子宮体がんの検査、結果の見方、費用 痛い?マーカーでわかる?「細胞診」「偽陽性」とは?麻酔かける?
- 作成:2016/06/23
子宮体の検査は、可能性のある人を幅広く見つける検査と、診断を確定するための検査にわかれています。費用や検査に痛みが伴う可能性、腫瘍マーカーも含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
子宮体がんの可能性を示す腫瘍マーカーはある?
子宮体がんの検診(検査)とは?「細胞診」って何?
MRIは診断確定のために使う
検査費用はどれくらい?
子宮体がんの検診(検査)は、子宮頸がんと同じ?
子宮体がんの検査で痛みや出血がある場合がある?
子宮体がんの検査で麻酔をかける?
子宮体がんの検査結果の見方 偽陽性が起こるのはなぜ?
子宮体がんの可能性を示す腫瘍マーカーはある?
子宮体がんを診断する際に、補助的に役立つ腫瘍マーカーもないわけではありません。腫瘍マーカーは正常な細胞からも多少は作られますが、主にがん細胞から多く作られるタンパク質で、がんの種類によってその種類は異なります。腫瘍マーカーは採血をするだけで検査可能であるため、その簡便さからがんの補助的診断に有用な検査として広く用いられています。
子宮体がんの診断の際に使われる腫瘍マーカーがあります。よく用いられている子宮体がんの腫瘍マーカーは、主に「CA125」と「CA19-9」です。CA125は腺がんというがんで上昇する腫瘍マーカーです。子宮体がんは約95%が腺がんであるため、子宮体がんではCA125が上昇します。しかし、CA-125は卵巣がんや膵臓がんなどの他のがんでも上昇するため、CA125が上昇したからといって子宮体がんが存在するとは言えません。
CA19-9 も子宮体がんで上昇しますが、CA19-9 も、膵臓がんや進行胃がんや大腸がんといった他のがんで高頻度かつ高濃度に検出されるため、子宮体がんの発見に有用であるとは言えません。むしろ、CA19-9が高い値であれば、膵臓がんや胃がん、大腸がんなど、子宮体がん以外のがんを主に疑います。このように、子宮体がんにも腫瘍マーカーは存在しますが、特異性に乏しい、つまり子宮体がんのみで特徴的とは言えず、子宮体がんの早期発見に有効とは言えません。
子宮体がんの検診(検査)とは?「細胞診」って何?
40歳代後半から60歳代の女性が、閉経後に性器から出血をしている、あるいは下腹部に痛みを感じるときには、「子宮体がん」を疑います。また、肥満や出産経験のない方、糖尿病などの方は子宮体がんになりやすいことが分かっています。子宮体がんのスクリーニング検査では、子宮体がんになっている可能性が高い人を「陽性」とします。スクリーニング検査で陽性という結果になっても、その後に詳しい検査を行ってみると、「子宮体がんではない」という結果になることもあります。
出血や痛みの症状が子宮体がんによるものかどうかを調べる検査として、スクリーニング検査(がんの可能性があるかどうかを確かめる検査)があります。スクリーニング検査としては、「内膜細胞診」と「経腟超音波検査」が実施されます。
「内膜細胞診」はその名の通り、子宮内膜にある細胞を採取して診る検査です。具体的には、子宮内膜から細胞を採るための擦過用器具を腟から入れます。そして、擦過用器具を回転させたり、ブラシ状の器具であれば擦ることによって子宮内膜から細胞を採取します。採取した細胞は、染色を行い顕微鏡で観察します。そして、その細胞の形態が「がんである可能性が高い」と判断されれば、「細胞診、陽性」という結果になり、子宮体がんである可能性が高くなります。ちなみに、内膜細胞診の子宮体がん検出率にバラつきはありますが、80%から95%であるとされています。したがって、内膜細胞診で陰性であっても、完全に子宮体がんが否定されるということではありません。一方、内膜細胞診が陽性である場合に、さらに詳しい検査を行い、「子宮体がんではない」という結果が出る可能性もあります。
内膜細胞診で子宮体がんを疑うことができなくても、超音波検査で子宮内膜の肥厚(あつくなること)が見られることで、子宮体がんを疑うことがあります。子宮内膜が厚くなっている状態は、子宮体がんを疑うべき特徴であり、再び細胞診や組織診を行ったりといったように、より細かい検査を行うことが検討されます。
MRIは診断確定のために使う
スクリーニングで子宮体がんが疑われたら、次に行うのが「子宮内膜組織診(しきゅうないまくそしきしん)」という検査です。子宮内膜組織診は「ゾンデキューレット」という道具を用いて、子宮内膜を組織ごと採取します。あるいは、一部の子宮内膜ではなく子宮内膜全面そうはを行って組織検査を行うこともあります。子宮内膜組織診は痛みを伴うことがあるため、麻酔をかけて検査を行うこともあります。検査後、子宮体がんだが判明すれば、組織型が腺がんかそれ以外かなどの種類も分かります。
子宮内膜組織診で子宮体がんが疑われる、あるいは子宮体がんを否定できない場合には、「子宮鏡検査(ヒステロスコピー)」を行います。ヒステロスコピーでは腟から子宮鏡を入れ、子宮の内膜や子宮頸部などを直接観察することができます。したがって、子宮体がんと思われる部位の形態や色、血管の分布、潰瘍があるか、出血があるかといった情報を得ることができます。
さらに、子宮体がんを疑う場合にはMRI検査が行われます。MRI検査は確定診断のためだけでなく、子宮体がんの広がりが分かるため、治療でどこまで切除すればよいのかを判断するためにも重要です。
検査費用はどれくらい?
