薬の「室温で保管」の室温は何度?気をつけたい薬の保管場所
- 作成:2021/09/23
薬の説明書きを読んでいると「室温で保管してください」と書いてあることがよくあります。これは、部屋の温度であればOKということなのでしょうか。
この記事の目安時間は3分です
Q.「室温保管」って、何度で保管すれば良いの?
A. 室温とは1~30℃のことです。
「室温」と言われると、“部屋の温度”という印象を抱く方も多いと思います。しかし、近年は猛暑の年も多く、部屋の温度変化は大きくなってきています。自然の状態に任せていると、意外と部屋の温度は「室温」の定義から外れてしまうこともあります。
薬を保管する場合の「室温」の定義
「室温」という言葉は色々な意味で使われますが、薬の保管に関しては、日本薬局方で「1~30℃」と定義されています1)。そのため、薬の説明書きに「室温で保管してください」と書いてあるものは、1℃を下回らず、かつ30℃を上回らない環境で保管する必要があります。この範囲から外れると、薬の安定性などに問題が生じ、本来の有効性や安全性が得られなくなってしまう恐れがあります。
日本でも、30℃を超える日は珍しくない
最近の日本では、夏になると気温が30℃を超える日が続くことも珍しくありません。実際に、2000年以降の20年間では、記録的な冷夏となった2003年を除く全ての年で、8月の東京の平均最高気温は30℃を超えています2)。そのため「室温保管」の薬を部屋に放置していると、知らないうちに30℃を超える環境に置いてしまっている可能性があります。
もちろん、最高気温が30℃を超えたからといって、必ずしも部屋の温度が30℃を超えるわけではありません。しかし、昼間に部屋のエアコンを消し、窓など閉め切った状態で留守にしていたりすると、最高気温が30℃を超えていなくても、部屋の温度は30℃を超えてしまうことは十分に考えられます。特に、最近はヒートアイランド現象等の影響によって、夜も30℃を下回らないことが珍しくありません。このような状況では、比較的長時間にわたって薬が30℃以上の環境に放置されてしまっていることになります。
そのため、薬の保管場所には直射日光の当たらない、風通しの良い涼しい場所を選ぶなど、少し注意が必要です。
「冷蔵庫に入れれば安心」というわけでもない
では、冷蔵庫で保管するのはどうでしょうか。冷蔵庫は常に一定の温度に保たれていますが、薬の保管場所として使う際には、いくつか注意しなければならないことがあります。それは「冷蔵庫で保管してはいけない薬」や、「冷蔵庫で保管すると使いにくくなる薬」がある、という点です。
たとえば、糖尿病治療に使われる「インスリン製剤」の一部は、使っている途中のものを冷蔵庫で保管すると、薬液が漏れたり注射器が故障したりする原因になります3)。あるいは、アレルギー治療に使われる目薬の「トラニラスト」という薬を冷蔵庫で保管すると、成分が結晶になってしまい、使えなくなることがあります4)。こうした薬は、冷蔵庫には入れずに保管する必要があります。
他にも、一般的に塗り薬は冷えると硬くなる性質があります。そのため、塗り薬を冷蔵庫で保管していると、硬くなってチューブから 出しづらくなったり、カップから取り出しにくくなる、のびが悪くなり 塗りにくくなる、といった事態を招くことがあります。こういった薬も冷蔵庫に入れない方が良いでしょう。このような性質は薬によって様々ですので、薬の保管場所に困った場合は、医師・薬剤師に相談することをお勧めします。
また、冷蔵庫の冷気の吹き出し口付近はドア側に比べて冷えやすい傾向があります。 薬を冷蔵庫で保管する場合には、扉に近い場所や扉のポケットなど、温度が低くなりすぎない場所に保管するようにしてください。
1) 第十八改正日本薬局方
2) 気象庁 過去の気象データ「日最高気温の月平均値(東京)」
3) 糖尿病.50(12):877-82,(2007)
4) リザベン点眼液 添付文書
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