突然、子どもの身体がガクガク震え、白目をむくことも…。慌てがちな熱性けいれん、保護者がまずとるべき行動は?
- 作成:2022/11/02
AskDoctorsでは、子どもの病気やケアで親が悩みがちなポイントについて、小児科医の森戸やすみ先生に解説していただいています。連載第13回のテーマは「熱性けいれん」。突然のけいれんにも慌てず対処できるように、森戸先生のアドバイスをお届けします。
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けいれんが起きたら、時間を測って
幼い子どもは、熱を出した時にけいれん(ひきつけ)を起こすことがあります。全身あるいは体の一部が意思に反してガクガクと動いたり、脱力したり。意識がなくなるので、目の焦点が合わなくなり、白目をむくこともあります。
生後6カ月~満5歳の乳幼児期に、38度以上の発熱にともなって起きるけいれんを「熱性けいれん」といいます。日本人の場合、8%前後に熱性けいれんが起きるとされています。冬場はインフルエンザやノロウイルスなど、発熱しやすい感染症が流行するシーズンですから、熱性けいれんの知識はぜひ身につけておいてください。
初めてけいれんを起こしたわが子を見た保護者は、慌ててしまいがちです。けいれんしている間は恐ろしく長く感じるもの。でも、通常は1分前後で自然におさまります。まずは落ちついて、時間を測ってください。
けいれんが5分以上続いている、明らかに様子がおかしいという時は、てんかん、髄膜炎、脳炎・脳症など違う病気の可能性もあるので、救急車を呼びましょう。1分前後で終わった時も、日中ならかかりつけの小児科を受診し、夜間や休日なら翌日にかかりましょう。初めての時には原因が何かわかりませんから、受診しておいたほうが安心です。
舌を噛むことはない、口にものを入れるほうが危険
子どもが立っている状態でけいれんを起こしたら、まずは寝かせましょう。仰向けだと食べ物を吐いてしまった時に、のどに詰まることがあるので、横向きに寝かせて衣服を緩めます。
「舌を噛み切らないように割り箸などを噛ませたほうがいいですか?」と聞かれることがありますが、けいれんで舌を噛むことはないので大丈夫。むしろ誤嚥の危険性があるので、口には何も入れないでください。
保護者の多くはけいれんを見た経験がありませんから、そもそもけいれんがどのようなものなのかわからないんですね。たとえば、子どもに熱がある時や眠い時などに、一瞬ビクッと体を震わせるのはけいれんではありませんが、けいれんだと思って心配することも少なくありません。
ですから、子どもがけいれんらしき動きをしていたら、その様子を注意深く観察してください。小児科を受診した時に「動いているのが全身だったか、体の片側だけだったか」「何分くらいで止まったか」などを報告したり、スマートフォンで撮影した動画を見せたりすると、診察の助けになります。
一度きりで終わる子が多い
熱性けいれんが起きた子どもの6~7割は一度だけで終わり、繰り返すことはありません。
一方、熱が出るたびに熱性けいれんを繰り返す子どももいます。初めての熱性けいれんが起きたのが1歳未満だった場合や、両親の片方あるいは両親ともに熱性けいれんを経験している場合は、リスクが上がります。また、熱が出てからけいれんするまでの時間が1時間以内だったり、39度以下でけいれんが起きたりした場合も、繰り返しやすいことがわかっています。
かつては熱性けいれんを起こしたことのある子は、熱が出るたびにけいれん予防の坐薬(ダイアップ[一般名:ジアゼパム])を使っていました。しかし2015年に「熱性けいれん診療ガイドライン」が改訂され、ダイアップを使うのは、けいれんが15分以上続いた時などいくつかのケースに限定されました。
ダイアップは鎮静剤の一種ですから、けいれん予防の効果が高い半面、鎮静・ふらつきなどの副作用が生じることがあります。病気による症状なのか、薬の副作用なのかがわかりにくくなる懸念もあるため、投与の対象が限定的になったのです。
すでに何回かけいれんを起こしていて、熱性けいれんだと診断されている場合は、緊急で受診する必要はありません。ただ保護者にしてみれば、今回も熱性けいれんなのかどうか不安でしょう。小児科を受診すれば記録が残り、必要があれば薬を出してもらえますから、通常診療の時間帯に受診するといいでしょう。
熱性けいれんではない場合も
熱性けいれんは乳幼児の病気なので、小学校に上がる頃には起こさなくなる場合が大半です。5~6歳になって初発ということもあまりありません。そのくらいの年齢になっても高熱のたびにけいれんを起こすとか、熱がなくてもけいれんを起こす時は、てんかんなど別の病気の可能性を考える必要があります。
また、乳幼児期には「胃腸炎関連けいれん」と言って、嘔吐や下痢で電解質のバランスが崩れてけいれんを起こすこともあります。短時間に繰り返し起こりますが、胃腸炎が治癒すればけいれんが現れることもなくなり、発達に影響を及ぼすこともありません。
「憤怒けいれん」も乳幼児期に見られるけいれんの一つです。「泣き入りひきつけ」とも言われ、大泣きしたあとに、息を吐いた状態で呼吸が停止して、全身の脱力やけいれんを起こしたりします。顔色が悪くなり、意識を失ったりすることもあり、保護者は大変驚きます。でも、発作の持続時間は1分以内と短く、その後は呼吸も顔色も回復します。熱性けいれんと同じように5歳頃には自然に起こさなくなります。
いざという時に慌てないように、けいれんの種類を覚えておくと安心ですね。
1971年、東京生まれ。小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内のどうかん山こどもクリニックに勤務。『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)、『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)など著書多数。二児の母。
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