気になる乳房の痛みや張り…「もしかして乳がん?」早期発見のために習慣化したいこと
- 作成:2021/09/08
乳がんは、日本人の女性がかかるがんで最も多く、罹患者数は年々増加しています(国立がん研究センターがん対策情報センター調べ)。なんとなく乳房が痛かったり、塊のようなものを感じたりすると「乳がんでは?」と不安に駆られる女性は多いのではないでしょうか? この記事では、乳腺外科が専門の法村尚子先生に、乳がんの初期症状や検診の大切さなどについて教えてもらいました。
この記事の目安時間は3分です
しこりやひきつれがあると、すでに進行していることが多い
乳腺外来を受診される方は、乳房の痛みや張り、違和感等を訴えて来られることが多いのですが、実は乳がんの初期は違和感も痛みもありません。乳房の痛みや張りを訴えた方の検査をしても何もないことがほとんどです。しかし、実際に乳がんを発症していると、しばらくして自覚症状が現れてきます。例えば、以下のような症状です。
- 乳房のしこり、脇のしこりを触れる。
- 乳房にひきつれがある、変形している、乳頭が引き込まれている(急に陥没乳頭になった)。
- 乳頭から血が混じった茶褐色の液が出る。(白や透明、黄色の液は問題ないことが多い)。
- 乳頭や乳輪がただれている。何回も繰り返して治らない。
- 乳房が赤く腫れている。乳房の皮膚がオレンジの皮のようにぼこぼこしている。
残念ながら、このような症状が現れてくると、すでに進行していることが多いです。また、こうした自覚症状があって受診される患者さんは、長年、乳がん検診を受けていない方が多いです。
初期症状がないからこそ、乳がん検診が大切
乳がんは初期症状がないため、乳がん検診はとても重要です。検診で乳がんを早期発見できれば早期治療につながります。早期に治療を開始できればできるほど、治癒を目指すことができますし、軽い治療で済む確率が上がり、かかる治療費も軽くできます。逆に、発見が遅れて進行すればするほど、治療を行っても生存率は下がり、再発のリスクは高まります。
乳がん検診は、市区町村が行っている住民検診、勤務先の健康保険組合や事業所で行っている職場検診、個人で申し込んで行う個人検診があります。住んでいるところや職場により異なりますが、40歳以上の女性に2年に1度のマンモグラフィを行っているところが多いです。またエコー(超音波)検査を追加しているところもあります。
医師が目視や手で触れて診察する「視触診」は、以前は必須でしたが、早期の乳がんを発見できる可能性は低く、今は実施しているところが少なくなりました。
マンモグラフィとエコーはどっちが優れている?
患者さんから「マンモグラフィとエコー、どちらを受けたほうがいいですか」?と聞かれることがよくありますが、どちらかが優れているというわけではありません。
マンモグラフィの長所としては、がんの疑いのある小さな石灰化を見つけることができるため、早期発見につながることです。短所は、乳腺濃度の高い乳房ではしこりをみつけにくいことや、微量ですが被ばくがあることです。また、検査時に乳房を圧迫して痛いことも、短所の1つだと思います。
一方のエコーの長所は、乳腺濃度の高い乳房でも乳がんを見つけやすい。被ばくがなく、妊娠中でも可能なことです。短所は、小さな石灰化はみえにくい。良性の腫瘍でもひっかけやすく、再検査になりやすい等が挙げられます。
このように、どちらの検査にも長所と短所があるため、両方受ける方がより万全と言えます。
月1回、乳がんセルフチェックの習慣を
乳がんは自分で見つけることができるがんです。乳がん検診を受けることに加え、ぜひ月1回程度のセルフチェックを習慣にして下さい。月経がある人は、月経開始後1週間くらいに行うと、わかりやすいです。
<乳がんセルフチェックのポイント>
☐入浴時や着替えの際に、鏡の前で腕を上げたり下げたりしながら、乳房自体や乳輪のひきつれや変形がないか等を確認する。
☐乳房が赤く腫れていないか、乳房や乳輪、乳頭がただれていないかもチェックする。
☐横になった姿勢でも乳房や脇を触って、しこりを触れないか確認する。
☐手のひらや指の腹を使って、円を描くようにしたり、手を横にスライドさせたりしながら、乳房全体を触れる。入浴時に石鹸をつけてツルツルと滑らせるようにすると、なおわかりやすい。
セルフチェックはあくまでも早期発見のための一つの方法で、これだけでは万全ではありません。忘れずに乳がん検診も受けてください。セルフチェックで何かおかしいと思った場合には、次の乳がん検診を待たずに乳腺外来を受診しましょう。不安な気持ちを一人で抱えず、なるべく早く医師に相談してください。
香川大学医学部医学科卒業。乳腺専門医・指導医、甲状腺専門医、内分泌外科専門医、外科専門医等の資格を持つ。医学博士。患者さんの立場に立ち、一人一人に合った治療を提供できるよう心掛けている。プライベートでは1児の母。
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