夏にも注意!脳梗塞、心筋梗塞を防ぐポイント【医師監修】
- 作成:2021/07/18
脳や心臓の血管の病気は、寒い冬に多いと思われていますが、実は夏にも気をつけたい病気です。
この記事の目安時間は3分です
夏場に注意したい“夏血栓”
脳の血管病をまとめて脳卒中といいますが、脳卒中には2つのタイプがあります。血管が切れて起こる脳出血とクモ膜下出血、これに対して血管が詰まるのが脳梗塞です。夏に多いのは血管が詰まる脳梗塞で、詰まった先に血液が巡らずその先の細胞は死んでしまいます。
なぜ、夏は血管が詰まりやすくなってしまうのでしょう。それは夏の気温上昇にあります。猛暑から体を守るために人は熱を下げようと汗をかきますが、このことにより体の中の水分は減り、脱水状態になります。血管の中の水分の量ももちろん減ってしまい、血管内はドロドロ状態になって、血栓という血のかたまりができやすくなるのです。ただでさえドロドロと流れの悪い血液中に血栓ができ、これが脳の血管で詰まれば脳梗塞に、心臓の血管で詰まれば心筋梗塞になるわけです。
日本の平均気温は上昇し続け、年々猛暑となる傾向が見られます。これにしたがって、夏血栓による脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすリスクも高くなることが予想されます。
若い世代にも増える夏の脳梗塞、心筋梗塞
脳梗塞や心筋梗塞は、長年の生活習慣による血圧の上昇や糖尿病などが蓄積して60歳代以降の発症が多い病気ですが、夏は30〜40歳代という比較的若い世代にも増えるといいます。血圧も安定し、動脈硬化(血管が硬くなって弱ること)もないのに救急搬送されるケースがあるのです。血管内の脱水が起こるのは若い人も中高年や高齢者も同じということです。
脳梗塞や心筋梗塞を防ぐには、日頃からの健康管理はもちろんですが、夏の場合はこまめに水分補給することが最も重要です。
高齢になればなるほど、喉の渇きを感じにくくなりますが、昨今、コロナ禍においては若い人でも喉の渇きを感じにくくなっています。その大きな原因は、マスク。マスクをしていると口の周りに湿気がこもり、喉が渇く感覚を鈍らせるのです。また、マスクをしたままランニングをしている人も見かけますが、これは脳梗塞や心筋梗塞ばかりでなく、熱中症の危険性もはらんでいます。若いから、体力があるからとの過信は、脳梗塞や心筋梗塞の引き金になってしまいます。
夏の水分補給には、水やミネラルを多く含む麦茶やスポーツドリンクがおすすめです。ただし、スポーツドリンクには糖分も入っていますから、飲み過ぎには注意したいものです。逆に水分補給に適していないのは、アルコールやカフェイン入りのコーヒー、緑茶など。これらは利尿作用があるので、すぐに排泄されてしまいます。
脳梗塞、心筋梗塞予防の注意ポイント
脳梗塞や心筋梗塞は、朝方と昼間の活動時間帯に多いとされています。朝方の場合は、夜寝ている間に血流が滞ることと、睡眠中で水分補給ができないための脱水が原因と考えられます。また、昼間の時間帯は活動することで血圧が上がること、夏には発汗で脱水状態になることが原因と考えられます。夜寝る前にコップ1杯の水を飲むこと、運動時にはたとえ喉の乾きがなくても水分補給をすることが大切です。
また、前日と比べて気温が極端に高かったり、低かったりと幅が大きくなると、通常よりも1.2倍、脳梗塞の発症リスクが上がるという研究結果もあります。毎年の猛暑もそうですが、季節の変わり目での 寒暖差には十分気をつけたいものですね。
脳梗塞、心筋梗塞は予防できる病気です。以下のポイントをふまえ、危険を回避しましょう。
1)血圧をチェックする(別表:基準となる血圧値)
2)水分補給をする
3)塩分を摂りすぎない(1日の塩分摂取量の目安:男性7.5g未満、女性6.5g未満、高血圧の人6g未満)
4)脂を摂りすぎない(余った脂はコレステロールとなり血管に蓄積される)
5)適度な運動をする(1日30分程度のウォーキングで OK)
6)ストレスをためない(血圧の上昇を招くので気分転換を)
7)タバコは厳禁、禁煙を(タバコに含まれる有害物質が血流を妨げ、血管を老化させる)
参考文献
「脳塞栓と脳血栓の発症に関する生気象学的検討」日本生気象学会雑57(4):127-133,2021
「全国労災病院46,000例からみた脳卒中発症の季節性(2002-2008年)」脳卒中 33:226–235,2011
参考サイト
国立循環器病センター
恩賜財団済生
さまざまな気象条件は、脳卒中イベントのリスクに即時および遅延の両方の影響を示します:HEWS-脳卒中研究
脳卒中の起こりやすい季節や時間帯はありますか
日本高血圧学会
気象庁
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