「ワクチン接種で自閉症になる」?接種が不安なときにしてほしいこと

  • 作成:2021/08/30

インターネットやSNSで子どものワクチンについて調べていると、ワクチン接種で自閉症になる、という情報がよく出てきます。今回はその真偽について、動向を解説します。

この記事の目安時間は3分です

「ワクチン接種で自閉症になる」?接種が不安なときにしてほしいこと

Q.ワクチンを接種すると自閉症になる、というのは本当ですか?

A.ワクチン接種と自閉症には関連はありません。

「ワクチン接種で自閉症になる」という話は、1998年にある論文で発表された仮説です。しかし、この論文は虚偽の内容が含まれているとして既に10年以上前に撤回されており、その後の多くの調査でも、ワクチン接種と自閉症には何の関連もないことが確認されています。

1998年に発表された論文には、虚偽の内容が含まれていた

ワクチン接種で自閉症になる、という話が最初に大きな話題となったのは、1998年にある論文が発表されたことがきっかけです。その論文とは、イギリスの医師Wakefield AJ氏が発表したもので、MMRワクチン(麻疹・おたふくかぜ・風疹の混合)を接種すると自閉症の小児が増える可能性がある、という内容のものでした1)
しかし、この論文の内容には怪しい点が多くあったため、発表後にも様々な点から検証が行われ、その結果、2010年に「虚偽の内容がある」と結論づけられ、この論文は完全に撤回されるに至りました。さらに、この論文の著者であったWakefield AJ氏は、虚偽の論文を書いたとして、イギリスの医事委員会から医師免許剥奪の処分も受けています。

つまり、「ワクチン接種で自閉症になる」という情報の出所は、既に10年以上も前に虚偽だと評価された撤回論文だ、ということです。そのような情報に、今さら惑わされる必要は全くありません。

その後の多くの調査でも、ワクチン接種と自閉症に関連はないことが確認されている

しかし、一度「ワクチン接種で自閉症になるかもしれない」という話が広まると、元となった論文が撤回されても、それを書いた医師が免許剥奪の処分を受けても、その不安は根強く残ってしまいました。そのため、「ワクチン接種と自閉症には本当に関連がないのか?」ということについて、世界中で改めて研究が行われることになりました。
その結果、多くの研究でワクチン接種と子どもの自閉症には何の関連もないこと、ワクチン接種で自閉症の小児が増えることはない、ということが明らかになりました。

※ワクチン接種と子どもの自閉症を検証した研究の一例

  • Vaccine. 2014 Jun 17;32(29):3623-9.
    120万人以上の子どもを調査し、ワクチンそのものもワクチンの添加物も、自閉症のリスクを増加させることはない、ということが確認された研究。
  • J Pediatr. 2013 Aug;163(2):561-7.
    3ヶ月未満、7ヶ月未満、2歳未満の子どもに対するワクチン接種は、自閉症と全く関連しなかった、という研究。

つまり、「子どもにワクチンを接種させると自閉症になるのでは・・・?」と考える必要は全くない、ということです。

ワクチンに関する偽情報に注意

麻疹や風疹、インフルエンザだけでなく、現在世界中で問題となっている新型コロナウイルス感染症でも、ワクチンの情報については何の根拠もなく不安を煽る誤った情報が非常にたくさん出回っています。特に、子どもの成長や妊娠などに関連した情報は、人の不安や怒りといった感情に訴えかけやすいため、真偽を確認する前に感情的に拡散されてしまうことが多く、誤った情報の蔓延に拍車をかけています。
ワクチンの接種は強制されるものではなく、基本的に個人の判断に委ねられるものではありますが、真偽が確かでない情報をもとにした判断は、極めてリスクの高いものになってしまいます。インターネットやSNSで“感情的に訴えかけるような情報”には十分に注意し、冷静に公的機関や専門機関の情報を確認するようにしてください。また、どうしてもワクチン接種に不安を感じる場合には、日頃からお世話になっている複数の医師や薬剤師に相談することを、強くお勧めします。

1) Lancet. 1998 Feb 28;351(9103):637-41. PMID:9500320 ※内容に虚偽があり、既に撤回された論文

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