卵巣がんは転移、再発しやすい?進行速度は早い?予後は悪い?
- 作成:2016/05/12
卵巣がん(以下、卵巣癌)は、治療の見通しが良くない癌の1つで、発見が遅れやすい傾向があります。転移についても、近くの臓器だけでなく、体内の液体を通じて、体内に広がる可能性があります。再発可能性や進行速度の問題も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
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卵巣がんの進行速度は早い?予後は悪い?
卵巣がんは転移する?転移しやすい場所がある?
卵巣癌は完治する?再発しやすい?
卵巣がんの進行速度は早い?予後は悪い?
現在日本において卵巣癌を発症する患者数は増加傾向であり、卵巣癌による死亡者数も増加傾向にあります。原因として、欧米化した生活習慣の変化や、卵巣癌の症状が進行してからでないと出ないこと、確立した検診法がないことなどが挙げられます。そのため、卵巣癌は多くのケースで進行癌であるステージIII以上で見つかることが多いというのが現状です。
卵巣癌の進行速度は、卵巣癌の種類(組織型)によって異なります。腫瘍マーカー等もある程度は組織型の判断材料となりますが、確定診断(間違いないという診断)をするためには、実際に手術を行って病理検査で調べる必要があります。
卵巣癌のおよそ45%程度を占める漿液性(しょうえきせい)腺癌は、卵巣癌の中でも進行の速い種類になります。早い段階でお腹の中に癌細胞が飛んだり(「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」と言います)、リンパ節に転移するため、予後の悪い癌です。ただし、抗癌剤が効きやすいという特徴もあるため、化学療法と手術を組み合わせて治療を考えていきます。
一方、日本で増加している明細胞腺癌はおよそ25%を占め、60歳以下の卵巣癌では最も発症頻度が高いです。抗癌剤がほとんど効かないため、手術で完全に腫瘍を取り除く必要があります。明細胞腺癌はI期(癌が卵巣のみにとどまっている状態)発見されることが多いですが、取り残しやリンパ節転移があると予後は悪くなってしまいます。
15%程度を占める粘液性腺癌は進行が遅く、巨大化するものの、転移も起こしにくいため予後は比較的良好です。ただし、見つかった時点で進行していた場合は、抗癌剤も効きにくいため、予後は悪くなってしまいます。類内膜腺癌の頻度は20%ほどですが、進行が遅く、リンパ節転移も少ない癌です。また、抗癌剤も有効であり、全体の3分の2がI期で見つかるため、卵巣癌の中では一番予後が良好です。
以上のように卵巣癌と言っても、組織型の違いによって抗癌剤の効きや進行の速さ、転移しやすさなどがかなり異なるため、適切な診断と治療法の選択が重要であると言えます。
卵巣がんは転移する?転移しやすい場所がある?
卵巣癌は、婦人科悪性腫瘍の中で最も致死率の高い疾患です。理由として、多くの方で、発見時より腹腔内(お腹の中)に癌細胞がまき散らされた状態である「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」という転移を起こしてしまうからです。腹膜播種は転移の1つの形態で、この状態ではじめて自覚症状として現れる方がとても多いことが特徴です。具体的には、癌細胞が、お腹の中にたまった「腹水」を漂って横隔膜の下や、胃の前面を垂れ下がるように覆っている「大網(たいもう)」という部分に、癌細胞が付着して播種(転移)を起こしてしまいます。播種した癌細胞が肝臓や脾臓(ひぞう)に入り込んでいくと「肝転移」や「脾転移」となります。また、この場合ステージ分類上も腹膜播種はステージIIIですが、肝転移や脾転移があるとより重症なステージIVとなります。
腹膜播種のほかの転移の形態として、一般的には静脈の流れに乗って遠くの臓器に転移する「血行性転移」や、リンパ液の流れに乗って転移する「リンパ行性転移」があります。卵巣癌や子宮頸癌などの女性特有の悪性腫瘍ではリンパ行性転移が多く、血行性転移が比較的少ない癌です。そもそも、リンパ液は血管と同じように体中を張り巡っているリンパ管を流れており、リンパ管の中にはリンパ節と呼ばれる細菌などが血液中に流れ込まないようにし、キャッチしている場所があります。癌細胞もリンパ節でキャッチされてしまい、そこで増殖してリンパ節転移を起こします。特に卵巣癌では、「骨盤内リンパ節」と「大動脈周囲リンパ節」に転移が多いとされています。そのため、卵巣癌の標準的な手術では、卵巣だけでなく転移の可能性の高い骨盤内リンパ節と大動脈周囲リンパ節も取り除くことが基本となっています。
腹膜播種やリンパ行性転移のほかには、卵巣癌が増殖して直接卵巣と近い位置関係にある子宮や膀胱、直腸、S状結腸に浸みこんで、転移する場合があります。
卵巣癌は完治する?再発しやすい?
卵巣癌は自覚症状に乏しいため発見が遅れ、卵巣癌と診断されるときにはおよそ半数がステージIII期以降であるのが現状です。5年生存率(治療開始から5年後の生存率)に関してもI期で90%、II期で70%、III期で35%、IV期で20%とされており、進行とともに治癒の見込みは不良になります。
また、卵巣癌は再発率の高い癌であり、卵巣癌患者のおよそ6割は治療によって一度治りますが、そのうち半数以上のケースで将来的に再発が起こります。再発の時期に関しては、2年以内でおよそ55%、5年以内では70%以上が再発すると言われています。再発後の生存期間の中央値はおよそ2年、つまり再発してから2年後には半数がなくなるとされている上、再発後は完治が難しくなるため、治療の目的も完治から生存期間の延長と症状の緩和に変わっていくのが実情です。
再発した癌に対しては、抗癌剤を使った化学療法が主な治療法となります。再発癌に対する抗癌剤の効き目は、初回に化学療法を終えてから再発までの期間と相関すると報告されています。つまり、初回の化学療法を行ってから再発までの期間が長かった人のほうが、再発した癌に対しても抗癌剤の効きが良いと言うことになっています。
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