脂肪肝の原因、種類、放置リスク 酒以外でも?完治する?NASHとは?
- 作成:2016/06/06
脂肪肝の原因として知られているのは、アルコールですが、アルコールが原因でない脂肪肝もあります。どのような種類があるのかや、放置するとどのようなリスクがあるのかを含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
脂肪肝とはどんな状態?中性脂肪やコレステロールが関係?
脂肪肝の原因はアルコール?アルコール以外もある?
NASHとはどんなもの?原因は?
脂肪肝は治療しないまま放置するリスクは?
脂肪肝は完治する?
脂肪肝とはどんな状態?中性脂肪やコレステロールが関係?
「脂肪肝」とは、肝臓に中性脂肪という脂肪の一種が蓄積された状態を指します。私達の身体では、エネルギーの摂取量が消費量を上回って「エネルギー過剰」の状態になった場合、余ったエネルギーが「グリコーゲン」という物質や中性脂肪に変えられ、身体の中に蓄積されます。身体で作られた中性脂肪は、内臓脂肪や皮下脂肪となるほか、肝臓にも蓄積されます。肝臓の細胞の30%以上に中性脂肪が蓄積された状態を脂肪肝と呼ぶのです。
脂肪肝の多くは、高血圧症、糖尿病、脂質異常症(「高中性脂肪血症」「高LDLコレステロール血症」「低HDLコレステロール血症」)を合併しやすく、動脈硬化の重要な原因の一つとして注目されています。
脂肪肝の原因はアルコール?アルコール以外もある?
脂肪肝の原因の多くは、食べ過ぎやアルコールの飲み過ぎ、肥満などが原因ですが、その他にも糖尿病や甲状腺の病気が原因となったり、薬の副作用(抗生物質の一種、ステロイド)、栄養障害(栄養不足)、妊娠に伴う脂肪肝など幾つかの原因があります。
「脂肪肝」というと太っている人に多いというイメージをお持ちの方がいらっしゃいますが、アルコールの飲み過ぎや身体の病気、薬、栄養障害などが原因で起こる脂肪肝の場合は、患者がやせていることも多く、検査を受けて初めて脂肪肝が判明する場合もあるため注意が必要です。
NASHとはどんなもの?原因は?
脂肪肝にはアルコール性(アルコールが原因)のものと非アルコール性(アルコールが原因でないもの)のものがあり、近年まで非アルコール性の脂肪肝については、通常、肝臓の炎症や肝硬変などを起こすことはないと考えられてきました。ところが、非アルコール性脂肪肝の中に肝臓の細胞が炎症を起こし、進行すると肝硬変や肝臓癌を起こすケースがあるということがわかり、非アルコール性脂肪性肝炎(non alcoholic steatohepatosis :NASH)と呼ばれ注目されています。
通常の脂肪肝では肝臓の細胞に脂肪がたまるだけで炎症などは起こらず、肝細胞から脂肪がなくなると肝臓はもとの健康な状態に戻ります。ただ、非アルコール性脂肪性肝炎では、肝臓の細胞に脂肪がたまるだけではなく、肝臓の細胞に炎症が起こります。この状態が継続すると肝硬変や肝臓癌になる可能性もあるため注目されているのです。
NASHを起こす原因はまだはっきりとは分かっていませんが、現時点でNASHは脂肪の蓄積が原因の肝臓の病気であり、メタボリックシンドロームと深い関係があると考えられています。
「メタボリックシンドローム」とは、内臓脂肪が蓄積した結果として高血圧、血糖値の上昇、脂質異常症などのうち複数の症状が表れた状態を指します。NASHは、メタボリックシンドロームにみられる肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などを高い確率で合併していることが知られており、メタボリックシンドロームが肝臓に影響を及ぼした状態と考えられています。
メタボリックシンドロームでは内臓脂肪が蓄積しますが、肝臓にも同様に脂肪が蓄積します。また蓄積した内臓脂肪は炎症に関係する複数のホルモン様の物質を分泌することが知られており、このため、脂肪が増えると、身体の組織に炎症が引き起こされることがあります。肝臓の組織に脂肪がたまると炎症を起こすホルモンのような物質が分泌されるために肝臓に炎症が起こり、この状態を放置すると肝硬変や肝臓癌にまで進行すると考えられています。
日本でもすでに100万人近くがNASHになっていると考えられており、日本人の健康に重大な影響を及ぼす肝臓病として注目されています。
脂肪肝は治療しないまま放置するリスクは?
