乳房の違和感、セルフチェックのコツ、乳がんの治療の疑問……なかなか聞けない悩みに、専門医が直接回答!(専門医が語る乳がんセミナーvol.5)

  • 作成:2022/11/06

女性の9人に1人がかかる乳がんは、40歳を超えると発症数が急に増えていくのが特徴です。AskDoctorsではオンラインセミナーを開催し、乳腺専門医の法村尚子先生(高松赤十字病院胸部乳腺外科副部長)に、乳がんの特徴や検査方法、乳がんと間違いやすい良性腫瘍、乳がんの治療方法などを語っていただきました。当日の様子を、5回シリーズで紹介します。最終回は、乳がんの症状や診断、治療などに関する受講者からの質問に法村先生からご回答いただきます。 ※掲載されている内容は2022年7月時点の情報です。

法村 尚子 監修
高松赤十字病院 胸部・乳腺外科 副部長
法村 尚子 先生

この記事の目安時間は6分です

乳房の違和感、セルフチェックのコツ、乳がんの治療の疑問……なかなか聞けない悩みに、専門医が直接回答!(専門医が語る乳がんセミナーvol.5)

乳房の痛み、違和感、分泌物などへの疑問

Q1. 乳房に、しびれ、痛み、ひきつれがあります。左側腕の付け根から胸あたりに何か違和感があるのが気になります。また、胸を触ると凹んでいる気がします。
A1. 「痛いなぁ」「違和感があるな」というのは女性なら誰でも経験したことがある症状で、そんなに気にすることはないと思います。ただ、痛いぐらいなら大丈夫というのではなく、気になるのであれば検診を待たずに受診した方がいいかなと思います。定期的に検診を受けていてたまに痛いのならば、おそらくあまり問題はないと思われます。
ただ、気になるのは、「ひきつれ」と「凹んでいる」ところです。少し乳がんの疑いがあるかなと思うので、左右の乳房を比べたり、手を上げたり下げたりして、どう見ても引きつれがあるなという場合は、皮膚の下の乳がんが、その皮膚を中に引き込んでいる可能性があるので、すぐに乳腺外来を受診してください。

Q2. 乳首からミルクの匂いがして、透明から乳白色の汁が出ます。
A2. 膿みたいな臭い匂いがする場合は乳腺炎かもしれませんが、いい匂いなら気にしなくていいのではないでしょうか? 分泌物に関しては、血が混じっているときは要注意ですが、透明や白色に関しては特に心配は要らないと思います。

Q3. 乳首のくぼみがかゆく、薄皮のようにむけます。
A3. これは、皮膚科を受診された方がいいかなと思います。まれに、乳首や乳輪のところにかさぶたができたり、ただれたりしてずっと治らないタイプの乳がんもあるので、まずは皮膚科に行って様子を見るようにしてください。治った場合は気にしなくてかまいませんが、治りが悪い、皮膚科医より「がんの疑いがある」と言われた場合には、皮膚科で生検などの検査を受けるようにしてください。

Q4. 病理検査で弱い異形細胞がありましたが、がんではないとの結果でした。異型細胞は正常に戻らないのでしょうか?
A4. 異形型細胞が正常に戻るか戻らないかは個人差もあり、自然消退することもあるでしょう。その一方で、悪化していくこともあるので、早く気付けるように定期的に乳腺外科を受診する、または検診を忘れずに受けるなど、何かしらの経過観察は必要かと考えます。

Q5. 授乳中や妊娠中でも乳がんになりますか?
A5. はい、なります。妊娠中に見つかったという方も時々いらっしゃいます。

乳がん検診、セルフチェックへの疑問

Q1.セルフチェックをしても、しこりがあるか自分が分かりにくいので不安です。押さえると痛いので、乳房のセルフチェックはやりたくありません。
A1. 乳房の硬さには個人差があり、元々コリコリするような人もいるので、医師が初見で触っても異常を見つけるのはなかなか難しいものです。毎月1回、定期的に自分の乳房を触っていれば、なんらかの変化に自分で気付ける可能性は高いと思います。最初は気づかないかもしれませんが、定期的に触ってみることは大切かなと思います。痛いのでやりたくないと言われてしまうと仕方ないかもしれませんが、できたら自分のためだと思ってやってください。

Q2.胸にコロコロ2cm弱のしこりに触れます。乳腺炎でしょうか?
A2. この質問だけでは何とも言えないので、本当にしこりに触れるのであれば、一度、乳腺外来に行って検査をしてもらってください。結果として治療が必要ないと判断されれば、特に心配することはないと思います。

Q3.授乳中の乳がん検診、その正確さについて教えてください。
A3. 授乳中は、乳腺が大変発達しているので、マンモグラフィは真っ白に写ってしまいます。がん自体も白く写るので判別が難しく、授乳中のマンモグラフィはやや不正確だと思っておいてください。ただ、検診自体は受けられないということではありません。そのときはエコーを追加していただいたら、発達した乳腺の中でもしこりを見つけやすいかなと思います。

