脳梗塞の予防方法 食事、薬、運動に効果?後遺症も予防できる?前兆が起きた後の薬の予防効果も解説

  • 作成:2016/03/22

命に関わり、重大な後遺症が残る脳梗塞ですので、可能な限り予防したいと考える方が多いと思います。薬の使い方や食事や運動を含めた生活の注意点を、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は6分です


脳梗塞は食事で予防できる?
脳梗塞は薬で再発予防できる?
前兆が起きたら脳梗塞は薬で予防可?
薬や食事以外で、予防に向けて気をつける点
脳梗塞の合併症は防げる?
脳梗塞の後遺症は防げる?

脳梗塞は食事で予防できる?

食事だけで脳梗塞を予防できるというわけではありませんが、高血圧や動脈硬化まどの危険因子(リスクを高める要素)の予防や、悪化防止のための生活習慣を改善させる食事が大切になります。一般的には、バランスのとれた食事を心がけ、お酒を飲みすぎず、血圧を上昇させる塩分は控えることです。脳梗塞の予防に良いとされる「成分」、「働き」、「成分を含む食品」の代表例は、以下の通りです。

1.抗酸化成分; ビタミンE、ビタミンC、カロテン、イソフラボン、ポリフェノールなど
働き; 動脈硬化はコレステロールの酸化によって促進されますが、酸化を防止します。
食品; 野菜、果物、緑茶、ワイン、ごま

2.ω(オメガ)3不飽和脂肪酸; EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)
働き; 血栓防止やコレステロールの低下に有効です。
食品; イワシ、サンマ、サバなどの青魚類

3.食物繊維(せんい);
働き; ナトリウムやコレステロールの吸収を抑えたり、排出させたりします。
食品; 野菜、海藻(かいそう)、豆類

4.ミネラル; カリウム、マグネシウム、カルシウムなど
働き; 余分なナトリウムを排出させる作用があります。
食品; ナッツ類

「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(日本動脈硬化学会:2012年版)」では、「The Japan Diet」として、伝統的日本食が定義されました。エネルギー量(カロリー)および動物性脂肪の摂取を抑え、かわりに海産物(魚介類や貝類)の摂取を多くし、植物性食品(雑穀類や大麦と精白度の低い米類、芋類、果物類、野菜類、海藻類)を中心とする昔ながらの日本の食事が推奨されています。ただし、日本食の欠点である食塩の摂取量が多くなることに注意する事としています。

脳梗塞は薬で再発予防できる?

一方、脳梗塞を起こしたことがある方のお薬による再発の予防に関しては、抗血小板薬や抗凝固薬などによって血栓ができにくくする治療に加えて、患者さんが持つ、脳梗塞のリスクを高める病気の治療が大切になります。

1.高血圧;
降圧剤(こうあつざい;血圧を下げる薬)によって、「140/90 mmHg以下」の血圧が目標レベルとなっています。いくつかのデータが再発の率を約30%減らすことができることを示しています。脳梗塞は再発しやすい病気で、10年間で約半数の患者さんが再発したというデータもあります。

2.糖尿病;
「インスリン抵抗性(インスリンが正常に働かない状態)」を改善する糖尿病薬による血糖のコントロールが、脳梗塞の再発予防に有効だとされています。  

3.脂質異常症;
「スタチン」という高脂血症の治療薬や、スタチンにω3不飽和脂肪酸である「EPA」をともに用いた治療に、脳梗塞の再発予防効果がみとめられています。

薬による病気(危険因子)のコントロールをしっかりすることは脳梗塞の再発予防に非常に有効です。しかし、脳梗塞の再発には生活習慣など、その他にも多くの要素がからみ合った結果として起きているために、薬だけで完全に予防できるというわけではありません。

前兆が起きたら脳梗塞は薬で予防可?

