コロナ受診控えで、4.5万件のがんが見過ごし状態に?対がん協会が警鐘
- 作成:2021/11/04
新型コロナウイルス感染症の拡大により医療機関への受診控えが発生した問題で、日本対がん協会は11月4日のメディア向け説明会で、2020年度のがん診断のうち、2019年並みの健診・通院があれば見つかっていたであろうものが、9%程度に当たる4万5000件程度あるとの推計を発表しました。対がん協会がん検診研究Gプロジェクトディレクターの小西弘氏は、「検診受診の勧奨を強め、検診・通院控えの方々を受診につなげることが重要。そのためにもコロナ対策の充実を図ると同時に、がん対策も迅速に拡充することが欠かせない」との認識を示しました。
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早期がんほど診断数低下…がんの死亡率に増加の懸念
対がん協会では、2021年7月から8月にかけて、全国の医療機関にアンケートを実施。2020年度の胃・大腸・肺・乳・子宮頸の5つのがんについて診断数や手術数、内視鏡治療数などについて105施設から回答を得ました。
その結果、5つのがんの診断数の合計は、2019年に8万8814件だったところ2020年には8万660件に減少(9.2%減)。特に胃がんは19470件から16868件(13.4%減)、大腸がんでは2万1975件から1万9724件(10.2%減)へ、と二ケタ減少する結果に。ステージ別にみると、いずれのがんも早期ステージのものほど発見が遅れている傾向となっており、コロナ禍での受診控えが、がんをはじめとする重大な疾患の発見を遅らせていることが示唆されました。
対がん協会では「がんの有病率は、2019年と2020年でおおむね差はないと考えられる」とした上で、2019年並みの健診・通院があれば見つかっていたであろうがんが9%程度あるとの推計を提示。調査対象である5つのがんについて、全国規模に推計すると4万5000件が診断されていない可能性があることを指摘しました。
今回の結果について、日本癌治療学会理事長の土岐祐一郎氏(大阪大学大学院医学系研究科教授)は、「特に減少幅の大きい胃がんの場合、いったん進行すると悪化のスピードも速い。できるだけ早く検診の充実が重要である」と説明。
日本癌学会・日本癌治療学会・日本臨床腫瘍学会・新型コロナウイルス(COVID-19)対策WG長を務める寺島毅氏は、「第5波には、がん診療からコロナにシフトしなければならない医療機関もあったが、それも落ち着いてきている。今後、今のように感染が落ち着いてきたことで、取り残し分を取り戻す診療の切り替えの早さが求められる」とも話し、状況に応じた対応の必要性を訴えました。
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