しこり、痛み、ひきつり…まさか乳がん?乳房のトラブル・不安に専門医が回答します!(専門医が語る乳がんセミナーvol.1)
- 作成:2022/10/28
女性の9人に1人がかかる乳がんは、40歳を超えると発症数が急に増えていくのが特徴です。AskDoctorsではオンラインセミナーを開催し、乳腺専門医の法村尚子先生(高松赤十字病院胸部乳腺外科副部長)に、乳がんの特徴や検査方法、乳がんと間違いやすい良性腫瘍、乳がんの治療方法などを語っていただきました。当日の様子を、5回シリーズで紹介します。第1回は、検診・セルフチェック法をはじめ、乳がんが確定するまでの検査の流れについてです。 ※掲載されている内容は2022年7月時点の情報です。
この記事の目安時間は6分です
乳がん初期の自覚症状とは?
こんにちは。乳腺専門医の法村尚子です。みなさんは、乳がんになったらどんな症状が出てくると思いますか? 以下のような症状が現れたら乳腺外来を受診してほしいと思います。
(1)しこりに触れる
(2)「えくぼ」「ひきつれ」がある
(3)乳首から赤、あるいは褐色の血が出る
(4)乳房全体が赤く腫れる、乳頭乳輪部分がただれる
初期のがんでは症状は現れませんが、進行するに連れて上記のような症状を自覚するようになってきます。
乳腺外来で一番多い相談は痛みだが…
乳腺外来で一番多い相談は何かご存知でしょうか? それは痛みです。痛みというのは人が最も自覚しやすいものなので、心配になって相談に来られる方が多いのだと思います。ただ、乳がんは痛みを伴わないことが多く、痛みを訴えていた人でがんと診断されるケースはほとんどありません。もちろん痛みを感じて乳腺外来で乳がんが見つかったというケースもあるので、「痛い=100%安心ではない」ということは知っておいてほしいと思います。
乳がんセルフチェックに適したタイミング
乳がんは、自分で見つけることができるがんです。そこで始めていただきたいのがセルフチェックです。自分で自分の乳房を触るというセルフチェックを月1回ぐらい行うことを習慣にしていただければと思います。月経がある人は月経開始後1週間目ぐらいの乳房が一番柔らかいので、そのころがやりやすいかなと思います。
具体的には、円を描くように乳房全体を触ったり、手を横にスライドさせたりして全体を調べます。入浴時に石鹸をつけて行うと結構わかりやすいでしょう。鏡を見ながら腕を上げたり下げたりして、乳房全体や乳首の状態をよく観察してください。
乳房にしこりやひきつれ、えくぼはないか、赤く腫れたりただれたりしてないか。乳首をギュッとつまんでみて出血がないかなどを見て、もしそうした異常があった場合には乳がんの疑いが考えられます。次の検診を待たずに乳腺外来を受診してください。
定期的に自分の乳房を触っていれば「あれ、いつもと違うな」と少しの異変にも気づきやすくなります。ただ、セルフチェックをしていれば乳がん検診を受けなくていいということではありません。乳がん予防は「セルフチェック+乳がん検診」が基本です。セルフチェックに乳がん検診をプラスすることでより早期発見につながるので安心です。
初期段階ではほぼ症状なし。だから乳がん検診が大切
乳がんは初期段階で症状は出ないので検診はとても重要です。その種類としては、主に以下の3つがあります。
(1)市区町村で行う住民検診
(2)勤務先で行っている職場検診
(3)個人で申し込んで行う個人検診
自治体や職場によって実施内容は異なりますが、40歳以上の女性には、2年に一度「乳がん検診(マンモグラフィ)のご案内」というクーポンが送られてくることが多く、自治体によってはエコー(乳腺超音波)の検査を追加しているところもあります。以前は「視触診」も検診メニューに入っていましたが、早期の乳がんを発見できるという可能性は低いので、今は実施するところはほとんどありません。
検診を受けた後に「要精査」という通知が来た場合や、しこりなどの自覚症状があったら乳腺外来を受診していただければと思います。乳腺外来では以下の診察や検査を行います。
(1)触診で乳房の状態を見る
(2)マンモグラフィやエコーの検査
(3)必要に応じ、検査を加えていく
マンモグラフィとエコーとの違いとは?
