症候群とは?定義、意味、「病気」との違いを解説 診断が難しい?厳密な名づけルールはない?
- 作成:2016/04/13
「症候群」という言葉を耳にされたことのある方も多いと思いますが、「病」と名前のついている病気とどう違うのか、理解している方は少ないと思います。「症候群」と呼ばれるものには、主に3つの理由があります。「症候群」の言葉の定義や診断が難しい理由も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
「症候群」の定義は何?
「○○症候群」とよくきくと思いますが、いくつかの症状や所見が一連のものとして認められ、経過や予後(医学上の見通し)などを含め特徴的な様子を示す“病的な状態”に対して、命名されることが多いようです。病的な状態を引き起こす原因については、(1)原因不明のもの、(2)さまざまな複数の原因があるもの、(3)はじめは原因不明であったが後に特定されたもの、などがあります。それぞれの具体例で説明します。
(1)原因不明の例→シェーグレン症候群;ドライアイ、ドライマウスを特徴とする原因不明の症候群です(ただ、現在、自己の免疫<体内に入った病原体などと戦う機能>に問題の起きた病気であることまでは判明しています)。最初に発表した医師(この場合、スウェーデンの眼科医シェーグレン)の名前が付けられているパターンが多いようです。「スティーブンス・ジョンソン症候群」「マルファン症候群」なども人の名前です。
(2)複数の原因があるものの例→かぜ症候群;さまざまな病原体(主に数種類のウイルス)の感染が原因でおこる鼻水、咳(せき)、発熱などを主症状とする上気道の炎症ですが、経過は良好で、自然治癒するので原因は特定せず、まとめて「症候群」としての扱いになっています。
(3)原因不明だったが後に特定されたものの例→SARS;重症の新型肺炎を発症するSARS:重症急性呼吸器症候群(最後のSがSyndrome症候群です)は、当初、原因不明の感染症とされましたが、後に新型のコロナウイルスが原因病原体であることがわかりました。
診断が複雑で微妙な「症候群」
(1)のように原因がはっきりとしていない「症候群」では、単一の病気であるのかどうかが判っていないばかりか、「むしろ単一の病気でないと考えられている」ことが多いようです。また、治療法も確立されていないため、根本的な治療方法がないものも多く、症状に対応した対症療法が行われています。 例えば、国の2015年7月1日施行の指定難病196のうち、およそ3分の1が“○○症候群”となっています。難病に指定されているような症候群では診断も難しく、専門医の判断ばかりでなく、診断基準も定められていることが多くなっています。 具体的な診断基準については、「数項目以上の症状」「AまたはBの他覚的所見(外から見てわかる特徴)」「Cのあるものは除外」といったように複数の条件が重なりあった上、診断は「確実」「ほぼ確実」「可能性がある」などとなっていて、複雑で非常に微妙なものです。
症候群は病気とは違う?病気でない場合もある?「かぜ症候群」という病気はない
(2)“かぜ”のような複数の原因がある「症候群」の場合、ウイルスなどの感染による急性の鼻炎、咽頭(いんとう)炎、扁桃(へんとう)炎、喉頭(こうとう)炎などの単一の病気のうち、いくつかが認められるときに総称名として使われています。したがって、かぜ症候群という病気はありません。同じような使われ方は、シックハウス症候群にもみられます。医学的に確立した単一の病気というよりも、室内の空気が汚染されることによって引き起こされる、さまざまな健康障害を意味する用語と考えた方が良さそうです。
定着してしまえば名前が変わらない場合も
(3)の、あとで原因がわかった症候群の場合、原因の特後、「○○症候群」から「○○病」に改められる例もありますが、SARSでは「重症急性呼吸器“病”(SARD:Dは、病気を意味するDiseaseです)とはならずに、そのまま使用されています。世界的流行がある病気で、広くSARS(サーズまたはサース)という名称が普及してしまっていることが理由だと思われます。AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)も同様で、原因はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染であることが判明していますが、AIDSのままになっています。
“症候群”がふさわしい“うつ病”
うつ病の種類は、「単極性うつ病」「双極性うつ病」「反復性」「メランコリー型」「非定型」「季節型」「産後」といったように、さまざまです。また、いくつかの研究により、うつ病を引き起こす原因はひとつではないということがわかっています。まさに「うつ症候群」の総称名が相応しいように思えますが、慣習として「うつ病」が使われます。「○○症候群」や「○○病」の使用には、はっきりとしたルールがあるわけではなく、あいまいなところもあるようです。
症候群の考え方についてご紹介しました。さまざまな病気について不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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