感染対策で“普通の風邪”が激減。子どものうちに風邪をひかないと「免疫力が育たない」は本当?
- 作成:2021/09/12
AskDoctorsでは、子どもの病気やケアで親が悩みがちなポイントについて、小児科医の森戸やすみ先生に解説いただいています。連載第2回のテーマは「子どもの風邪が激減、その影響は?」。新型コロナウイルス感染症の対策で、マスク、手洗い、消毒が生活の一部となった方も多いことでしょう。そのため、普通の風邪は大幅に減っているそうですが、「このままでは、免疫力が育たないのでは?」と気になる親御さんもいるようです。子どもが風邪をひいても、ひかなくても心配になるのが親心。どう判断したらいいか、医学的に教えていただきました。
この記事の目安時間は3分です
突発性発疹や手足口病は、例年になく減っている
子どもの風邪が減っています。新型コロナウイルス感染症が話題になり始めた2019年末から、小児科外来の患者さんは減ってきました。国立感染症研究所の発表を見ると、2019/2020年のインフルエンザは例年通り冬の感染者が多かったのですが、2020/2021年は記録的にインフルエンザのない冬でした。
そして、前回の冬はインフルエンザだけでなく、子どもが熱を出すことも記録的に少なかったのです。私は毎日、外来診療をやっていますから、感覚的に患者さんがあまり来ないなと思っていました。国立感染症研究所が、風邪(上気道炎)の報告数を発表しています(グラフ参照)。
これを見ると、2020年の3月(10週頃)から急速に上気道炎の患者さんが減少し、2021年の4月頃(15週頃)から徐々に増えていることがわかります(縦軸の数字が違うことに注意)。
週別病原体別上気道炎由来ウイルス
ほかに、子どもがよくかかる突発性発疹や手足口病も、例年になく減っています。こういった傾向は、なぜ起こったのでしょうか?
そもそも感染症とは、ウイルスや細菌など病原微生物と呼ばれるものが人から人に受け渡されて起こります。外来で「この子は風邪ですか? なにかの感染症ではないですか?」と尋ねる方がいますが、風邪もウイルスなどが起こす感染症です。おそらく、「ノロウイルスやO157のように有名で重症化するような感染症ではないですか?」ということが聞きたかった質問だと思います。
感染症は、鳥や豚などからも人に移りますが、やはり圧倒的に人から人に移るものが多いのです。だから、新型コロナウイルス対策のためにお互い距離を取り、マスクをし、手洗い・消毒をしていたことによってある程度は防げていたのでしょう。でも、かかったことのない病気は、この夏乳幼児に流行ったRSウイルスのようにあっという間に広がることがあります。人との接触がゼロにはできないので、仕方のないことです。せめてワクチンのある病気は、ワクチンで防ぎましょう。
感染症は、小さいうちにかかるほど重症化する!
こういった一般的な感染症が流行らないことは、なにか問題でしょうか? 子どもは軽い感染症を繰り返して大きくなるため、「このまま風邪を引かずに大きくなっても大丈夫なの?」と心配する人がいます。しかし、百日咳やRSウイルス、インフルエンザなど、通常、感染症は年齢や月齢が小さいうちにかかる方が重症化のリスクが高いのです。RSウイルスは、初感染がひどくなることが有名です。RSウイルスには3歳になるまでに、通常1回はかかります。その1回目が、1歳未満で特に生後まもなくだと入院することがあったり長引いたりするのです。2歳以降の初感染だと比較的重症ではありません。
定期接種のワクチンは、生まれてまもなくから始まりますね。小さいほどかかったら大変なので、ワクチンで早く免疫をつけてあげるためです(中にはB型肝炎ワクチンのように、重症化を防ぐというよりは小さいうちに受けた方が免疫が付きやすいからという理由のものもあります)。
そう考えると、あまり風邪を引かずに育ち、大きくなってから初めて風邪を引いたとしても、別段困ったことはないでしょう。入院をするような重症化は、かえって少ないはずです。だいたいの感染症は、5歳未満でかかることが重症化のリスクになります。
でも、中には水痘(水ぼうそう)やおたふく風邪のように、大人になってからの方が重症化したり合併症のリスクが高くなったりするものもありますし、麻疹のように大きくなってから感染し、最良の医療を行ったとしても1000人に1人亡くなってしまう恐ろしい感染症があります。繰り返しになりますが、ワクチンのあるものはワクチンで防ぎましょう。それ以外の一般的な風邪などは、わざわざかかりに行く必要はありません。
1971年、東京生まれ。小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内のどうかん山こどもクリニックに勤務。『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)、『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)など著書多数。二児の母。
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