Q4.乳がん検診は1年に1回で十分、それ以上はやり過ぎでしょうか? またマンモグラフィの被ばくが心配です。
A4. 自治体が行う乳がん検診は2年に一度で、1年に一度検診を受けていれば十分だと思います。マンモグラフィの被ばくは1〜3ミリグレイで、また乳房だけの被ばくであり、体全体に被ばくするようなことはないので、それほど心配するようなものではありません

Q5.心配なしこりと、そうでないしこりの違いを教えてください。
A5. 一般的には、良性のものはコロコロ動く、ガンは硬くて動かないといった特徴はあるのですが、判断は難しく、細胞の検査までしないと良性か悪性か断定することはできません。そのため、何かしこりがあって気になると感じた方は乳腺外来を受診していただけたらと思います。

乳がん検診後、および乳がんの治療の疑問

Q1.検診で良性疾患だった場合、日常生活で気をつけることはありますか。また、良性疾患でがん化するものはありますか。
A1. 良性疾患だったら別に気をつけることはありません。継続的にセルフチェックを行い、定期検診を受けていただければと思います。ただ、良性疾患の中でも乳管内乳頭腫の場合は、まれではありますががんに移行することもあるので、私は手術をおすすめしています。また、葉状腫瘍も要注意です。葉状腫瘍には良性、境界悪性、悪性があり、悪性の場合はがんのように転移が起こることがあるからです。

Q2.高濃度乳房で毎年マンモグラフィやエコーを受けていましたが見逃され、偶然やったMRIで乳がんが見つかりました。高濃度乳房で気をつけることはありますか? また高濃度乳房は改善しますか?
A2. 高濃度乳房の方でもエコーを追加すると大概は見つかるのですが、残念ながらマンモグラフィでもエコーでも見つかりにくい、極めてまれな乳がんのタイプだったかと思います。一般的に高濃度乳房の方は、乳がん検診の際、エコーは必ず追加でやってもらう方がいいかと思います。ただ、高濃度乳房は改善していきます。年齢とともに乳腺は脂肪に置き換っていき、乳腺の量はだんだん減っていくためです。マンモグラフィで真っ白に写っていた乳房でも、次第に黒っぽく写るようになります。

Q3.乳がんの手術をしてホルモン剤を飲んでいます。食べ物その他で気をつけることを教えてください。
A3. タバコを吸わない、太りすぎない、運動する、飲酒はほどほどに。生活習慣病の予防が乳がん予防にもつながりますので、健康的な生活をしていただけたらと思います。

他の薬剤併用、高齢の母の乳がん治療、セカンドオピニオンへの疑問

Q1.子宮筋腫の治療でレルミナを服用しています。乳がんのリスクが高まると聞きましたが大丈夫でしょうか?
A1. レルミナは女性ホルモンを下げて閉経しているような状態をつくる薬です。女性ホルモンにさらされる場合には乳がんのリスクが高まると言われているので、レルミナを服用しても乳がんのリスクが高まることはないと思います。ただ、更年期障害などで女性ホルモンのエストロゲンを補充するような治療していれば、もしかしたらリスクはやや上がるかもしれません。ただ、現在の病気と乳がんのリスクを比較して、現在の病気の方が困っているのであれば、現在の治療を優先していただけたらと思っています。

Q2.80代の母の乳がんが確定いたしました。どんな治療や検査がありますか? 病院では40代50代の患者さんが多くて、80代以上の方は、患者は肩身が狭いです。
A2. 80代といっても、検査方法は他の年代の方と同じです。また、80代以上の乳がん患者さんも多くいらっしゃいますので、肩身が狭い思いをする必要はありません。ぜひきちんとした治療を受けてください。私自身は80代以上の高齢の患者さんにも基本的には手術をします。高齢になると抗がん剤が効きにくいため、患者さんの状態に合わせてホルモン治療や分子標的治療を選択することもあります。

Q3.セカンドオピニオンについてお聞きします。主治医に黙って別の病院を受診しても対応してもらえるのでしょうか? また、紹介状なしなら検査のやり直しになるのでしょうか?
A3. セカンドオピニオンは患者さんの権利です。紹介状は必要なので、その旨を主治医にお伝えすれば紹介状を書いてくれると思います。紹介状には治療経過や投薬内容、検査データなどが記載されますので、紹介状がなければ時間と費用がかかってしまうだけでなく、セカンドオピニオンを受けられない可能性があるでしょう

これまでも繰り返しお話ししたように、乳がんは早期発見・早期治療が大事なので、乳がん検診受診に加え、月1回のセルフチェックを欠かさず続けてほしいと思います。セルフチェックでおかしいなと思ったら、次の検診を待たずに乳腺外来を受診してください。

香川大学医学部医学科卒業。乳腺専門医・指導医、甲状腺専門医、内分泌外科専門医、外科専門医等の資格を持つ。医学博士。患者さんの立場に立ち、一人一人に合った治療を提供できるよう心掛けている。プライベートでは1児の母。

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