「病気」の定義と医師の診断方法 ネットのチェックは信頼できる?「病名がつかない」のワケも解説

  • 作成:2016/01/06

病気の診断は、多くの人が経験したことがあるように、医師の症状の聞き取りや検査を経てなされます。ただ、患者が訴える症状がありながらも、異常を示すデータが出なかったり、診断に厳密さが要求される場合は、病名がつかないケースがあります。「病気」という言葉の定義や、インターネット上のセルフチェックの信頼性も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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聴診器

病気の定義は難しい

「病気とは何か」を定義することは難しいと言われています。WHO(世界保健機構)は、病気と対になる概念として、“健康”を「単に病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義していますが、この文言の中で病気については何ら定義されていません。

医学では病気を「体の機能や構造、器官などの断絶、停止、障害」、すなわち正常状態からの逸脱(いつだつ)と定義することが多いようです。しかし、その場合「正常な状態」とは何かということになります。この正常は大多数に共通する一定範囲ということで、平均からの偏りが問題になります。平均(正常)から大きく外れた場合(異常)は、多くの場合、病気でもあります。しかし、どのような人たちを基準として、平均や正常を定義するのかという問題が残ります。

集団ではなく個人を考えると、その人の生理学的な基本状態、つまり「自然な状態からの逸脱」を病気と定義することも可能です。しかし、誰が見ても異常があるのに日常生活に支障がなく生命に危険がなければ、病気とは言いません。自然科学的観点から、純粋に病気は定義できないとも言われています。

病気の診断、医師はどうやっているの?

一般内科や総合診療科といわれる、患者の窓口となりやすい診療科の初期診療では、さまざまな訴えをもつ患者さんの病気(または病気ではないこと)を鑑別(見分けること)して診断することになります。主な手順は次のようです。

1. 年齢、性別、生活背景、基礎に持っている病気など病歴のチェック。
2. 症状の詳細な聞き取り; 「主な症状は、いつごろから、どのように始まったか」「症状は、どのようなときに悪くなり、または治まるか」「他に伴っている症状の有無」などです。患者さんの訴える症状が自覚症状と呼ばれるものです。
3. 診察による身体の所見;視診(見る)、聴診(聞く)、触診(さわる)などを経て、医師は五感を使って行います。
4. 初期の基本的検査;必ず行う血液や尿検査項目に加え、診察の結果を基に必要な検査として心電図検査、胸部X 線検査、腹部超音波検査、その他の血液尿検査などが選択されます。

「3の身体所見」、「4の検査所見」を合わせて「他覚的所見(病気の本人以外がわかること)」といいます。ここまでで、どんな系統の病気あるいは、病態かが推定され、最終的な診断が予測されています。最後に診断を確定するために、必要な検査が行われます。検査にて「陽性」の所見がでれば、診断が確定します。

病名がつかないことがあるのは、なぜ?

いろいろな臓器が原因となって現れる症状で多いものに、例えば「発熱」「全身倦怠感」「頭痛」「めまい」などがあります。このような症状を訴える患者に対して原因となる病気を探して、多様な検査を行ってみますが、異常な検査データが何も出ないことがあります。発熱の場合には、「不明熱」といわれるくらい起こる頻度が低くないものです。異常がない場合、診断はつかないまま、「経過観察」となることがよくあります。

診断の確定に厳密さが要求される場合でも、病名がつかないことがあり得ます。例えば悪性の腫瘍(がんなど)では、「細胞診」といわれる細胞を調べる検査を経て、病気に関する理論に基づいて、「悪性細胞である」という証明されなければ診断はつけられません。診断確定に厳密さが要求される場合、「その他の検査では、まず間違いない」という場合でも「疑い」という状態になります。

インターネットのセルフチェックは信用できる?

体の組織などに病気の理論上、何も異常が見当たらないのに、臓器や器官などの働きが低下するものは「機能性の病気」と言われます。このタイプの病気では、よく診断するための基準が設けられています。基準になる項目も多く、かなり複雑な判定もあります。例えば、うつ病では「9つの項目(症状)のうち5つ以上が同じ2週間のあいだにあり、症状により社会的、職業的に障害されている」というようなものです。

インターネット上の病気のチェックシートは、診断基準を参考に作られていることが多いので、十分その病気を疑う目安になります。しかし、いくら多くの項目をチェックしても、実際の診断には他の条件があったりしますので、インターネット上のセルフチェックを過度に信頼しすぎることは避けましょう。不安な場合は、一度、専門医や医療機関を受診するようにしてください。

病気の診断やインターネットのセルフチェックの考え方などについて、ご紹介しました。もしかして病気かもしれないと不安に感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?

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