことの方が多くなっています。患者の方自身や、回りにいる方が脳梗塞を含む脳卒中を疑い、すぐに病院に行くための症状の目安があります。わかりやすく目安を知って覚えてもらうためのキャンペーン活動の標語がFASTです。

「F」はface(顔)の頭文字;顔の表情がゆがみ、口元の下がり方が左右で違うようだと危険サイン。
「A」はarm(腕)の頭文字;腕に力が入らず、両腕を前ならへして片方が下がるようだと危険サイン。
「S」はspeech(しゃべり)の頭文字;会話がいつもと違いちぐはぐ、ろれつが回らないようだと危険サイン。
「T」はtimeの頭文字;3つの危険サインのどれかが出現したら、すぐに救急車を呼び、症状の出た時刻を伝えておきましょう。

以上のように「FAST」は英語の頭文字をとったものです。脳梗塞は処置までの時間が早ければ早いほど、死亡や後遺症のリスクを下げることができます。できるだけ早く、脳梗塞を疑い救急を受診するために、ぜひFASTを覚えておきましょう。


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脳梗塞の前兆(初期症状)などについてご紹介しました。家系に脳梗塞を発症する人が多くて、不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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