膀胱がんの治療、転移、再発可能性 ステージで手術が違う?
- 作成:2015/12/16
膀胱がんは、がんが表面にとどまっている場合は、表面を切るだけで済みますが、膀胱の壁の奥まで癌が広がっている場合は、膀胱を摘出することが基本となります。手術以外の治療や転移、再発可能性も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
膀胱がんの概要
膀胱がんは50歳以上の比較的高齢の男性に発症しやすい癌で、喫煙がリスクになると言われています。その他にはアニリン、ナフチルアミン、ベンジンなどの化学物質に継続的に接していると膀胱がんを発症しやすいことがわかっており、これを職業性の膀胱がんとも呼びます。
膀胱がんには、膀胱の壁から内部まで浸透していない表在性のものと、浸透している「浸潤性」と呼ばれるものがあります。「無症候性血尿」と呼ばれる発熱や痛みなどを伴わない血液が混じった尿が出る症状が出たり、膀胱炎のような頻尿、排尿痛、残尿感などを自覚することもあります。血液が混ざった尿は自分の目で見て確認できることもありますが、自分では気づかず健康診断の時の尿検査で指摘されることもあります。
癌が大きくなり尿管をふさいでしまうと、腎臓から膀胱に尿が流れづらくなり、腎臓がはれてしまうこともあります。このような状態になると、発熱や腰痛の症状が出ることがあります。診断は尿道からカメラを入れて直接膀胱の中を見ることができる膀胱鏡や超音波検査、CT検査、MRI検査などを行い、膀胱癌の大きさや範囲、転移の有無などを確認します。腫瘍自体を直接採取し、顕微鏡で悪性(癌)かどうかを診断します。
ステージで異なる手術治療
膀胱がんの手術方法には、ステージの観点から、大きく分けて2つあります。ステージ0で、膀胱の壁への浸透や他の部位への転移がない転移がない表面にとどまっているがん(表在性のがん)の場合は、「経尿道的膀胱腫瘍切除術」という手術を実施します。腰椎部分に麻酔をかけ、意識がある状態で、尿道から直接膀胱内を見られる膀胱鏡を挿入し、癌を切除します。
膀胱の壁に浸透した「浸潤がん」の場合(ステージI期以降)に対しては、再発や転移の危険性をなくすため、全身麻酔を行い、眠っている状態で膀胱摘出術が基本となります。転移している可能性があるため、膀胱と骨盤内のリンパ節も同時に切除します。また男性では前立腺と精嚢(せいのう)、女性では子宮も同時に摘出します。尿道を摘出する場合もあります。膀胱を全て摘出してしまうので、尿を溜めることができなくなるため「尿路変向術(変更術)」といって、尿管を腸に植え込み、皮膚や尿道に出す手術も行います。
手術以外の治療はどんなもの?
膀胱がんでは、手術以外にも、以下のような治療法があります。
内視鏡治療: ステージ0期の早期がんでは、手術ではなく、内視鏡治療が可能になっています。尿道口から膀胱内まで内視鏡を挿入し、がんの病巣を電気メスで焼き切って切除します。手術は1時間程度で済みます。その後、BCG(ワクチン)あるいは抗がん剤を膀胱内に注入することもあります。
放射線治療: ステージII期以降の浸潤がんの場合に実施されます。
化学療法(抗がん剤): 膀胱に直接抗がん剤を注入するか血管へ投与する方法にわかれます。単独で使われるよりも、手術後に併用して実施されることが多く、がんの治療効果をさらに高める役割をもっています。
BCGあるいは抗がん剤の膀胱内注入療法: ステージ0期が対象です。膀胱内にBCG(ワクチン)や抗がん剤を注入します。週に一度の注入による外来の治療です。これを数回繰り返します。
膀胱がんの遠隔転移とは?
ステージI期以降の浸潤性の膀胱がんは、膀胱の壁に浸透しているだけでなく、リンパ節や肺や肝臓などの他臓器に転移している可能性があります。膀胱以外の臓器に転移していることを「遠隔転移」とも呼びます。転移の有無は、CTやMRIなどの全身の画像検査を行い確認します。膀胱全摘術の後に転移を予防するため、抗癌剤治療を行うこともあります。また、膀胱がんの発見時にすでに多臓器に転移している場合は、手術をしても負担が大きく改善が見込めないため、手術をしないで、化学療法や放射線療法で治療を行うこともあります。
膀胱がんの再発可能性
ステージ0の表在性の膀胱がんは、膀胱鏡を使って切除することができますが、膀胱がある限り何度でも再発する可能性があります。また、表在性の膀胱がんは多く発生する傾向にあり、切除してもすぐに新しい癌が発生することもあります。再発を繰り返す表在性の膀胱癌の15%が浸潤性の膀胱がんに進行し、結果的に膀胱を全て摘出する手術となる可能性もあるため。定期的に通院し、再発の有無を検査する必要があります。具体的には膀胱鏡(内視鏡で膀胱の中を見る検査)、尿検査(癌の細胞がないかどうか)を行います。
膀胱がんついて治療の概要をご紹介しました。もしかして膀胱がんかもしれないと不安に感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?
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