卵巣がんの生理、出産への影響 更年期症状も?卵巣温存できる?
- 作成:2016/05/12
卵巣がん(以下、卵巣癌)は、治療の方法によって、治療後、生理が止まることもあれば、妊娠可能性を残すこともできます。ただ、妊娠できる可能性を残すのは、限られたケースといえます。どのようなケースが考えられるのかや更年期の症状が出る場合を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
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卵巣がんの生理への影響
卵巣がんの妊娠、出産への影響
卵巣がんの生理への影響
卵巣には卵子を蓄える場所であり、卵胞が成熟すると排卵という現象によって卵子を送り出す機能と、女性ホルモンを分泌するという機能があります。卵巣癌の治療では両側の卵巣と卵管、さらに子宮を摘出する手術が基本となるため、卵巣の機能は永久的に失われることになります。
閉経前に両側付属器(卵巣、卵管)摘出術を行うと、卵巣から分泌される「エストロゲン」と呼ばれるホルモンの量が突然に低下してしまいます。その結果、月経(生理)は来なくなり、更年期を迎えてさまざまな症状が現れるのと同様に、更年期障害の症状が出現してきます。これを特に「卵巣欠落症状(らんそうけつらくしょうじょう)」と言います。主な症状としては、頭重感(頭が重い)、肩こり、汗をかきやすい、気分が滅入る、イライラするなどです。
また、閉経だけでなく、卵巣摘出から数年から10年といった長期的な単位でも、腟の萎縮による性交痛、尿失禁、肌荒れ、肥満などが現れることがあります。女性ホルモンであるエストロゲンには、骨に働いて骨を強く保ったり、皮膚に働いて肌の張りを保つ、コレステロールを低下させるなど、生殖器以外にも全身に対してさまざまな働きを持っています。そのため、卵巣を摘出した場合、自然な閉経による更年期と同様に、脂質異常症(高脂血症)や動脈硬化といった循環器の病気、骨がもろくなるために骨折を起こしやすくなる骨粗しょう症などの症状も見られることがあります。これらの症状の予防としては、エストロゲンを補充するホルモン補充療法を行います。ホルモン補充療法は更年期障害や卵巣欠落症状を緩和し、骨折の予防や脂質代謝の改善などの効果があります。
ただし、月経が停止してしまったり、妊娠ができなくなってしまうなどの症状は両側の付属器(卵巣、卵管)を摘出した場合であり、早期の卵巣癌に対して強い妊娠の希望などによって片側の付属器切除を行った場合には、月経も来ますし、自然な妊娠も可能となります。
卵巣がんの妊娠、出産への影響
卵巣癌患者の最も基本的な治療法は、手術によって両方の卵巣と卵管、子宮を摘出することです。しかし、この手術では卵巣も子宮も残らないため、妊娠をすることはできません。ただし、癌が片方の卵巣にとどまっている状態、ステージでいうと「Ia期」であり、癌の組織型が比較的正常の細胞に近い「高分化型」の場合に限り、強く妊娠を希望する患者さんに対しては、癌のある側の卵巣と卵管のみ摘出することが可能です。この手術では癌の無いほうの卵巣と卵管が温存されるため、妊娠の可能性を残すことができます。これを「妊孕性(にんようせい)温存」と言います。ただし、妊孕性治療法では、癌を取り除く際の徹底具合が、通常の手術と比べて低く、再発の可能性があること等を十分に理解しておくことも重要です。
したがって、手術において片方の卵巣と卵管を残せるかどうかは、癌の広がり(ステージ分類)と癌の組織型が重要となります。また、お腹の中に腹水が溜まっている場合には、腹水に含まれる細胞も検査します。腹水中に癌細胞が含まれている場合、すでにお腹の中に癌細胞がばら撒かれている状態ということになり、妊孕性(妊娠の可能性)を温存できるかどうかは難しい判断となります。
卵巣や子宮は女性のシンボルでもあり、卵巣癌によって妊娠できなくなるということは、女性にとってとても辛いことです。早期の卵巣癌であれば、大きく子宮や卵巣を摘出する手術と比較して、片方の卵巣を温存しても再発の確率に大きな差はないとの報告もあります。逆に標準的なすべて摘出してしまう手術でも再発することはあります。妊娠の可能性を残すためには、患者さん自身が卵巣癌について正しい知識を持って、十分に婦人科医師と相談して納得のできる治療を行っていくことが大切となります。
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卵巣癌の出産や生理への影響などについてご紹介しました。親族や友人が卵巣癌になるなどして、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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