脂肪肝は大きくアルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝に分けられます。アルコール性脂肪肝は、習慣的なアルコールの過剰摂取によって発症し、禁酒によってすみやかに改善することが特徴です。禁酒を行わずに放置すると。「アルコール性肝線維症」や「アルコール性肝炎」「アルコール性肝硬変」「肝臓癌」などの病気に発展してしまう可能性があり、これらの病気になると禁酒しても完全に元の健康な状態の肝臓に戻ることは難しくなります。
非アルコール性の脂肪肝の場合、単純な脂肪肝と、次第に肝炎や肝硬変に進行する非アルコール性脂肪性肝炎に分けられます。単純な脂肪肝を放置すると、肝機能障害が進むほか、肝臓以外にも脂肪が蓄積することが多く、肥満や脂質異常症、糖尿病などを合併しやすくなります。
非アルコール性脂肪性肝炎は、放置すると、肝臓に炎症が起きた状態が続くため、肝機能障害が進行するほか、慢性的な炎症を繰り返すうちに次第に肝硬変や肝臓癌になる可能性もあります。そのため、初期から積極的な治療を行うべきと考えられています。
脂肪肝は完治する?
脂肪肝の治療は原因ごとに異なります。そのため脂肪肝を治すには、まず脂肪肝になった原因を考えることが第一歩となります。脂肪肝の原因と、原因別の対策を下記に記載します。
【脂肪肝の主な原因】
(1)アルコールの過剰な摂取
(2)過食
(3)糖尿病
(4)お薬の副作用
(5)栄養障害
(1)アルコールの過剰な摂取
お酒に含まれるアルコールは肝臓で分解されています。お酒を日常的に飲みすぎると、肝臓ではアルコールの分解が優先されるため、脂肪の代謝が後回しとなり、肝臓に脂肪が蓄積してしまいます。お酒の飲みすぎによる脂肪肝は基本的には禁酒することで完治します。
(2)過食
食べ過ぎなどのカロリーの過剰な摂取により脂肪肝になるケースです。摂取カロリーを控え、適度な運動を行って余分なカロリーを消費することで完治します。ただし、食事の改善の際、極端な食事制限を行うと、後で述べる栄養障害による脂肪肝を起こす可能性があるため、極端なカロリー制限はかえって有害となる場合があります。バランスのとれた食事を適量とりながらしっかりと運動することが非常に大切です。
(3)糖尿病
糖尿病によって脂肪肝になる場合があります。この場合は糖尿病の治療を優先する必要があります。糖尿病の治療の基本は食事療法、運動療法です。きちんと食事・運動習慣を改善していく中で脂肪肝も改善される可能性があります。
(4)お薬の副作用
ステロイド剤、抗生物質などの副作用によって脂肪肝になる可能性があります。薬の副作用で脂肪肝になった場合は、薬を飲むことによるメリットとデメリットを評価し、その薬を継続するかどうかを検討します。脂肪肝がごく軽度であり、薬を使用することで病気の症状が改善されている場合は薬の使用を継続しますし、脂肪肝やほかの副作用が重症であるにも関わらず、薬の効果があまりないような場合は使用を中止することになります。薬の副作用による脂肪肝は通常、原因となっている薬の使用を中止することですみやかに改善されます。
(5)栄養障害
栄養不足により脂肪肝になる場合があります。比較的若い方や食事が偏っている方に多く、やせているにも関わらず脂肪肝がみられるというケースがしばしばあります。健康診断などで初めて指摘される方が多いことも特徴です。栄養障害による脂肪肝の場合は、バランスの良い食事をとるように気をつけることで改善されます。
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脂肪肝の原因や放置リスクについて、ご紹介しました。肝臓の状態や調子に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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