子宮体がんの原因、ステージ、生存率 頚がんとの違い、腺癌の意味は?
- 作成:2016/06/23
子宮体がんの原因としては、生理に影響を与える「エストロゲン」というホルモンが関係していると考えられています。ステージの考え方やステージごとの生存率、子宮頚がんとの違いを含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
子宮体がんとは?子宮頸がんとの違いは?線癌って何?
子宮体がんの原因
子宮体がんのステージと予後
ステージごとの生存率
子宮体がんとは?子宮頸がんとの違いは?線癌って何?
子宮は、大きく「子宮体部」と「子宮頸部」の2つの部分に分けることができます。子宮体部は袋状の形になっていて、妊娠をしますと赤ちゃんは子宮体部で育ちます。この子宮体部から発生するがんを、「子宮体がん」と言います。子宮体がんは子宮内膜から発生するので「子宮内膜がん」とも呼ばれます。子宮体がんの組織を染色液で染めて顕微鏡で観察すると、約95%が「腺がん」と呼ばれる構造をとっていることが分かります。腺がんは分泌液を含んだ「腺細胞」という細胞が集まり、その構造が管状の構造(「腺」と言います)になってることから名前がついています。
一方、子宮頸部は子宮体部下の部分で、分娩時には赤ちゃんが子宮頸部を通過して体外へ出ます。この子宮頸部から発生するがんが、「子宮頸がん」です。子宮頸がんの組織を染色液で染めて観察すると、約75%が「扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)」と呼ばれる構造になっていて、約25%が腺がんの構造を示します。
このように、子宮にできる「がん」と言っても、がんができる部位によって呼び名や構造は異なります。この違いは、子宮体がんと子宮頸がんの治療方法の違いにも現れています。したがって、がんが発生した場合には、どこにできてどのような構造を持ったがんなのかを正確に把握することが重要となります。
子宮体がんの原因
子宮体がんの発生には、「エストロゲン」というホルモンの関与が考えられています。エストロゲンは、女性の月経終了から排卵するまでの時期に卵巣から多く分泌される女性ホルモンです。卵巣からエストロゲンが分泌されると、子宮の内膜にある細胞はその細胞分裂のスピードを上げます。その結果、子宮内膜の細胞は増殖します。そして、子宮内膜の過剰かつ無秩序な増殖が、子宮体がん発生の原因となります。
通常のエストロゲン分泌量であれば月経が起こるときには子宮内膜がはがれるため、子宮内膜が異常に増殖して子宮体がんになる可能性を考えることは難しいです。しかし、ある理由でエストロゲンの分泌が多くなると、子宮体がんのリスクが高くなるとされています。例えば、早く初潮を迎えたか、あるいは52歳以降に閉経を迎えた場合は子宮体がんのリスクが高いことが分かっています。また、長期にわたる無月経、出産経験がない、エストロゲンを分泌するような腫瘍が存在する、治療でエストロゲンの投与を受けたという経験も、子宮体がんのリスクを増加させるとされています。
リスクを上げる原因の共通点としては、エストロゲンの分泌量が多い、あるいはエストロゲンにさらされる時期が長いことがあります。いずれの場合も、子宮内膜がエストロゲンの影響を受ける時期が長くなるため、子宮内膜が通常よりも増殖しやすくなり、結果として子宮体がんが発生しやすくなると考えられています。
他にも、肥満、糖尿病、高血圧、そして家族の中に子宮体がん、乳がん、卵巣がんなどになった人がいる場合も子宮体がんのリスクは高くなります。
子宮体がんのステージと予後
がんの予後を予測するための、がんがどの程度浸潤(子宮体部の組織への浸透)しているのか、あるいはリンパ節や子宮以外の他の臓器に転移しているのかという「予後予測因子」と呼ばれるものは、子宮体がんの手術後にわかります。そのため、子宮体がんのステージは「手術進行期分類」という分類が用いられます。手術進行期分類にはⅠ~Ⅳ期が存在します。
I期はがんの存在が子宮体部のみに限定されるものです。そして、I期はさらに「IA」と「IB」に分けられています。Ⅰ期のうち、がんが子宮の筋層(筋肉の層)の半分未満の浸潤に留まるものをIA期、がんが子宮の筋層の半分以上まで浸潤しているものをIB期としています。
II期はがんが子宮体部を越え、子宮頸部にまで及んだものです。ただし、がんは子宮の外へは出ていないことが条件になります。
III期は、がんが子宮の外まで広がるっているが、骨盤を越えてまでは広がっていないもの、または骨盤内あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移を認めるものです。そして、III期はさらにIIIA、IIIB、IIIC1、IIIC2に分けられています。ⅢA期はがんが、子宮の外の膜や骨盤の腹膜あるいは卵巣や卵管に広がっているものとされています。一方、IIIB期は、膣や子宮のそばにある「子宮傍結合組織」と呼ばれるところまで広がっているものとしています。そして、IIIC期は骨盤内あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移しているもので、特に骨盤リンパ節転移があるものをIIIC1、骨盤リンパ節への転移に関わらず、傍大動脈リンパ節転移があるものIIIC2としています。
最も重いIV期は、がんが骨盤を越えて別の部位へ広がったものとしています。IV期はさらIVA、IVB期に分けられています。IVA期は、膀胱(ぼうこう)ならびに/あるいは腸の粘膜まで広がったもの、IVB期は腹腔内、鼠径リンパ節(股の付近のリンパ節)転移を含む遠隔転移のあるものとしています。
ステージごとの生存率
手術進行期分類は患者さんの治療方針の決定に使われます。もし手術進行期分類の結果を踏まえて再発リスクが低いと判断されれば、手術後そのまま経過観察となります。しかし、再発リスクが「中程度から高い」という判断になれば、化学療法や放射線療法、さらにはホルモン療法などを用いて、さらなる治療を行います。治療成績の指標としてよく用いられるのが「5年生存率(治療開始から5年後の生存率)」です。
子宮体がんの手術進行期分類による予後を5年生存率でみると、報告によってデータにバラつきはありますが、I期が100%近いのに対して、II期は約70%から80%、III期は約50%から80%、IV期は約10%から40%となっています。このように、子宮体がんのステージが進めば進むほど、その予後は悪くなるということができます。
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子宮体がんの原因やステージ、生存率などについてご紹介しました。子宮の周辺の症状に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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