食道癌(がん)の検査と手術、抗がん剤、放射線による治療

  • 作成:2016/04/13

食道がんでは、他のがん同様、どれくらい病気の部分が広がっているかを調べます。そのうえで、どのような治療ができるかを考えます。病気の部分によりますが、手術以外の治療となる場合もあります。食道がんの検査と治療の概要について、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は3分です

食道がんの検査

食道がんの検査では、「がんの発見」「がんの深達度(どれくらい深くまでがんが広がっているか)」「遠隔転移やリンパ節転移の有無」を調べます。それによってがんの進行度が判定できます。

食道がんの発見には、バリウムによるX線検査や、胃カメラによる内視鏡検査をおこないます。病気と思われる部分が見つかれば、細胞の一部を採取し、がんかどうか調べる「病理検査」をおこないます。がん細胞が見つかれば、食道がんと診断されます。

がんの存在が確認されると、次はがんの深達度をはかります。深達度は、食道の内側から、粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、外膜の順に深くなっていきます。食道の壁のどの深さまでがんが進行しているか、さらには隣接する臓器に浸潤(広がること)していないかを、CT(身体の断面を調査する検査)と超音波内視鏡で検査します。気管の検査には気管支ファイバースコープを用いることもあります。

遠隔転移やリンパ節転移がないか調べる時も、主にCT検査と超音波内視鏡検査をおこないます。食道がんが転移しやすいのは肺、肝臓および骨です。肺の検査にはレントゲンとCT、肝臓の検査にはCTか腹部超音波を用いるのが一般的です。骨への転移は放射性物質を用いた「骨シンチグラフィー」という検査をおこないます。リンパ節転移の検査は問診や触診のほか、頸部超音波検査が用いられます。

全身への検査をおこないたい場合は、MRI(磁気を利用した画像診断)やPET (陽電子放出断層撮影)を使うこともあります。

このように、X線やCT、内視鏡、MRI、PETによる検査の結果を受けて、病気の進行度を診断します。進行度が分かることによって、治療法の選択ができるようになります。

食道がんにおける手術はどんなもの?

食道がんの代表的な治療法は、手術、放射線治療、内視鏡治療、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療と抗がん剤治療の組み合わせによる治療(化学放射線療法)です。どの治療法にするかは、がんの進行度や患者の状態をみながら医師と相談して決めます。状況によっては複数の治療法を組み合わせることもあります。

もっとも一般的なのが、外科的治療である手術です。がんが「粘膜下層」より深く進行している場合は、原則として手術が必要です。手術でおこなわれるのは食道の病巣の切除、転移が疑われるリンパ節の切除、消化管の再建です。食道がんに最も多い胸部食道がんの場合、胸部食道を全て摘出するのが標準治療(一般的な治療法)です。また、リンパを通じた転移を防ぐため、胸部、頸部、腹部のリンパ節を切除します。さらに、食べ物の経路を確保するために、切除した食道と胃をつなぎ合わせます。胃をすでに取ってしまっている人は、小腸や結腸・大腸を使います。

切開箇所や手術時間は病気の状態や術式によって異なりますが、全身麻酔でおよそ5時間以上、食事ができるようになるまでは4日から5日かかります。最近では術後の生活の質を高めるため、腹腔鏡を用いる医療機関もあります。また手術前の進行度によっては手術前抗がん剤治療(術前化学療法)を行ったあとに手術を行うこともあります。

放射線治療とはどんなもの?

がんが粘膜下層より深くまで進行し、周辺臓器にも浸潤がみられて手術による除去が難しい場合、放射線治療がおこなわれます。一定期間放射線治療がおこなわれた後は、手術をするケースと抗がん剤治療で対処するケースに分かれます。

もしくは、食道癌が粘膜下層にはとどいておらず、リンパ節への転移もみられない場合は、手術をおこなわず放射線治療と抗がん剤を組み合わせた治療をおこなう選択肢もあります。手術による開腹・開胸、食道の摘出をおこなわないので、身体的機能を可能な限り、温存して局所的に治療をおこなうことが可能です。

放射線治療と、次に述べる内視鏡治療・抗がん剤治療では、リンパ節の切除ができません。そのため、単独でこれらの治療法が選択されるのは比較的早期の食道がんに限ります。

内視鏡治療と抗がん剤治療とは

手術と放射線治療以外の治療法としては、内視鏡治療と抗がん剤治療があります。

内視鏡治療は、内視鏡を用いてがんを切除する方法です。がんの深さが浅い範囲にとどまっているなら、手術をおこなわずに内視鏡で切除できます。条件は医療機関によりますが、一般的にはがんの深達度が粘膜下層未満(粘膜上皮や粘膜固有層)で、大きさの制限はなく(ただし大きいほど深くなる可能性が高くなります)、病気の数が少ないものに限られます。手術時間は、切る面積の大きさにもよりますが1時間から2時間程度と手術より短いことが多く、翌日もしくは翌々日から食事が可能で、1週間程度で退院できます。切除した病気の深さ(深達度)やリンパ管、血管への病気の入り込みの有無によりリンパ節転移の危険度が変わるため、場合によっては追加治療が必要になることがあります。

抗がん剤治療はがん細胞を制御する薬を点滴で投与することによる化学療法です。手術で取り切れなかったがんや放射線が当たらない部位にあるがん、他臓器に転移してしまったがんに用いられます。単独でおこなわれる場合と、手術や放射線治療と組み合わせておこなわれる場合があります。最近では抗がん剤と他の治療法を同時におこなう方が効果的であることが分かってきています。

食道がんの検査や治療についてご紹介しました。もしかして食道がんかもしれないと不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。 専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

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