慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療 禁煙?薬の効果と副作用は?在宅酸素療法と酸素の危険性も解説

  • 作成:2016/08/16

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺の組織が障害される病気のため、治療をしても治ることはありませんが、禁煙などを通じて症状を軽減することは可能です。治療薬の効果や副作用、食事の注意点、在宅酸素療法の概要を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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目次

COPDは治る?治らない?

COPDは喫煙などの影響によって肺の組織が障害されるために起こる病気です。一度破壊された肺の組織は喫煙をやめても元の正常な肺組織にもどることはないため、基本的にはCOPDは治ることはありません。

しかし、禁煙を行うことで呼吸苦や息切れが改善したり、痰の量が減少するなど症状の明らかな改善がみられることが分かっており、COPDの治療の基本は禁煙となっています。またCOPDが軽いうちに禁煙を含めた治療を行うことで、自覚症状がほとんどない状態まで改善される方もいらっしゃいます。重症のCOPDになってしまってからでは各種の治療を行っても症状が消失することはなく、酸素のボンベを携帯して24時間酸素を吸入し続ける「在宅酸素療法」という治療を行わなければならない場合もあります。在宅酸素療法は重い酸素ボンベを常に携帯するため日常生活に大きな制限や負担がかかります。このようにCOPDの治療については早期発見、早期治療がその後の状態を大きく左右すると言えるでしょう。

COPDの治療はどのように行う?禁煙?

COPDの治療は「日頃の症状を改善する」「病気の進行や悪化を防ぐ」「肺や全身の合併症を防ぐ、治療する」などの目的で行われます。上記の目的を達するために、以下の治療法があります。

1.禁煙療法
2.薬物療養
3.呼吸器リハビリテーション(リハビリについては、別の記事で解説しています)
4.酸素療法
5.換気補助療法
6.外科療法

一度に上記の治療のすべてを行う訳ではなく、患者さんの状態に合わせて適切な治療が選択されますが、禁煙療法はCOPDの治療の基本であり喫煙している患者さんの全員に行われます。

現在は禁煙をサポートする禁煙補助薬(きんえんほじょやく)と呼ばれるお薬も開発されており、禁煙は「ニコチン依存症」という病名で診断を受けて、保険診療で治療を受けることができます。禁煙を行った上で、まだ呼吸器の症状がある場合に初めて他の治療が行われます。

COPDの治療薬と副作用 吸入薬?ステロイドも使う?

COPDの治療薬の中心は、「気管支拡張薬(きかんしかくちょうやく)」という薬の吸入です。気管支拡張薬は、狭くなった気管支をひろげて呼吸を楽にする働きを持っています。気管支拡張薬を使用することで症状が楽になるだけでなく、病気の進行を抑えたり死亡率を低下させる効果もあると言われています。

気管支拡張薬にはいくつかの種類があり、「抗コリン薬」「β2刺激薬」「テオフィリン製剤」という種類が主に使用されます。特によく使用されるのが抗コリン薬と呼ばれるお薬の吸入で、COPDの症状をよく抑えることができます。抗コリン薬の副作用で最も多いものは口の渇きであり、他の全身性の副作用はほとんどありません。ただし、緑内障や前立腺肥大症の症状が悪化することがあるため、これらの病気を合併している方は医師によく相談する必要があります。また気管支拡張薬は複数の種類を併用する場合もあります。

気管支拡張薬を使用しても症状が十分に改善しない場合は、「ステロイド」と呼ばれるお薬の吸入を併用します。ステロイドは、炎症を抑える働きが強く、気管支で起こっている炎症を緩和することで症状を改善させます。何らかの理由で吸入ができない場合には、ステロイドの飲み薬が処方される場合もあります。ステロイドは、効果の強い薬であり、多量のステロイドを長期にわたって内服すると様々な副作用(免疫力の低下、糖尿病、骨粗しょう症、肥満など)が出ることが知られています。しかし、COPDで使用するステロイドの吸入の場合は内服薬と異なり、副作用はほぼありません。また、内服の場合もCOPDでは、全身に影響を与えない程度の比較的少量で、短期間に限って使用することが基本であり、副作用が出る可能性は低いと考えられます。

COPDの治療は薬以外もある?どんなもの?食事や栄養の改善も治療の1つ?

COPDの治療では禁煙、薬以外に、生活習慣や栄養状態の改善が重要です。規則正しい生活を送り、定期的に適度な運動を行うことはCOPDの症状が悪化することを予防する上で非常に重要です。

またCOPDでは体重が減少することが知られていますが、体重減少が多い患者さんほど、呼吸不全に進行する可能性や、死亡のリスクが高いことが知られています。そのため栄養の補給はCOPDを治療する上で大変重要と考えられており、日常の食事だけで十分に栄養がとれない患者さんの場合、高カロリーの栄養補助食が処方される場合があります。

COPD患者の在宅酸素療法とは?酸素が危険な場合も?

COPDでは、通常の空気を呼吸していても十分に酸素を身体に取り込むことができない場合、酸素吸入を行う場合があります。「在宅酸素療法」と呼ばれ、自宅に酸素ボンベを置いて、酸素を吸入します。

在宅酸素療法は、一定の基準を満たした患者さんに導入される治療であり、全ての患者さんが行う訳ではありませんが、低酸素血症があると、たとえ息苦しさが我慢できる程度であったとしても、心臓に大きな負担がかかり、心不全などを起こす原因となります。在宅酸素療法を行って血液中の酸素濃度を上昇させることで、息切れなどの症状が和らぐだけでなく、心臓の負担が減ってCOPDの患者さんの生命予後が改善すると考えられています。

ただし、最重症のCOPDの患者さんではむやみに酸素吸入を行うと危険な場合があります。

よく知られているように、人間は、酸素を吸入し、二酸化炭素を吐き出していますが、COPD(とくに肺気腫)が最重症化してしまうと、息を吐く力が弱り、二酸化炭素をはきだす能力が著しく低下しているために、体に二酸化炭素が蓄積された状態になります。

二酸化炭素が蓄積されると、人間の身体は、二酸化炭素を減らすために、無意識に呼吸回数を増加させます。こうした最重症のCOPDの方が大量の酸素を吸うとどうなるでしょうか。

酸素の量が増えるため、最初は息苦しさはやわらぎます。ところが、息苦しさが和らぐと、無意識に増やしていた呼吸の回数が減ってしまうのです。酸素は吸入によって十分に補給できているのですが、呼吸の回数が減少するために二酸化炭素を体外に排出できなくなり、血液中にどんどんと二酸化炭素が溜まっていきます。血液中の二酸化炭素の量があまりに多くなると意識障害を起こすことが知られており、更に呼吸が弱くなるという悪循環に陥ります。

このように、「もとも体内の二酸化炭素が多い方が、に高濃度の酸素を吸入すると呼吸が弱くなり、意識障害を起こす」ことを医学用語で「CO2ナルコーシス」と呼んでいます。

CO2ナルコーシスはあくまで「最重症のCOPDの患者さん」に「まれに起こる可能性がある」病気であり、酸素吸入がすべて危険という訳ではありませんが、念のため在宅酸素療法を開始するときにはCO2ナルコーシスが起こらないかよく注意することが必要です。



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慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療についてご紹介しました。咳が続くなどして、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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