子どもに動画サイトを見せる?小児科医290名の見解は…
- 作成:2021/12/20
近年は小学生の「将来なりたい職業」で上位にユーチューバーがランクイン(※)しているように、デジタルネイティブの子どもたちにとって動画サイトは身近なものになっています。一方で、長時間の動画サイト視聴は子どもにとってあまり良くないという声も。これについて、小児科医はどう考えているのでしょうか。AskDoctorsで290名の小児科医に対して行ったアンケート結果をご紹介します。 ※進研ゼミ小学講座が小学3年生~6年生に対して2020年11月に実施したアンケート
この記事の目安時間は6分です
約半数の小児科医は動画サイトを子どもに見せることを「できれば避けるべき」と回答
小児科医290名に、動画サイトを見せることの是非について調査した結果はグラフの通りです。一番多く選択されたのは「できれば避けるべき」で、45.9%(133人)が選択。次いで「どちらとも言えない」が28.3%(82人)、「避けるべき」が16.9%(49人)、「避けなくても良い」が9.0%(26人)という結果になりました。
Q 子どもにYouTubeなど動画サイトを見せることに対する先生のお考えをお聞かせください。(小児科医290名が回答)
優良コンテンツもある、時間を守ればよい?小児科医のコメント
アンケートに回答を寄せた小児科医がそれぞれの選択肢を選んだ理由についてもご紹介します。
「避けなくても良い」を選択した理由
むしろ学習面でプラスになる動画も多いから。(40代、男性)
・見せない方が子どもの発育には良いのかもしれないが、現実問題として、こうしたツールなしで子育てを遂行するのは不可能に近い。子どもの発育のために親の生活は全て犠牲にしろというのも極端な話。(40代、男性)
・情報量が多く、自分に必要な情報を手早く取得できる手段なので、動画サイトに限らず、多彩なメディアを使いこなせる方が圧倒的に良いと思います。今はインターネット・動画、ひと昔前はテレビ、その前はマンガ、その前は空想小説が良くないものとされてきました。新しい物に対応できない大人はいつの時代にもいて、さも自分が正しいかのような根拠のないことを言います。より良いものに対応した教育をしていくことが必要です。(30代、男性)
・大切な事は自分で適切なリソースを選べるようになることないかと思っています。むやみに規制するのではなく、メディアリテラシーを身に付けさせることが重要だと思っています。(50代、男性)
「どちらとも言えない」を選択した理由
・情報収集や学習の媒体として慣れなくてはいけない場合があるから。(40代、男性)
・見せること自体が悪いわけではないが、年齢に応じた内容の選択は必要であるし、依存しないように制限(できれば本人が自主的にできるように)が必要。(60代以上、男性)
・教育的なものや、知識を広げるための導入的なものもあり、うまく選択できれば良いと思う。(40代、男性)
・適度な時間であれば良いと思う。例えば電車が好きな子供に電車の動画を見せれば喜ぶだろう。動画を見せるだけで他のおもちゃで遊ばない、外遊びしないといったことにならないように気を付ける必要はある。(30代、男性)
「できれば避けるべき」を選択した理由
・外で騒がないように仕方なく見せることもあるのですが、本人任せだと果てしなく見ているので、様々な経験をする時間が失われるように思います。家の中に紙の本や折り紙、お絵描きなどをさりげなく置いています。(50代、男性)
・超近距離でモニターを見るのが目に良くないと考えています。(50代、男性)
・寝る前のスマホは覚醒させてしまうので成長ホルモンの妨げになり低身長になる可能性も否定できない。できれば読み聞かせが望ましい。(50代、女性)
・刺激が強すぎて依存傾向に落ち入りやすいため。(50代、男性)
・動画を見るときには、両親と一緒に楽しむツールとして使っていきたい。動画とだけ対面するのは、受動的になってしまうため。(30代、女性)
・見るときは時間を決める。親が管理する。親もルールを守る。(30代、女性)
「避けるべき」を選択した理由
・ディスプレイ視聴、動画視聴が長くなりすぎることは、視覚面・運動面においても不利益を被ると思われるから。(50代、男性)
・少なくとも乳幼児の単独での使用は極力避けるべき。機器の操作はうまくなるかもしれないが、子どもの意思表示に対する反応がないものに長時間接することは情緒面や言語面での発達には決していい方向に働かないと思います。(50代、男性)
・一度見せれば子供はまた見たくなる。ネットの中の世界よりも現実の世界で生きることの重要性を親が認識してほしい。(50代、女性)
乳幼児へのメディア視聴、WHOや学会の提言は?
WHO(世界保健機関)は2019年に「5歳未満の子供の運動、座った姿勢での行動と睡眠ガイドライン」を発表しました。この中には、乳幼児のスクリーンタイム(TV・ビデオ視聴や、ゲームなどをしている時間)についても言及があり、それによると、1歳以下にはスクリーンタイムは推奨されず、2〜4歳の場合には、スクリーンタイムは1時間を超えるべきではない(少ない方がよりよい)としています。
日本小児科学会、日本小児科医会も乳幼児の長時間にわたるメディア視聴に警鐘を鳴らしています。
また、近年では子どもに人気のあるキャラクターが残虐的・暴力的・性的な行為をしている動画など、子どもにショックを与えるようなコンテンツが子ども用のフィルタリングをかいくぐって関連動画に表示される、いわゆる「エルサゲート」という問題も起こっており、運営元とのいたちごっこが続いている状態に。
いわゆる「ワンオペ育児」ではどうしても動画サイトなどを子どもに見せている合間に家事などを行う必要が出てくることもあると思いますが、保護者が上手にコントロールして子育てに使っていくようにしたいものです。
※WHOガイドライン原文:Guidelines on physical activity,sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age
※日本小児科学会「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」(2004年)
※日本小児科医会 子どもとメディア委員会
※この記事は、2021年7月29日~30日にエムスリー株式会社が運営する医療従事者専用ポータルサイト「m3.com」にて、医師会員を対象に実施したアンケート調査の結果に基づいて制作したものです
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