子宮体がんの治療 手術、抗がん剤、放射線、ホルモンを解説 手術後の生活への影響は?

  • 作成:2016/06/23

子宮体がんの治療は、手術、薬、放射線、ホルモンなどがあります。がん進行具合や妊娠希望など患者の状況に合わせて、治療が選択されることとなります。子宮体がんの治療について、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

近藤恒正 監修
落合病院 副院長
近藤恒正 先生

この記事の目安時間は6分です


子宮体がんの治療 手術
子宮体がんの治療 抗がん剤
子宮体がんの治療 放射線療法
子宮体がんの治療 ホルモン療法
子宮体がんの手術後の生活への影響

子宮体がんの治療 手術

子宮体がんの治療は、手術療法を中心として化学療法や放射線療法などを併用して行うのが一般的です。子宮体がんで行われる手術は、「単純子宮全摘術」あるいは「広汎子宮全摘術」に加えて、「両側付属器切除」「骨盤内リンパ節郭清(かくせい)」を行います。子宮摘出の方法は、子宮体がんの進行具合によって、下の2種類からいずれかを選択します。

単純子宮全摘術→子宮のみを摘出する手術で、「子宮内膜異型増殖症」すなわち子宮体がん0期とされている状態や、がんが子宮体部にのみ存在するI期の場合、基本的に選択される術式になります。
広汎子宮全摘出術→子宮に加えて、子宮の周囲にある「子宮傍組織」と呼ばれる部分や、腟の上部を含めて摘出する手術です。子宮頸部にもがんが及んでいる場合に選択されます。

子宮摘出術に加えて、卵巣や卵管を切除する「両側付属器切除」も実施されます。また、がんが子宮の筋層の半分以内まで浸潤している「Ib期」以上の場合、「リンパ節郭清」という手術によって、骨盤内リンパ節や必要があれば傍大動脈リンパ節(腎臓と子宮の間部分にあるリンパ節)も取り出されます。

子宮体がんの治療 抗がん剤

子宮体がんでは手術療法や放射線療法のほかに、抗がん剤を用いた化学療法も併せて用います。化学療法が用いられるのは以下の場合などです。

・手術で摘出した子宮体がんを顕微鏡で観察した結果、組織型、分化度、浸潤の程度などから再発する恐れが高いと判断される場合 ・子宮体がんが進行しており、小さながんが残っている恐れがある場合 ・手術が施行できない場合

化学療法で使用される抗がん剤は、「ドキソルビシン」「プラチナ製剤」「タキサン系抗がん剤」などが用いられます。化学療法は、がんを小さくしたりなくしたりすることができる一方で、がん以外の細胞にも薬が影響することで、副作用が出てしまいます。副作用としては脱毛や吐き気、神経症状や、骨髄抑制といって白血球が減少して感染に対する抵抗力が落ちたりするといったことがあります。

子宮体がんの治療 放射線療法

放射線療法は「扁平上皮がん」といタイプのがんに高い治療効果を発揮します。子宮にできる子宮頸がんは扁平上皮がんであることが多いため、その治療に放射線が用いられることがしばしばあります。しかし、子宮体部にできる子宮体がんは、一部を除き多くが「腺がん」というタイプのがんであることが多いのです。そのため、放射線療法に対する感受性(効果)が低いとされています。したがって、子宮体がんに対する治療法の第一選択は、手術療法となります。しかし、高齢や合併症などの理由で手術ができない例に対しては放射線治療が選択され、その有効性が認められています。

子宮体がんを根治することを目的とした放射線治療は、「全骨盤外部照射」(体の外から放射線を照射する)と「腔内照射」(がんの存在する部位の子宮腔内および腟内から照射する)を組み合わせることがほとんどです。とはいえ、子宮体がんの放射線療法は、子宮頸がんに対する放射線治療のように標準的照射方法の指針は確立していません。ですから、患者さんごとに全身状態を考慮して、照射法を検討することとなります。

また、手術後の検査で、子宮以外の臓器などへの病巣が広がっていたり、リンパ節に転移していることが判明した場合に、手術後に放射線照射を行うこともあります。この場合も、患者さんの全身状態や副作用を考慮したうえで、放射線治療を追加するのか、もしくは抗がん剤を用いた化学療法を追加するのかを検討することとなります。

子宮体がんの治療 ホルモン療法

子宮体がんの治療の第一選択は手術療法です。しかし、子宮体がんで手術をした場合、子宮を摘出しますので、手術後に自分の妊娠・出産をすることは不可能になってしまいます。そこで、将来的に妊娠・出産を希望している方にはホルモン療法という治療方法が有用です。子宮体がんは、子宮内膜を増殖させる「エストロゲン」と、その増殖を抑える「プロゲステロン」というホルモンのバランスが崩れ、エストロゲンが相対的に多くなることがかかわっています。つまり、プロゲステロンが不足したり、エストロゲンが過剰になると、子宮内膜は増殖し、最終的には子宮体がんになります。

そこで、ホルモン療法では、プロゲステロンと同じ作用がある「メドロキシプロゲステロン酢酸エステル」という薬を用います。このメドロキシプロゲステロン酢酸エステルによってプロゲステロンの量は増え、子宮内膜の増殖を抑えることができることになります。

しかし、ホルモン療法にも副作用はあります。副作用としては、確率は低いものの、血液が固まりやすくなり血栓症になることがあります。血栓症は脳梗塞や心筋梗塞、肺塞栓症などを引き起こす恐れがあります。肥満の人や過去に血栓症になったことのある人などは、血栓症を起こすリスクが高いと考えられるため、黄体ホルモン療法を行うことができません。

ホルモン療法は非常に有用な治療方法ですが、安全性や子宮体がんが治る確率は、ホルモン療法よりも子宮全摘出術の方が優れています。というのも、ホルモン療法では十分な効果が得られないこともあり、その治療期間中にがんが進行してしまい、最悪の場合、転移などが起こる可能性もあるからです。このように、ホルモン療法のメリット・デメリットを考え、最終的には一人ひとりの患者さんに最適な治療をすることが望まれます。

子宮体がんの手術後の生活への影響

子宮体がんに対する手術では卵巣を摘出するため、女性ホルモンの分泌が低下します。そのため、骨粗しょう症になってしまい、手術前に比べて骨折しやすくなります。また、子宮摘出の方法として広汎全摘術が選択された場合、子宮周囲にある神経やリンパ管を損傷してしまう恐れがあります。結果として、尿が出にくかったり、便が出にくかったり、浮腫が起きたりします。

さらに、子宮を失うことで性や妊娠・出産のこと、家族や夫婦関係のことなど、女性としてのつらい気持ちや悩み、心配事が重なることは少なくありません。手術などで治療が終わっても、術後に骨粗しょう症や排泄、さらに女性の心の問題に対するケアなどの治療をする必要が出てくる可能性もあります。


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子宮体がんの治療についてご紹介しました。子宮の周辺の症状に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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