胃がんの分類、ステージと生存率 スキルス胃がんとは?TNMとは?腹水や胃の全摘出は危険な状態?
- 作成:2016/07/11
胃がんの進行度は、癌の深さや転移を含めて、3つの要素「TNM分類」で決定します。ステージごとの生存率、スキルス胃がんの意味も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
胃がんの分類 tnmとは?腺癌が多い?
胃がんのステージの考え方と5年生存率
スキルス胃がんとは?
腹水の症状が出た際の余命
「胃を全摘出」は危うい状態?
胃がんの分類 tnmとは?腺癌が多い?
胃がんの進行度を分類するためには、以下の3つの要素で決まります。
・がんがどの深さまで達しているか
・リンパ節に転移があるか
・他の臓器に転移があるか
進行度を分類する指標として使用されているのが「TNM分類」です。TNM分類は「Tumor(腫瘍)」「lymph Nodes(リンパ節)」「Metastasis(遠隔転移)」の頭文字をとっており、「T」ががんの大きさと浸潤(しんじゅん、がんが広がること)、「N」がリンパ節転移の有無、「M」が他の離れた臓器に転移があるかを表わしています。この進行度分類によってI期~IV期までの病期分類(ステージ分類)が行われています。TNM分類から決定された病期は、治療法の選択や予後の評価につながるため、診断上とても重要なものになります。
TNM分類の「T」は大きくT1からT4に分けられていて、主な考え方は以下の通りです。
T1:がんが粘膜(粘膜下層、食べ物と接する面)にとどまっているもの
T2:がんが筋層(粘膜下層の1つ下)にとどまっているもの
T3:がんが筋層を越えて漿膜(しょうまく、筋層の1つ下)下層に留まっているもの
T4:がんが胃の表面(食べ物と接する面の反対側)に出ていたり、他の組織に達しているもの
TNM分類の「N」はN0からN3に分けられます。
N0:リンパ節転移のないもの
N1:胃の近くにあるリンパ節(領域リンパ節)のうち1個から2個に転移があるもの
N2:胃の領域リンパ節のうち3個から6個に転移のあるもの
N3:胃の領域リンパ節のうち7個以上の転移のあるもの
また、TNM分類のTやNに関わらず、肺や肝臓など他の臓器や胃の領域以外のリンパ節に転移がある場合は、M1(他の臓器に転移あり)となります。
胃がんの分類には、進行度を分類するためのTNM分類のほかに「胃がん取扱い規約」(日本胃がん学会)によって定められている「組織型分類」もあります。胃がんと言ってもそれぞれの顔つき(組織型)は異なっており、胃がん取扱い規約では大きく一般型と特殊型の2つに分けられています。一般型は「腺がん」のことを指しています。胃がんの組織型としては胃粘膜の中にある胃液を分泌する腺細胞から発生する腺がんが大部分を占めています。一方、特殊型には「扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん」「カルチノイド腫瘍」などと呼ばれる、腺細胞以外から発生したがんが含まれていますが、割合としては少数になります。
胃がんのステージの考え方と5年生存率
がんの進行の程度を表わす指標として病期(いわゆるステージ)があります。ステージは、TNM分類に基づいて決定されます。がんのステージは大きくIからIVまでの4段階で表されます。ステージIの胃がんは、がんが胃粘膜かその下の粘膜下層にとどまっている早期のがんとなります。逆にステージⅣでは、胃から離れたところに、遠隔転移がある進行した胃がんということになります。
ステージごとの5年生存率データ(治療開始から5年後の生存率)は、少し古いデータですが2001年の胃がん治療ガイドラインによるとステージIA:93.4%、IB:87.0%、II:68.3%、IIIA:50.1%、IIIB:30.8%、IV:16.6%とされています。
スキルス胃がんとは?
「スキルス胃がん」とは、胃がんに多い組織型である腺がんの1つになりますが、「未分化型」という悪性度が高い(がん細胞の増殖速度が早い)種類であり、胃壁の中で広く浸潤していき、腹膜播種(おなかの中でがん細胞をばらまく状態)を起こしやすいことが知られています。スキルス胃がんは胃がんの10%程度を占め、特に30歳代から40歳代の若い女性に多いという特徴があります。
腹水の症状が出た際の余命
「腹水」とはお腹の中に水が溜まった状態であり、胃がんの場合、腹膜播種によるがん性腹膜炎によって、しばしば腹水がたまった状態になります。また、腹膜播種は再発としても一番頻度が高く、腹水によって気付かれる場合も少なくありません。腹膜播種によって腹水が貯留している場合、ステージ分類としてはステージIV(もっともすすんだ状態)に相当し、根治的治療(完全な治癒を目指した治療)の対象とはなりません。過去の治療成績では生存期間中央値が12か月前後、わかりやすく言うと、半分の方が12カ月前後で亡くなりました。5年生存率(治療開始から5年後の生存率)が7.8%と不良でしたが、抗がん剤を組み合わせた治療では全生存期間中央値が705日、5年生存率が26%であったとの報告もあります。今後の治療の進展が期待されます。
「胃を全摘出」は危うい状態?
また、胃切除では、転移しないように、腫瘍の周辺部分から十分な距離が確保できるように切除範囲を決定します。そのため、胃全摘はステージ分類だけでなく、腫瘍の場所によっても、腫瘍断端(切り取った端)からの距離を取ることが難しい場合に、選択される手術方法となります。したがって、一概に胃全摘した際のステージであったり、5年生存率についてはいうことはできません。しかし、膵臓(すいぞう)に浸潤している場合は、必然的に胃全摘が選択され、この場合にはステージIVとなります。
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胃がんについての分類やステージなどをご紹介しました。胃の痛みに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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