手足口病の原因、感染経路、潜伏期間、うつる期間 母乳は危険?
- 作成:2015/09/28
手足口病は、ある種のウイルスが原因となって発症する病気で、主な感染経路は3つあります。ドアノブやおもちゃを通じて、感染拡大することもあります。潜伏期間や他人にうつる可能性のある期間、母乳でうつる可能性があるかを含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
手足口病の原因はどんなウイルス?感染力は強い?弱い?
手足口病の感染経路はどんなもの?
保育園や幼稚園で感染しやすい理由
授乳でうつる?
手足口病のウイルスの潜伏期間はどれくらい?
手足口病がうつる期間はどれくらい?潜伏期間の間もうつる?
手足口病の原因はどんなウイルス?感染力は強い?弱い?
手足口病の原因となるウイルスは「コクサッキーウイルスA16型(CA16)」と「エンテロウイルス71型(EV71)」と呼ばれるウイルスが主になります。他にも、様々な種類のウィルスが手足口病を起こす可能性がありますが、夏に流行する手足口病の大半がCA16とEV71の2つのウイルス型です。どちらも感染力が強く、抵抗力のある大人でも免疫がついていないと容易に感染してしまいます。特にEV71型は重症化することが多いので危険です。
ただ、コクサッキーウイルスA6型のように、今まで日本で流行の少なかったウイルスが大流行する危険性も否定できず、この2つのウイルスだけを警戒していれば良いというわけではありません。感染力が強く危険なウイルスではありますが、感染しても重篤な症状を引き起こすケースは少なく、全く症状を引き起こさない「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」ですむこともあります。過度に恐れる必要はありません。
手足口病の感染経路はどんなもの?
手足口病の感染経路は以下の3つです。
接触感染→ウィルスがついているものに触れることによる感染。水ぶくれの場合、破れた水ぶくれの中にいたウイルスがたくさんの人がさわる場所に付着し、他の人がそれをさわってウイルスが体に入ります。例えば、水疱がつぶれた手で、ドアノブを触ったとします。水疱の中にはウイルスがいますので、ウイルスがドアノブにつきます。それを他の人が触り、体内に入り感染するという経路も、接触感染になります。血液や食器、おもちゃ、スイッチなどを介した感染も考えられます。
飛沫感染→咳やくしゃみなどで唾が飛ぶことによる感染。鼻水、痰、嘔吐物の中にはウィルスが含まれているため、これらを吸引、摂取してしまうことで感染する可能性があります。一般的には1メートル以内にいると飛沫感染するといわれています。
糞口感染(ふんこうかんせん)→接触感染の一種ですが、便などに触れて便の中に含まれていたウイルスが手に付着して感染します。トイレに行った後、手を洗わなかったり、オムツを変えた後の手洗いが十分でなかったりするとこの感染パターンで感染する可能性があります。
ウイルスが拡散しても、口や傷口から体内に入らない限り感染せず、「空気感染(空気中をウイルスが漂い、1メートル以上離れた方に感染すること)」をすることもないため、基本的には感染者に近づかない事が大切でしょう。また、どうしても近づかなければいけない場合には、感染者の唾液・鼻水・便・水疱内容物(水ぶくれの中身)にはウイルスが多く含まれているのでこれらに触れないように、マスク・手袋などを装着する必要があります。
保育園や幼稚園で感染しやすい理由
保育園や幼稚園では、園児が顔を近づけて内緒話をする姿もよくみかけますので、せきやくしゃみの症状がなくても、飛沫感染する可能性があります。また、排泄の処理が適切にされなかったなどによる糞口感染、同じおもちゃを使ったりすることなどで接触感染も起こりやすいです。
授乳でうつる?
子どもではなくお母さんが手足口病にかかった場合、「授乳することによって子どもに手足口病がうつるのでは」と不安に感じるかもしれません。手足口病では、「感染者の体液にウイルスが含まれているか」ということが問題になるのですが、母乳は体内で不要物を除去するフィルタリングがかけられており、手足口病のウイルスは含まれていませんので、母乳を通じて感染することはありません。そのため、母親がウイルスに感染したからといって授乳を控える必要はないでしょう。
むしろ、鼻水やくしゃみのしぶきで感染する(飛沫感染)ことが考えられますので、お母さんが手足口病にかかっている時は、治るまで授乳を控えるのも1つの考え方です。授乳する場合は、マスクを着けたり、できるだけしゃべらないようにしたり、赤ちゃんの世話は手を洗ってから行うなどの注意をすることが大切です。
また、手足口病の発疹が、乳房や乳首、胸まわりにある場合は、発疹からしみだした体液によって子どもにうつる(接触感染)リスクがあるため、授乳は控えましょう。手足口病が完治したのち1カ月程度経過してから授乳を再開するのが良いでしょう。
手足口病のウイルスの潜伏期間はどれくらい?
手足口病のウイルスの潜伏期間(菌やウイルスが体内に入り、症状が出るまでの期間)は通常3日から6日です。潜伏期間が過ぎた後に、名前の通り手・足・口の周辺に小さな赤い発疹と水ぶくれができるようになります。発熱や口内炎の症状が先に出るケースもあるので、一様ではありません。また、潜伏期間には多少のズレがあります。また、エンテロウイルスは、主に腸の中で増えますが、ウイルスが、腸の中だけでとどまった場合は、「不顕性感染」といって、ウイルスに感染はしていても症状が出ないこともあります。「潜伏期間を過ぎて症状がないから感染していないと判断する」のは危険です。感染したリスクがある場合には、他の人に感染させないように注意しましょう。
手足口病がうつる期間はどれくらい?潜伏期間の間もうつる?
手足口病が他人に感染する可能性がある期間は、最大で1カ月みた方が良いでしょう。具体的には、唾液からは通常1週間から3週間、便からは症状がなくなった後でも2週間から4週間ウイルスが排出されます。糞便の取り扱いに気をつけていれば過度に感染に気を使う必要はありません。
一方、潜伏期間の間は体内でウイルスが増えている最中ですので、体外に出て行くウイルスはほとんどなく、うつる心配はないでしょう。とはいえ、症状がない間は、「潜伏期間」なのか「症状の出ない感染」なのかは、判断できません。可能性がある限り、注意をするにこしたことはありません。
しかし、潜伏期間を過ぎて症状が現れると、症状が収まってウイルスが血液から完全に除去されるまでの2週間程度は唾液・鼻水・水ぶくれなどにウイルスが含まれているため、比較的高い感染リスクがあり、一番危険な時期といえます。つまり、手足口病に感染したら発症してから2週間は感染を広げないように最大限の注意を払って安静にし、それを過ぎたらオムツの交換など糞便の取り扱いだけに注意していれば良いという理解で問題ないといえます。発症から一カ月経ったら、普段通りの生活に戻って大丈夫です。
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手足口病の原因や感染経路についてご紹介しました。子供やご自身が手足口病のような症状になって不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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