子宮体がんの妊娠・出産への影響、再発・転移可能性 20代でもなる?

  • 作成:2016/06/23

子宮体がんは20代でもなる可能性があります。また治療方法によっては、その後の妊娠ができなくなる可能性もあります。再発や転移の可能性も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

近藤恒正 監修
落合病院 副院長
近藤恒正 先生

この記事の目安時間は3分です


子宮体がんは20代でもなる?
子宮体がんになった際の妊娠、出産への影響
子宮体がんは再発する?しやすい?
子宮体がんは転移する?しやすい場所がある?リンパ節転移とは?

子宮体がんは20代でもなる?

子宮体がんはエストロゲンの分泌が多いことがリスクになることが知られています。そのため、40歳代後半から60歳代にかけて起こりやすく、特に50代がピークとされています。しかし、国立がん研究所がまとめている「高精度地域がん登録」のがん罹患データ(1985年から2010年)によれば、2010年に子宮体がんと診断された20代の方は約100人います。確かに、40歳代後半から60歳代にかけての女性の罹患率は高かったのですが、20代女性でも子宮体がんになる可能性はあります。

子宮体がんになった際の妊娠、出産への影響

子宮体がんの増加に伴い、20歳代から40歳代の女性の方で治療を受ける方も少なくありません。20歳代から40歳代の方で妊娠希望がある場合、「子宮体がんで妊娠や出産することができないのではないか」と考える方は少なくありません。実際に、子宮体がんに対する、標準治療(一般的な治療)は、手術による子宮摘出です。子宮は、妊娠をして赤ちゃんが育つ場として欠かすことのできない場所です。つまり、この子宮を摘出することは妊娠できなくなることを意味します。ですから、子宮体がんになると妊娠ができなくなる恐れがあると考えてしまいます。

しかし、現在はこの子宮摘出を行わずに、子宮を温存す治療方法もあります。それが「高用量黄体ホルモン療法」という治療です。高用量黄体ホルモン療法は、女性ホルモンである黄体ホルモンを使ってエストロゲンの作用を抑える治療です。エストロゲンの作用を抑えることができれば、理論上は子宮体がんの増殖を防ぐことができます。高用量黄体ホルモン療法によっては、子宮を摘出せずに子宮体がんの治癒が望めますが、2年以内に病変が子宮内に再出現する、つまり再発する頻度も高いことが知られています。とはいえ、子宮があるため妊娠することは可能です。高用量黄体ホルモン療法終了後は、積極的に排卵を誘発するなどして妊娠、そして出産できる可能性が十分にあります。

子宮体がんは再発する?しやすい?

がんは、治療が終わっても再発に留意する必要があります。ですから、がんを治療した後も定期的な検査を行い、再発が起こっていないかどうかを確認します。「再発」とは治療により、目に見える大きさのがんがなくなった後、再びがんが出現することをいいます。子宮体がんでは子宮や腟、骨盤内で起こる局所での再発のほか、肺や肝臓、骨などで転移という形で見つかることがあります。しかし、子宮体がんの治療では、妊娠希望がなければ、子宮および付属器を摘出しているため、局所での再発は起こる頻度が少なくなります。とはいえ、妊娠希望の方は子宮が残っているため局所に再発リスクはあります。再発が局所に生じた場合、骨盤内臓器摘出術などの手術を行うこともありますが、多くの場合、放射線や抗がん剤、ホルモン剤による治療を行います。

子宮体がんは転移する?しやすい場所がある?リンパ節転移とは?

がんは転移することがあり、子宮体がんもまた転移するがんとして知られています。子宮から離れた臓器に転移することを「遠隔転移」といいますが、子宮体がんの遠隔転移の仕方には、リンパの流れに沿う「リンパ行性転移」と、血液の流れに沿う「血行性転移」の2種類があります。

リンパ行性転移で転移しやすい場所は、傍大動脈リンパ節、骨盤リンパ節、鼠径リンパ節の3か所です。一方、血行性転移で転移していきやすい場所は肝臓、肺、骨などです。

以上を踏まえ、子宮体がんでは原則的に手術を行い、転移があるかどうかを確認します。また、転移があると判断されれば治療方針も違ってきます。がんが転移してしまうと、手術ではがんを取りきることができません。ですから、もし子宮体がんのステージがIV期で転移が確認できると、「アントラサイクリン系」などと呼ばれる抗がん剤を用いた化学療法や放射線療法にも重きを置いて治療を行います。


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子宮体がんに20代でなる可能性や、転移、再発などについてご紹介しました。子宮の周辺の症状に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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