新型コロナウイルス感染症ワクチンの副反応、不正出血の関係性はある!?

  • 作成:2021/10/29

新型コロナウイルス感染症のワクチン接種後に、生理不順や不正出血が起きてビックリされた方がいるかもしれません。(生理の出血量が増えた、閉経後に不正出血があったという方もみえました。)現時点では、ワクチンと生理不順や不正出血の関係は不明です。ほとんどの生理不順や不正出血は1か月前後で自然に治ることが多く、追加で検査や治療が必要になることは少ないと思います。また、ワクチンや不正出血/月経不順が原因で不妊症のリスクが上がることはなく、生理中でも新型コロナウイルスのワクチンは接種して頂いて大丈夫です。今回は、淀川キリスト教病院産婦人科医の柴田綾子先生が、新型コロナウイルス感染症のワクチンと生理の異常について解説します。

柴田 綾子 監修
淀川キリスト教病院 産婦人科医長・産婦人科専門医
柴田 綾子 先生

この記事の目安時間は3分です

新型コロナウイルス感染症ワクチンの副反応、不正出血の関係性はある!?

1. 不正出血/月経不順の原因について

ワクチン接種後に、生理がずれたり、生理の出血量が増えたり、閉経後に出血が出たという経験をされた女性が出てきています。これについてイギリス(1)、アメリカ、韓国において研究が始まっています。これは、ワクチンの成分が直接関係しているのか、ワクチンを接種したあとに起こる発熱や、体調不良によって起こっているのかは、現時点では不明です。アメリカ産婦人科学会や日本の厚生労働省では、ワクチンではなく環境の変化やストレス等でも一時的に不正出血や生理不順が起こりうることを説明しています(2,3)。実は、新型コロナウイルス感染症に感染した女性(177人)の4人に1人(28%)が月経異常や月経量の変化を認めたという報告もあります(4)。そのため、ワクチンの成分による影響ではなく、ワクチン接種後の発熱や体調不良、ストレスが生理不順や不正出血の原因となっている可能性も考えられています。

2. ワクチン接種後の生理不順や不正出血の対応について

ワクチン接種後に生理不順や不正出血があっても、それが原因で不妊症になるということはありません。多くの生理異常は1か月前後で自然に治ることが多く、様子をみて大丈夫なことがほとんどです。ここで注意が必要なのは生理の量が多かったり、生理が止まってしまったり、他の病気が隠れているときです。以下のようなときは産婦人科にご相談ください。

① 生理の量が多い場合

月経2日目(ナプキンやタンポンを1~2時間で交換しないといけない出血量)が2~3日続いている場合や、レバーのような血の塊が何個も出る場合は出血量が多いです。動悸、息切れ、立ちくらみなどがあったり、階段や長時間歩くと疲れてしまったりするときは貧血になっていることがあります。貧血は血液検査で分かるので、お近くの産婦人科や内科へご相談ください。

② 生理が止まってしまった場合

新型コロナウイルス感染症のワクチン成分は卵巣に蓄積することはなく、不妊症になることはないとされています(5)
ただし、もし生理が3か月以上止まってしまったときは、女性ホルモンの状態や卵巣の状態を確認する必要があります。例えば、過度なダイエットやストレス、運動のしすぎが原因でも生理が止まってしまうことがあります。

③ 別の病気が隠れている場合

ワクチンとは関係なく、病気が隠れている場合があります。子宮筋腫、子宮頸がん、子宮体がんなどでは不正出血や月経量の変化が起こります。20歳以上の女性は2年に1回、子宮頸がん検査を受けることが勧められています。
また、閉経後に出血がある場合は子宮体がんが隠れている可能性があります。もし最近、がん検診を受診していないのであれば、ぜひ一度産婦人科へご相談ください。

いかがでしたでしょうか。
ほとんどの生理不順や不正出血は1か月前後で自然に治っており、大きな心配はしなくてもよいことが多いです。もし何かご心配なことがありましたら、お近くの産婦人科にご相談ください。

参考
1.Coronavirus vaccine - weekly summary of Yellow Card reporting
https://www.gov.uk/government/publications/coronavirus-covid-19-vaccine-adverse-reactions/coronavirus-vaccine-summary-of-yellow-card-reporting (Last access 2021/09/28)
2. ワクチン接種により不正性器出血(不正出血)や月経不順が起こるのは本当ですか。厚生労働省
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0092.html
3. COVID-19 Vaccination Considerations for Obstetric–Gynecologic Care
Practice Advisory  Last updated July 30, 2021
https://www.acog.org/clinical/clinical-guidance/practice-advisory/articles/2020/12/covid-19-vaccination-considerations-for-obstetric-gynecologic-care
4. Li K, Chen G, Hou H, Liao Q, Chen J, Bai H, Lee S, Wang C, Li H, Cheng L, Ai J. Analysis of sex hormones and menstruation in COVID-19 women of child-bearing age. Reprod Biomed Online. 2021 Jan;42(1):260-267.
5. 不妊になるって本当?妊娠中でも大丈夫?女性のための新型コロナワクチン(mRNAワクチン)解説
厚生労働省  https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/column/0007.html

2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。

病気・症状名から記事を探す

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師