薬を飲んでいるときの飲酒は絶対にいけない?薬とお酒の関係
- 作成:2021/10/11
薬を飲んでいるときの飲酒については、「飲まない方が良い」という話と、「少しくらいなら飲んでも大丈夫」という話の両方をよく耳にします。これは、どちらが正しいのでしょうか。
この記事の目安時間は3分です
Q.薬を飲んでいるときは、お酒を飲まない方が良いですか?
A. 1滴たりとも絶対に飲んではならないというケースはそれほど多くありませんが、基本的には飲まない方が良く、量や回数を控えた方が良いケースがほとんどです。
飲んでいる薬や、治療中の病気の状態によっては、厳しく禁酒した方が良い場合があります。医師から禁酒を指示されている場合は、必ずその指示に従ってください。一方、たしなむ程度のお酒であれば、そこまで問題にならない場合も多くあります。個々の状況によって適した回答は異なるため、かかりつけの医師や薬剤師に相談することをお勧めします。
お酒と飲み合わせの悪い薬はたくさんある
薬を飲んでいる人がお酒を飲むと、薬とアルコール双方の作用が強くなり、思わぬ副作用に見舞われたり、悪い酔い方をしたりすることがあります。
お酒との飲み合わせが悪い薬として代表的なものに「睡眠薬」があります。普段から睡眠薬を使っている人がお酒を飲むと、睡眠薬とアルコールの両方が中枢神経の働きを抑えることになるため、その作用が必要以上に強まって足元がふらつく、物がダブって見える、めまいがする、といったトラブルを起こす原因になります1)。そのため、睡眠薬を服用中の場合は、基本的にお酒はできるだけ減らすことが勧められます(お酒を飲むと、眠りも浅くなります)。
また、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌にも使われる「メトロニダゾール」という薬は、アルコールの代謝・分解を邪魔する作用があります。そのため、この薬を飲んでいるときにお酒を飲むと体の中でアセトアルデヒドが増えて、普段はお酒に強い人でも頭痛や吐き気といった二日酔いのような症状に見舞われることになります2)。つまり、この薬を飲んでいるときにお酒を飲んでも、恐らく楽しいことにはならないことが予想されるため、飲まない方が良い、ということになります(この作用は嫌酒薬として用いられることもあります)。
このように、お酒と飲み合わせの悪い薬はほかにもたくさんあります。自分の飲んでいる薬がお酒とどういった相性なのかは、医師・薬剤師に相談して確認するようにしてください。
薬との相性は悪くなくても、お酒が病気そのものに悪いことは多い
薬とお酒の相性そのものは悪くなくても、お酒を飲まない方が良いケースもあります。そもそも、薬を飲んでいるということは、何かの病気があって治療をしている状況だからです。お酒がその病気そのものに悪影響を与えることはよくあります。
たとえば、多くの糖尿病の治療薬は、お酒と相性そのものが悪いわけではありません。しかし、アルコールは低血糖を引き起こすことがあるため、特にインスリンで治療を行っている人においては注意が必要です。また、お酒を飲むときに“おつまみ”として、あれやこれやの食品の摂取量が増えれば、それは血糖値のコントロールに悪影響を及ぼします3)。こうした点から、糖尿病を治療している人は、“適度な飲酒”を心がける必要があります。
多くの胃薬についても、お酒との相性そのものは悪くありません。しかし、アルコールは胃を荒らす要因になるため、そもそも胃の調子が悪いときはお酒を控えた方が無難です。
「控える」とは、具体的にどのくらいの量に控えれば良いのか
では、特にお酒を禁止されなかった場合、どのくらいの量までならお酒を飲んでも良いのでしょうか。「適量」と言われても、それが具体的にどの程度のものなのかわからない、という人も多いと思います。アルコールの代謝能力には個人差が大きい(「お酒を飲むほど強くなる」都市伝説の真相)ため、一概に「これ以下ならOK」「これ以上ならダメ」と線引きはできません。
参考情報として、厚生労働省は、節度ある飲酒を「1日平均で20g程度のアルコール摂取」と定義しています4)。これは、ビールや酎ハイ(約5%)であれば中ジョッキ1杯分、ワイン(約15%)であればグラス2杯分、日本酒(約15%)であれば1合程度分が該当しますので、これが1つの目安になると思われます。
ただし先述の通り、その人の病状や病歴、使っている薬の種類や量によっては、これよりも少なく抑えなければならない場合もあります。治療中にお酒を飲みたいと思った際には、かかりつけの医師・薬剤師に「自分にとってはどのくらいの量までが許容できるのか」を個別に相談するようにしてください。
1) 各医薬品添付文書
2) フラジール錠 インタビューフォーム
3) 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2019」
4) 厚生労働省「健康日本21:アルコール」
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