胃がんの転移 リンパ節、骨、肺、卵巣の可能性?腹膜播種とは?転移いしやすい場所はある?
- 作成:2016/07/07
胃がんは、転移するパターンが少なくないがんといえます。胃がんが胃の外側(食べ物と接しない面)までいくとリンパ節に転移しやすくなりますし、肺や骨に転移することがあります。「腹膜播種」と呼ばれるものも、転移の1つの形式です。胃がんの転移について、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
胃がんの転移概要 転移しやすい場所がある?
胃がんの転移 リンパ節転移とは?
胃がんの転移 腹膜転移(腹膜播種)とは?
胃がんの転移 骨転移とは?
胃がんの転移 肺転移とは?
胃がんの転移 卵巣転移とは?
胃がんの転移概要 転移しやすい場所がある?
胃がんの転移様式には、主に以下の3つの方法があります。
腹膜転移(腹膜播種)→がん細胞が胃の壁を破ってお腹の中にばら撒かれた状態
血行性転移→がん細胞が血液の流れに乗って肝臓や肺、骨へ達してそこでがんが大きくなるもの
リンパ行性転移→リンパ液の流れに乗ってリンパ節に転移するもの
このように胃がんは様々な転移様式を取るため、治療前には胃以外に病変や転移がないか全身を調べることが重要です。また、治療後も最低5年間は再発がないか、採血やCT、内視鏡検査で注意深く経過を追っていく必要があります。
胃がんの転移 リンパ節転移とは?
リンパ節転移は、名前の通り、リンパ液の流れに乗ってリンパ節に転移を起こす転移様式です。比較的早期の胃がんでもリンパ節転移を起こしていることがあり、主にCT検査を用いて検索していきます。正常なリンパ節は小豆くらいの大きさですが、転移している場合には通常よりも大きく、丸みを帯びていることが多いです。リンパ節転移を起こしていても、胃の領域に限定されている場合には、手術で取り除くことが可能となります。一方で、胃の領域外のリンパ節に転移するものとしては、左鎖骨上窩(さこつじょうか)のリンパ節に転移する「Virchow転移(ウィルヒョウ転移)」が代表的です。「鎖骨上窩」とは鎖骨の上のくぼみのことで、通常は触っても触れませんが、Virchow転移があると触れて分かるようになります。この場合には、Virchow転移以外の遠隔転移を起こしていることも多く、手術による摘出は困難となり、化学療法が選択されることが一般的となります。
胃がんの転移 腹膜転移(腹膜播種)とは?
「腹膜転移(腹膜播種、ふくまくはしゅ)」は胃がんの転移様式の1つであり、がん細胞が胃の壁を破って壁の外にこぼれ落ち、腹膜に付着して、がん細胞が増える転移になります。腹膜播種が起きると、ステージ分類としては、「ステージIV」(もっとも進展した形)に相当します。腹膜にがん細胞が付着するとあちらこちらに小さな転移巣を作るため、手術によって取り除くことは困難であり、抗がん剤による治療が基本となります。腹膜播種には内服や点滴では、効果的に薬剤を届けにくいため、まだ十分に効果のある治療法は確立されていません。ただ、最近では高度先進医療として、直接腹腔内に抗がん剤である「パクリタキセル」という病気を投与する試みがなされています。
また、腹膜播種は胃がんの転移の中でも頻度が高く、術後の再発する形としても最も頻度が高いことも事実です。
腹膜播種ではお腹の中に水の溜まった「腹水」という状態が起きることが多くなります。腹水は炎症(癌性腹膜炎)が生じることで起こります。症状としては、溜まった腹水によって腹部膨満感や、周囲への圧迫で呼吸困難や腸閉塞、尿管の閉塞などをきたすことがあります。
また、腹膜播種では「Schnitzler転移(シュニッツラー転移)」という転移様式をとることがあります。Schnitzler転移は、腹腔内で一番低い位置にある場所への転移が起こるものです。女性では子宮と直腸の間にある「ダグラス窩」、男性では膀胱と直腸の間にある「直腸膀胱窩」にがん細胞が付着して発育するものになります。
胃がんの転移 骨転移とは?
骨転移を起こすがんとしては乳がん、肺がん、前立腺がんなどが有名ですが、消化器系のがんでも骨転移を起こすことがあります。胃がんでも骨転移が起きることがあります。胃がんを含めた消化器系がんの骨転移の特徴として乳がんや前立腺がんと比較して予後(治療の見通し)が悪いという点が挙げられます。胃がんの骨転移の場合、1年生存率(治療開始から1年後の生存率)は10%以下であると言われています。
骨転移は骨が壊れていく「溶骨性」と、粗い骨が作られていく「造骨性」の2種類があります。一般的に消化器系のがんでは溶骨性の骨転移が多いとされています。骨転移では、骨がもろく壊れやすくなるため、骨折や痛み、脊椎の圧迫骨折による下肢のしびれなどが主な症状となります。
診断には一般的に骨シンチ(放射性の医薬品を投与して骨の状態をみる検査)、CT、MRIが用いられてきましたが、近年では「PET-CT」(放射性物質を使った医薬品を投与して特殊なカメラで骨の状態をみるもの)と呼ばれる方法が、普及してきており、全身の検索がより簡便に行われるようになっています。治療は化学療法や放射線治療が主となりますが、痛みが強いため、早期からの疼痛(とうつう、痛み)コントロールが患者さんの生活の質(QOL)を確保するためにも重要となります。
胃がんの転移 肺転移とは?
肺は、呼吸によって酸素を取り入れ、血液中に溶け込んだ酸素は全身に運搬されていきます。そのため、肺は大量に血液が流れ込むフィルターのような側面を持っています。その結果、胃がんを始め、乳がん、大腸がんなどの血行性転移が起きやすい臓器にもなります。胃がんによる肺転移では、比較的肺の付け根のほうにできることが多いため、症状としては太い気管支に浸潤したり、がんが肺を圧迫することで肺炎や呼吸困難、血痰(血の混じった痰)が見られることがあります。多くの場合は、胸部X線写真や胸部CTで発見され、転移性肺がんでは、複数の多発した影が見られます。肺転移が認めらえた場合には、画像上見えている以外にも肺の中に転移があることや、他の臓器に転移している可能性もあるため、基本的には抗がん剤など化学療法が主体となります。もちろん転移している数が少なかったり、他の臓器に転移が無い場合などは、外科的な切除が選択されることもあります。
胃がんの転移 卵巣転移とは?
卵巣は他の臓器からの転移を生じやすい臓器の1つであり、胃と同じ腹腔内にあるため、胃がんの転移が非常に多いです。日本における転移性卵巣腫瘍の3分の1は胃がんの転移とされています。その他の原因となるがんとしては、反対側の卵巣がんや、大腸がん、膵臓がん、乳がんなどが挙げられます。
胃がんの卵巣への転移は通常、左右両方の卵巣に生じることが多く、転移した腫瘍が大きくなると、腹水(お腹に水が溜まった状態)の状態を伴います。胃がんの卵巣転移は、両側ともに体表から触れるてわかることもあり、「Krukenberg腫瘍(クルーケンベルグ腫瘍)」と呼ばれています。組織学的には「印環(いんかん)細胞癌」と呼ばれるタイプであることが多く、腹痛や腹部膨満感などの症状が見られます。
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胃がんについての転移についてご紹介しました。胃の痛みに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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