意外と知らない…薬の保管場所、冷蔵庫がNGな薬があるって本当?

  • 作成:2022/04/28

食べ物などと同じように、医薬品も適切な環境で保管する必要があります。間違った方法で保管していると、その薬の本来の有効性や安全性が得られなくなってしまう恐れがあるからです。ただし、薬によって「適切な保管方法」は異なるため、薬をどのように保管すれば良いかわからない場合は、薬を処方された薬局等へも確認するようにしてください。今回は、見落としがちな薬の保管方法について薬剤師の立場からお話します。

この記事の目安時間は3分です

意外と知らない…薬の保管場所、冷蔵庫がNGな薬があるって本当?

(画像素材:ピクスタ)

基本的な注意点:高温・多湿・直射日光を避ける

医薬品は基本的に涼しくて、なるべく湿気の少ない、直射日光の当たらない場所で保管するようにしてください。薬には、温度や湿度、紫外線などによって分解・変質してしまうものが多いため、湿度や温度の高い、直射日光のあたるような環境で保管していると、いざ薬を使ったときに十分な効果が得られなくなってしまう恐れがあります。

たとえば、高温に弱い薬として有名なものに、糖尿病治療に用いる「インスリン製剤」があります。この薬は、使用中のものを除き、未使用のものは冷所で保管する必要があります。ところが、これを30℃以上の暑い場所で保管していると、1ヶ月で効き目が14~18%弱まり、実際の血糖コントロールにも悪影響を及ぼす可能性があることがわかっています1)

また、飲み薬にも、湿気や直射日光に弱い薬があります。たとえば、アルミ製の包装がされていて「飲む直前に開ける」ように注意書きがされている薬は、湿気に弱い傾向にあります。このような薬をむき出しの状態で出しっぱなしにしていると、すぐに空気中の湿気に反応して、変質してしまいます。また、赤色のPTPシート(press through pack)包装シートとは薬を包装する方法の1つで、錠剤やカプセルをプラスチックとアルミで挟んだシート状のもの)に入っている錠剤は、直射日光に弱い傾向にあります。このような薬を直射日光があたるような場所で保管していると、薬の有効成分が分解されてしまったり、薬が変色・変質してしまうので注意が必要です。

冷蔵庫での保管が適さない薬も…薬局での説明を聞きましょう

涼しくて、温度が低く、直射日光にあたらないということで、薬局で処方された医薬品を冷蔵庫で保管する人もいらっしゃるかと思います。たしかに、冷蔵庫であれば夏場の高温、冬場の低温を避けられるため、多くの医薬品にとって適した保管環境であると言えます。しかし、薬の中には冷蔵庫での保管が適さないものもあります。

たとえば、使用中の「インスリン製剤」を冷蔵庫で保管すると、薬液の漏れや濃縮を起こしたり2)、あるいは結露して注射のダイヤルが故障したりする原因になります。また、アレルギー治療に使う「トラニラスト」の目薬も冷蔵庫で保管すると、有効成分が結晶として析出してしまうため、目薬として使えなくなってしまいます3)他にも、軟膏剤などの塗り薬を冷蔵庫で保管していると、硬くなって非常に扱いにくくなることがあります。このように、薬によって適した保管方法は異なるため、ご自身の処方された薬に適した保管方法がどのようなものかについて、薬剤師に確認し、それぞれに適した環境で保管するようにしてください。

小さな子どもがいる場合の注意点:誤飲防止の対策を

最近では、錠剤などをしまうプラスチックケースも安価で購入できるため、持ち運びなどのしやすさから薬はあらかじめケースに移し替えるという方も多いかと思います。ごくまれに子どもがタブレットやラムネなどと勘違いし、誤飲してしまうことがあります。色鮮やかな薬のシートや、小さくて丸いお菓子のような錠剤、面白い色をしたカプセル剤、甘い香りのするシロップ剤などは、子どもの興味関心を強く惹きます。特に、親の「薬を飲む」という行動を真似しようとして、薬を誤飲してしまうケースも報告されています。

薬は小さな子どもの手の届かない場所、あるいは鍵のかかる場所に保管し、食卓などに出しっぱなしにしないようにしましょう。

(薬剤師)

1) Indian J Med Res. 2009 Aug;130(2):166-9. PMID: 19797814
2) 糖尿病.50(12):877-82,(2007)
3) リザベン点眼液 添付文書

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