以上のような流れで、子宮体がんの確定診断がなされます。様々な検査を行うため、費用はその分かさみます。スクリーニング検査は5000円で、保険に加入していればその3割の負担で済みます。子宮体がんを早期発見、早期治療するための費用であると思えば、決して高くはないのではないでしょうか。
子宮体がんの検診(検査)は、子宮頸がんと同じ?
子宮体がんは子宮体部にできるのに対して、子宮頸がんは子宮頸部にできるため、検査で見る部位など違いが何点かあります。
初めに、子宮頸がんも子宮体がんと同様に細胞診を行います。ただし、子宮頸がんで行う細胞診は「頸部細胞診」と言って、子宮頸部にある細胞を採取します。子宮体がんの場合は、細胞診を行った後に組織診を行いますが、子宮頸がんの検査では、「コルポスコピー(腟拡大鏡)」を用いて、子宮頸部を直接観察します。このコルポスコピーで異常所見が確認されれば、「狙い組織診」という検査を行います。狙い組織診では、白色上皮、赤点斑、モザイク、異型血管などといった異常を示している部分の組織を採取(生検)します。一方、コルポスコピーで異常所見が見られなければ、子宮頸管内を「ゾンデキューレット」という道具を用いて、子宮頸部にある組織を採取します。これを「頸管内掻爬(そうは、かきだすこと)」と言います。この生検と子宮内掻爬によって得られた子宮頸部の組織を用いて、子宮頸がんの組織がどういったものなのかを判断し、治療方針を決定します。
子宮頸がんと子宮体がんの検査は順序が異なりますが、異常があるかを確認していき、疑いが高いほど組織を取り出して、詳しく調べます。
子宮体がんの検査で痛みや出血がある場合がある?
何らかの病気が疑われたとき、その病気かどうかを明らかにするために様々な検査が行われます。検査には痛みを伴うもの、伴わないものがあります。例えば、血液検査は一般的な検査として知られていますが、血液検査は注射針を刺す際に痛みを生じます。体内にある組織の一部などを無理矢理取り出そうすると、大なり小なりの痛みは生じます。
子宮体がんの検査の場合も同様で、子宮体がんの細胞診や組織診では痛みを生じることがあります。特に、子宮体がんに対する組織診では、子宮内膜から組織を採取します。子宮にも痛みを感じる神経は走っていますから、子宮内膜から組織を採取すれば痛みを感じることもあります。また、神経と同様、子宮には血管も走っています。そのため、子宮内膜の組織診でその血管を損傷すれば出血することもあります。
子宮体がんの検査で麻酔をかける?
子宮体がんの検査では、細胞診や組織診を行います。この2つの検査は、いずれも痛みや出血を伴うことがあります。特に、組織診では子宮内膜の組織を直接採取するため、痛みや出血が強くなることもあります。痛みに対する対策、あるいは組織診に対して患者が感じる不安に対応するなどの目的で、麻酔をかけた状態で子宮内膜組織診が行われることがあります。もちろん、麻酔をかけても出血を防ぐことはできませんが、痛みを感じないため麻酔下での子宮内膜組織診は非常に効果的と言えます。
子宮体がんの検査結果の見方 偽陽性が起こるのはなぜ?
性器からの出血や下腹部に痛みといった、子宮体がんを疑うような症状が見られればスクリーニング検査を行うことがあります。検査の結果、もし子宮体がんが疑われるようならば、スクリーニング検査の結果は「陽性」となります。疑われなければ、スクリーニング検査の結果は「陰性と」なります。注意が必要なのは、多くの検査における陽性には、“本当の陽性”である「真陽性」と“偽りの陽性”である「偽陽性」が存在します。子宮体がんのスクリーニング検査の場合、以下のような考え方になります。
検査結果が陽性で、実際に子宮体がんである→真陽性
検査結果が陽性だが、実際は子宮体がんでない→偽陽性
「偽陽性」が起こる理由としては、子宮内膜症などの子宮体がんと似た病気である場合や、採取した細胞がたまたま子宮体がんのように見える細胞であったなどの理由が考えられます。
注意が必要なのは、「偽陽性」かどうかは、子宮体がんの可能性が否定されてはじめて言えるという点です。偽陽性が起こる検査になっている理由は、子宮体がんを見逃すよりも、「偽陽性」の人も含めて、幅広く見つけて、1人でも多くの人が早期に治療開始できるようにするためとも言えます。
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子宮体がんの検査や結果の見方などについてご紹介しました。子宮の周辺の症状に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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