慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリハビリ 運動は危険?呼吸や排痰の方法も解説 リハビリ時に気をつけることは?
- 作成:2016/08/19
慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、リハビリが効果をあげます。リハビリといっても、一般的に思い浮かべるような動作の練習ではなく、簡単に言うと呼吸の練習になります。痰がたまることも多いため、痰の出し方もリハビリにふくまれます。運動の危険性も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
目次
COPDのリハビリ 運動の効果、危険性
COPDでは禁煙治療や吸入などの薬物療法のほか、「呼吸器リハビリテーション」と呼ばれる治療が行われる場合があります。一般的にリハビリテーションというと、麻痺した身体を動かす訓練を想像される方が多いのですが、呼吸器のリハビリテーションは残存した肺の機能を可能な限り有効利用して、日ごろの息切れなどの症状を改善させ、もとの日常生活に戻れるように訓練することを指しています。
COPDのリハビリテーションは、運動が中心的な存在です。薬による治療を行っている方でも、運動療法を行うことで息切れなどの症状が改善されやすくなり、また風邪などを引きにくい強い身体をつくることができるのです。
運動療法は継続して定期的に行う必要があります。内容は、筋力トレーニングや持久力トレーニング、柔軟性を高めるストレッチなどです。最も簡単で効果があるのは散歩で、個人差がありますが20分以上継続すると効果的であると考えられています。散歩ができない方は室内で足踏みをするだけでも効果があります。運動療法は病院の理学療法士によって指導が行われるほか、自宅で自分のペースで行うこともできます。
運動療法はCOPDの治療において大変効果がありますが、転倒やケガなどのリスクもあるため注意して行う必要があります。また、運動療法を一生懸命行うとエネルギーが消費されるため栄養不足になりがちな傾向があり、食事でしっかりと栄養をとる必要があるほか、食事だけで栄養が足りなくなる場合は、栄養補助食品などを利用した栄養療法を併用する場合もあります。
COPDのリハビリ 呼吸法改善の効果、危険性
COPDのリハビリテーションでは、呼吸訓練を行って、呼吸法を改善することもあります。呼吸訓練は、医学的には「呼吸理学療法(こきゅうりがくりょうほう)」という治療として扱われており、理学療法士によって指導される場合が多いようです。
COPDの呼吸法ではリラクゼーション、口すぼめ呼吸、動作時の呼吸、排痰の練習などが行われます。
1.リラクゼーション
病気の患者さんの多くは、痛みや苦しみのため、知らず知らずのうちに全身に力が入った状態になっています。全身に力が入った状態で呼吸訓練を行っても効果が出にくいため、呼吸法を練習する前にまず身体をリラックスさせる必要があるのです。身体から余分な力が抜けてリラックスした状態になるだけで、余分な酸素の消費がなくなり、呼吸状態を楽にする効果があります。
2.口すぼめ呼吸
COPDの患者さんの呼吸法の中心となるのが口すぼめ呼吸です。COPDの場合、口を大きく開けて息を吐くと気道が狭いため息を吐きにくいのですが、口をすぼめて細く息を吐くと、圧がかかって狭くなった気道が開き、息を楽に吐くことができるのです。息を吐き出すことができればその後、新鮮な空気(酸素)を吸うことが出来ます。
方法は鼻から吸って口から吐きます。空気を吐くときにロウソクの火を消すときのように口をすぼめ、細く長く息を吐き出します。ただし強く吹くのではなく、楽にゆっくりと息を吐くようにしましょう。数時間続けたり、吐く時間が長くなりすぎないように気を付け、息切れがした場合は無理をしないようにするのが良いとされています。
3.動作時の呼吸
COPDの方は安静にしている時より、動作時に呼吸苦を感じる方が多いため、動作時にも呼吸に気をつけることで、症状を抑え、楽に動作を行うことが出来るようになります。
多くの方は動作時の呼吸を意識したことがありません。特に重いものを持つときや力を入れる場合などに呼吸を止める方が多いようです。動作を楽に行う呼吸法として、動作時に呼吸を止めてはいけません。動作に合わせて自然な呼吸を行い、とくに力を入れる場合には息を吐くように気を付けましょう。口すぼめ呼吸を思い出しながら、立つ、座る、歩く、階段を上るなどすべての動作を呼吸に合わせて実施するように気を付けます。
また、日常生活の中で息切れがしやすい動作について把握することも大切です。息切れがしやすい動作では、特に呼吸法を意識することで、楽に動作が行えるようになります。また息切れを緩和するのに最も効果があるのは、座っている姿勢のため、家の中の息切れがしやすい場所に椅子を置いておくと、息を整えることができて、生活が楽になります。
4.排痰の練習
COPDの患者さんでは痰が増加している場合があります。痰が多くなると、痰が気道を狭くするため息切れや呼吸苦が悪化したり、痰が気管支を閉塞させて、肺の一部に空気が入らなくなる(「無気肺:むきはい」)可能性があります。また、痰が多いと咳や痰がらみでよく眠れなくなったり、肺炎になるリスクも増加してしまいます。
つまり、痰を上手に吐き出せるようになると、息切れや咳、呼吸苦が改善され、肺炎などの感染リスクが低下する効果があるのです。
排痰練習の具体的な方法
実際に痰を出す方法として以下のような内容があり、理学療法士によって指導を受けられます。
(1)体位排痰
(2)ハフィング、咳
(3)排痰器具を用いた排痰
(4)呼吸介助法(スクィージング)
(1)体位排痰
姿勢を工夫することで、肺の奥にある痰をのど元に集める方法です。痰がとくにたまっている部分を上にして、一定時間横になることで、痰が流れて自然にのど元に集まってきます。痰がどこにたまっているかを把握することが大切です。
(2)ハフィング、咳
体位排痰などでのど元に集まった痰を吐き出す方法です。ハフィングは「ハッ、ハッ」と声を出さずに、勢いよく息を吐く方法を指します。空気の流れによって、痰を上に押し上げることができます。ハフィングで上がってきた痰は、咳によって出します。
(3)排痰器具を用いた排痰
排痰を効率的に行うための専用の器具が存在します。いくつか種類がありますが、器具を口にくわえて息を吐くことによって痰が出やすくなります。
(4)呼吸介助法(スクィージング)
胸郭を強く押すような動作を行うことで。肺の中に空気の流れをつくり、痰をのど元にむけて押し出す方法です。楽に痰を出すことができますが、自分一人では行うことが出来ないため、家族の方などに手伝ってもらう必要があります。
呼吸器リハビリテーションは、日ごろの息切れ、呼吸苦などの症状を改善し、生活しやすくする効果のほか、病気の進行や悪化を抑えて、死亡率を下げる効果もあると考えられます。良い効果を出すためには、医師や理学療法士などの医療スタッフの指示通りにきちんと行う必要があります。ただしすぐに効果が出るとは限らないため、毎日焦らずに少しずつ行うことが大切です。また無理をすると症状が悪化する可能性もあるため、息切れや呼吸苦などの症状が強い場合は体調に合わせて休みながら行いましょう。
リハビリ時に気をつけることは?
COPDのリハビリでは運動や呼吸法などの実践のほか、生活習慣が非常に大切です。禁煙の実行のほか、規則正しい生活やバランスのよい食事をとるように心がけましょう。
また、COPDの急性増悪の予防や早期の対応の仕方など、お医者さんと事前に相談して、しっかりと知識を身に着けることも大切です。急性増悪の予防にはインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が必要なため、かかりつけのお医者さんと相談してスケジュールを確認するようにしましょう。
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慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリハビリについてご紹介しました。咳が続くなどして、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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