(1)マンモグラフィ
●特徴
マンモグラフィとは、乳房専用のレントゲン検査のこと。少ない放射線の量で安全に乳がんの検出ができるのが特徴です。機器中央にある黒色の台と透明の板で乳房を挟んで、ギューと薄く伸ばしていきます。薄く伸ばすほど、中のしこりが写りやすくなるので、少し痛みを感じることもありますが、がんばって薄く伸ばしてもらってください。
●長所と短所
マンモグラフィの長所としては、がんの疑いがある小さな石灰化を見つけられるので早期発見につながること。短所としては、乳腺がよく発達して乳腺濃度の高い若い方のしこりを見つけにくく、微量ですが被ばくすることです。また、少し痛いということも短所の一つかなと思います。
(2)エコー
●特徴
エコーは、 ゼリーを塗った乳房の上からプローブという器具で超音波を当てて、乳房内の状態を調べる検査です。
●長所と短所
マンモグラフィの短所であった乳腺が発達した乳房でも乳がんを見つけやすいのが長所です。短所としては、小さな石灰化ができるタイプの乳がんは映りにくいこと、良性の腫瘍でもすぐ映ってしまうので再検査になる確率が高くなることが挙げられます。
マンモとエコー、両方の検査を受けるのがベスト
このようにマンモグラフィとエコーのどちらも長所と短所があります。よく「どちらの検査の精度がいいですか?」「マンモグラフィは痛いのでエコーだけにしておきます」などと言われることがありますが、どちらがいいというより「両方受けるほうが、よりがんを発見しやすくなる」といえるでしょう。
診断をつけるための「細胞診」「組織診(針生検)」
マンモグラフィやエコー検査を通じて、乳がんの疑いがあった場合、どのように診断を確定していくのでしょうか。エコー検査時にモニター上にしこりが見えたときには、その場所に針を刺して細胞を採取。それらを病理検査に出して、がん細胞があるかどうか調べてもらうのが「細胞診」です。乳房に注射をするような検査なので、通常、麻酔はしません。
ただ、細胞診の細い針で診断ができなかった場合は、もう少し太い針を刺して細胞を多く採取する「組織診(針生検)」をします。太い針で痛みを生じやすいので、局所麻酔をしてから行います。ちなみに腫瘍の形状や状態によっては細胞診をせずに、初めから組織診を行うこともあります。
エコーでは見えないけどマンモグラフィでは見えている石灰化病変が怪しい……。そんな場合には、「マンモグラフィガイド下マンモトーム生検」を行います。局所麻酔をした上で、マンモグラフィを使って乳房を挟んで撮影しながら病変の位置を特定し、細胞を採取していく方法です。
ちょっと大がかりな検査になりますが、これなら石灰化病変をピンポイントで採取することができます。
それでも診断がつかない場合には「摘出生検」
それでも診断がつかない場合は「摘出生検」を行います。これは、局所麻酔をしてからしこりそのものを切除し、丸ごと病理検査に出す検査です。ここまで行えば、まず診断はつくと思います。その結果、良性なら一安心ですし、悪性なら「乳がん」の治療が必要になってきます。
検診で要精査となっても、その9割は良性と診断される
乳がん検診後、要精査という通知が来たら「怖い」と思われるかもしれません。ただ、要精査で外来にいらっしゃって、実際に乳がんだと診断される人は、全体の5〜10%と意外に少ないのです。つまり9割はほっと胸をなでおろして帰っていかれます。そのため、怖がらないで精査のために受診してほしいと思います。たとえ乳がんと診断されても、早期に発見されているので、すぐに治療を開始すれば治癒つまり治ることを目指せますし、治療にかかる費用も抑えることができるでしょう。
まとめ
上のグラフのように、乳がんは早期に発見できるほど、生存確率が高いのが特徴です。特に0期で見つかった場合は、10年後の生存率は95.5%ですので、ぜひとも乳がん検診を定期的に受けて早期発見を努めていただきたいと思います。
※次回は、乳がんになりやすいタイプ、や遺伝性の乳がんについて法村先生に解説してもらいます。
香川大学医学部医学科卒業。乳腺専門医・指導医、甲状腺専門医、内分泌外科専門医、外科専門医等の資格を持つ。医学博士。患者さんの立場に立ち、一人一人に合った治療を提供できるよう心掛けている。プライベートでは1児の母。
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