なお、脳梗塞の前兆発作である「TIA(一過性脳虚血発作)」は、発症後90日以内に脳梗塞をはじめとする脳卒中を起こす危険が15から20%あります。脳梗塞の発症を予防するために、直ちにアスピリンなどの抗血小板薬(血液が固まるのを防ぐ薬の1種)が投与されます。

TIAの発症から平均1日後に治療を受けた場合、90日以内の大きな脳梗塞の発症率は、およそ2%となりますが、平均20日後に治療を受けた場合では、約10%です。薬による治療が早期に開始されれば、ほぼ予防は可能といえますが、開始が遅れると必ずしも脳梗塞発症の予防ができるというわけではありません。

薬や食事以外で、予防に向けて気をつける点

脳梗塞の発症や再発の予防において、薬や食事以外で注意すべき点(生活習慣の改善)を以下に挙げます。

1.禁煙;
タバコは脳卒中の危険因子であることが、欧米および日本で報告されています。人種、性別、年齢による違いはないようです。脳卒中の病型では、とくに「脳梗塞」以外にも、クモ膜下出血の危険が高くなります。禁煙後5年間で危険度が消えるというデータもあります。

2.適量のアルコール;
大量の飲酒は絶対に避けるべき脳卒中の危険因子とされます。ただし、脳の出血については、お酒の量と発症率の間に直線的な正の関係、つまり飲む量が少ないほど危険は少ないということが確認されています。

一方、「脳梗塞」ではグラフがV字型になる現象がみられます。どういうことかというと、少量から中等量(1週間のエタノール摂取量が1グラムから149グラム 1日1合以下の日本酒を1日休んで6日飲んだ場合に相当します)の飲酒者は、飲まない人より脳梗塞の発症率が低くなっています。ただ、中等量を超えて大量の飲酒になると、量が増えるほど、また危険度が高くなります。程度をわきまえて飲酒している人のリスクが一番低いという結果になります。

3.適切な体重維持;
標準体重を維持するように、摂取エネルギー(食事)と消費エネルギー(日常身体活動+運動)のバランスを考えて、肥満を防止します。

肥満度を表す体格の指数;BMI(body mass index、標準22)は、キログラム換算の体重を、メートル換算の身長の2乗の値で割った数値で計算できます。「25以上」が肥満とされます(例:身長160センチで60キロの場合→60÷1.6÷1.6=23.4)。なお、キログラム換算の標準体重は、メートル換算の身長の2乗に22を掛けた数値となります。(例:身長160センチの人の標準体重→1.6×1.6×22=56.32キログラム)

4.適度な運動の習慣;
動脈硬化の予防効果があり、毎日30分(連続でなくてもよく合計で)以上の中等度以上の有酸素運動(普段より早めのウォーキングなど)が推奨されています。

脳梗塞の合併症は防げる?

脳梗塞急性期の合併症を防げるかどうかは、以下の通りです。

(1) 肺炎;深呼吸など呼吸のリハビリを積極的に行うことや栄養状態を保つことが予防に大切とされています。しかし、重症や高齢の患者さんでは防ぐことが難しいことも多いようです。

(2)誤嚥性肺炎;飲み込んだものが、消化器でなく呼吸器に入ることで起きます。嚥下障害(飲み込む機能の障害)が疑われる場合に、ベッドサイドで水飲みテストなどが行なわれ、誤嚥の危険度が高いときには、栄養の摂り方の工夫により防ぎます。

(3)消化管出血;胃潰瘍などに対して、抗潰瘍薬(こうかいようやく)の「H2受容体拮抗薬(じゅようたいきっこうやく)」という薬が予防的に投与されます。

(4)深部静脈血栓症および褥瘡(じょくそう、いわゆる「床ずれ」)など;長期にベッドで寝たきりになることで起こる合併症は、早期にベッドを離れ、歩行を開始することで十分予防が可能になります。

脳梗塞の後遺症は防げる?

後遺症とは、脳梗塞により死んでしまった脳の細胞が担当している機能が失われたことによる症状です。したがって、後遺症を防いだり減らしたりするには、死んでしまう細胞の数をいかに少なくするかということになります。

「TIA」など脳梗塞の前兆となる症状があれば、後遺症を防ぐためにも、「脳梗塞を発症するかもしれない」と疑い、早急に医療機関を受診して、早く治療を開始することが大事になります。特に、「t-PA」と呼ばれ血栓を溶かす治療に成功し、血流が確保できれば、死ぬ細胞は最小限となります。結果として、後遺症は十分に防ぐことができます。

脳梗塞によって起きた後遺症を、後から防ぐことは当然できません。しかし、早期からのリハビリによって、残っている脳の細胞に失われた機能を代償させて障害を改善させることは十分可能だと考えられています。疑問があれば、医師らに訪ねてみましょう。


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脳梗塞や、合併症、後遺症の予防可能性などについご紹介しました。家族や知人が脳梗塞になるなどして、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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