妊婦の手足口病の胎児への影響、治療、予防 薬や重症化に注意?
- 作成:2015/09/28
大人もまれに手足口病になりますので、妊婦がなることもあります。胎児への影響があるのかや治療の注意点、予防方法を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
妊婦も手足口病になる
手足口病は感染者の90%以上が5歳以下なので、子供の病気と考えられがちですが大人もかかることがあります。大人には妊婦も含まれます。また、子供に比べて大人の方が重症化しやすいと言われており、感染した30%の大人は高熱を出すと言われています。
手足口病は「コクサッキーウイルス」や「エンテロウイルス」が原因で夏に発症し、潜伏期間は3日間から7日間で発熱や鼻水が出て、手足に2ミリから3ミリ程度の小さい発疹ができる病気です。
妊婦は手足口病になりやすい?
糖尿病や腎臓病、血液疾患などで免疫力が落ちている患者さん、高齢者や妊婦さんも感染すると重症化する可能性があります。妊娠中は体の免疫力が落ちます。理由としては、「胎児を異物として攻撃しないため」と考えられています。胎児を守るためにはとても大切な体の反応ですが、手足口病を含めた感染症に対しては重症化する可能性があり危険なため予防策をとる必要があります。
胎児への影響は?否定できないリスク
妊娠中に手足口病に感染して心配になることは、やはり胎児への影響だと思います。少々話が複雑なので、結論から書きますが、現時点では、手足口病のウイルスの胎児への影響は、科学的に、肯定も否定もされていません。
具体的に説明します。英国とオーストラリアでは、妊娠3カ月未満の妊婦の高熱による流産リスク、出産間近での胎児への感染による出生児の障害、の2ケースが報告されています。また、「手足口病の原因となるエンテロウイルスが胎児奇形を引き起こした」と言う報告や早産の可能性を指摘する意見もあります。
ただ、過度に心配する必要がある状況ではありません。理由としては、胎児への影響の報告の絶対数が少なく、「極めてまれ」といえるレベルである点です。そのため、「臨床研究として数が不十分である」、つまり「手足口病のウイルスが原因となって、胎児に影響するという結果が出たと、科学的に言える状況でない」という評価が一般的だからです。感染しても異常は起こらなかったと言う報告も出ています。
しかし、まだ、「影響しない」「問題がない」と、科学的に否定ができる状況でもないのも事実です。影響が否定も肯定もされない状況ですが、少しでも胎児への影響の可能性があるのであれば手足口病にかからないにこしたことはないです。不安であれば婦人科を受診して、考え方を聞いてみるのもよいでしょう。
もし手足口病になってしまったら?治療法は?
手足口病に対する特効薬やワクチンは現在のところないため、対症療法になります。対症療法とは、発熱に対しては解熱薬、頭痛に対しては鎮痛薬、鼻水に対しては鼻水を止める薬、手足の発疹が痒ければかゆみ止めを内服する治療法のことです。
高熱は1日から3日で治まることが多いですが、発汗や摂食不良で脱水になってしまうこともあるので、その場合には点滴をします。口の中に口内炎ができ、強い痛みを伴う時もあります。その時にはイソジンでよくうがいをしたり、口内炎に塗る薬を処方されることもあります。
7日から10日間で改善しますし、周囲へ感染を広げる可能性があるので発疹が出ている間はできればなるべく自宅で安静にした方が良いです。
妊婦は、薬には要注意
また、妊婦の場合、使えない薬もありますので、自己判断による、市販の解熱剤や鎮痛剤の服用は絶対にせず、医療機関を受診するようにしましょう。他人にうつる病気ですので、感染拡大を防ぐためにも同居家族の協力が必要です。妊娠中は、栄養をとり、ゆっくり休み、早期回復を心がけましょう。
妊婦が手足口病にならないための予防策
手足口病の感染経路は、飛沫感染(感染している人の咳や鼻水、くしゃみに含まれているウイルスを吸い込んでしまうことなどによる感染)、接触感染(ドアノブや共有のタオルについているウイルスが、手を介して口や鼻に入ってしまったりする感染)、糞口感染(感染している子供のおむつを交換したりした後に、手指の洗浄が十分でなくて感染してしまうことなどによる感染)です。
手足口病に感染し発疹が出ている間は自宅安静になることも多いですが、発疹が治まっても口からは1週間から2週間、便からは3週間から5週間は原因となるウイルスが排出されていると言われています。そのため、乳幼児が集まる保育園や幼稚園では感染が広まりやすく、小さい子供がいる家庭では大人にも感染しやすいと言われています。2人目のお子さんを妊娠している場合、1人目のお子さんが原因で、感染することがありえます。
妊婦さんは、日頃から手洗い、うがいを丁寧に実施して、ウイルスを体の中に入れないように心がけて感染を予防するようにしましょう。また、マスクによって鼻や口からウイルスを吸い込むことを予防できます。
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今回は妊婦さんが手足口病にかかってしまった場合の症状や予防策について解説しました。お腹の赤ちゃんへの影響が不安な方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?
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