卵巣がんの検診、マーカーでの発見可能性 エコー利用?基準値は?
- 作成:2016/06/07
卵巣がん(卵巣癌)は、がんの中でも発見の難しいがんですが、検診とマーカーを組み合わせて、発見できる可能性があります。使うマーカーと考え方や基準値を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
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卵巣がんは検診でみつかる?どんな検診?エコーでわかる?
卵巣がんは腫瘍マーカーでみつかる?基準値はある?
卵巣がんは検診でみつかる?エコーでわかる?
卵巣癌は婦人科悪性腫瘍の中でも死亡率が高く、「サイレントキラー(無言の殺人者)」と称されるほど自覚症状にも乏しい癌です。そのため、発見が遅れて症状が現れてから検査したら、すでに進行していたというケースも多々あります。そこで重要となるのが、検診による癌の早期発見です。
検診には、対策型検診(住民検診型)と任意型検診(人間ドック型)の2つがあります。対策型は公共的な医療サービスであり、住民全体の死亡率を下げることが目的となります。任意型は個人の死亡リスクを下げることが目的であり、自己負担による検査が基本となります。卵巣は体内でも子宮の付近にあり、症状も乏しいため、子宮癌のように直接細胞を採取して検査することはできず、なかなか発見することが難しい臓器です。そのため、現在のところ、住民全体を対象に検査を実施して死亡率を大きく改善できる検査方法は確立されておらず、それぞれの医療機関で行われている卵巣癌検診は後者の任意型検診となっています。
現在考えられている卵巣癌検診の方法は、「内診+経腟超音波検査(エコー)+腫瘍マーカー(CA125など)」を組み合わせる方法です。2000年に青森県・弘前から報告された超音波検診や、2008年に静岡から報告された「超音波検診(エコー)+腫瘍マーカー」、2009年にイギリスで報告された「超音波検診(エコー)±腫瘍マーカー」の方法では、早期癌の発生を見つける確率が高くなり、死亡率を改善する可能性が指摘されました。
現在のところでは、卵巣癌の早期発見には内診と合わせて、腟から超音波(エコー)の器具を挿入して子宮や卵巣を観察する検査と、血液検査によって腫瘍マーカーの数値が上昇していないかを調べる検査を組み合わせて行う方法が有効と言えます。
卵巣がんは腫瘍マーカーでみつかる?基準値はある?
腫瘍マーカーとは、血液検査で測定できる癌細胞から多く産生される蛋白質(たんぱくしつ)のことです。癌の有無や種類、病気の進行状態を把握する上でとても有益な指標になります。ただし、腫瘍マーカーは異常値を示したから必ず癌だと言うわけではなく、正常な細胞でも産生されるため「偽陽性(値が異常だが、癌ではないこと)」を示す場合もあります。また、癌がある程度大きくなって進行しないと高い値を示さないこともあるため、必ずしも癌の早期発見や確定診断につながるともいえないので注意が必要です。一方、腫瘍マーカーは、良性あるいは悪性なのかの判断や、治療経過中に繰り返し測定することで、治療効果の判定や再発の早期発見に有用であると言えます。
卵巣癌に関する主な腫瘍マーカーとしては、「CA125」「CA19-9」「CEA」などがあります。漿液性腺癌、明細胞腺癌、類内膜腺癌でCA125、粘液性腺癌でCEAやCA19-9が高値を示します。
それぞれの腫瘍マーカーの基準値(正常値)は検査キットの種類にもよりますが、CA125では35U/ml以下です。CA125は卵巣癌での特異性が高く(他の病気では数値が変化しにくい)、検診などでもよく使われています。ただし、健康な方でも月経中や妊娠中、子宮内膜症などの場合に上昇することがあるため、CA125が高値であるからといって必ずしも卵巣癌であるとは限りません。
CA19-9は卵巣癌での陽性率は50%程度であり、その他の膵臓癌、胆管癌、大腸癌などでも上昇します。基準値はおよそ37U/ml以下になります。CEAは腫瘍マーカーの代表的なものであり、卵巣癌以外にも胃癌や大腸癌などさまざまな癌で上昇します。基準値は検査方法によって2.5ng/ml以下や5.0ng/ml以下となります。卵巣癌では粘液性腺癌で高値となりますが、長年にわたる喫煙でも上昇してきます。
また、胚細胞性の絨毛癌では「hCG」、卵黄嚢(らんおうのう)腫瘍で「AFP」といったマーカーの値が上昇したり、ホルモンを産生する卵巣腫瘍ではエストロゲンなどが高値を示します。
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卵巣癌の検診やマーカーでの発見可能性についてご紹介しました。親族や友人が卵巣癌になるなどして、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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